介護食の種類で最近、ムース食という言葉をよく聞くけれど、具体的にどのような食事なのかまではよくわからないと困っている人はいませんか?

この記事ではムース食の定義から宅配サービスの内容まで詳しく解説します。

ムース食とは?

ムース食とは介護食の1つで、通常食を細かくすりつぶした後とろみ剤などを混ぜ、型などを使用して料理の形に成型した食事のことで、宅配や市販の介護食品などに広く取り入れられています。

ソフト食とも呼ばれ、管理栄養士の黒田留美子氏が1994年から開発し、当時介護の現場でよく用いられていた「刻み食」「ミキサー食」とは異なる食形態として提案されました。

介護食の規格としては日本摂食・嚥下リハビリテーション学会が提唱した「日本摂食・嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類2013」や日本介護食品協議会が提唱したUDF(ユニバーサルデザインフード)、農林水産省が提唱した「スマイルケア食」などの分類がありますが、このような規格の1つとして「高齢者ソフト食(ムース食)」があるのです。

ムース食は噛む力飲み込む力が弱くなってきた高齢者の方に向いています。

料理の形に成型しているので見た目が美しく、高齢者にとっては食事におけるQOL(生活の質)を上げることができるのが特徴的と言えるでしょう。

参考:「スマイルケア食の取組について」農林水産省

ムース食のメリット・デメリット

ムース食のメリットデメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。

それぞれご紹介します。

ムース食のメリット

ムース食のメリットは次の5つです。

1、料理の見た目が美しい

ムース食は成型する際に通常食の形に近づけるためそのまま盛り付けても見た目が美しいのですが、切り方や盛り付けを工夫することでさらに美味しそうに見せることができます。

ムース食の切り方の一例をご紹介します。

切り方の名称概要
拍子切り・直方体のムース食2つを各々縦長の1/2にカットして4つにする切り方
斜め切り・拍子切りにしたムース食をさらに斜めに1/4ずつにカットして16個にする切り方
短冊切り・拍子切りにしたムース食をさらに厚さ1/2にカットして8つにする切り方
乱切り・直方体のムース食2つを1/4のサイコロ切りにし、さらに厚さを1/2にカットして8つにする切り方
半月切り・丸い棒状のムース食を縦半分に切り、切り口を下にして直角一定の厚さにする切り方

どれも和食の基本的な切り方なので、高齢者の方にとっては親しみやすい見た目と食べやすい大きさが両立できるでしょう。

ムース食の盛り付けは宅配サービスではプロが美しく行ってくれますが、市販の介護食を利用する場合は少量を平盛り、流し盛り、放射盛りといった和食の盛り付けルールに従って盛り付けることで、より美味しそうに見せることができます。

2、料理の香りを楽しめる

食べ物の美味しさを感じ取るためには、舌から感じる味だけではなく鼻から抜ける香りも重要な要素となります。

例えば風邪をひくといまいち食事が美味しく感じられないのは、鼻がつまってうまく食べ物の香りを感じ取ることができなくなるためです。

鼻の奥には嗅細胞が500万個も存在し、それぞれの先端にはセンサーの役割を果たす嗅覚受容体入りの繊毛が生えています。

このセンサーは約400種類あり、センサーと香り物質の組み合わせで何万種類もの香りをかぎ分けることができるのです。

そのため甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5種類にわけられる料理の味と異なり、料理の香りは無限といってよいほど種類が多いと言えるでしょう。

ムース食は宅配サービスでも市販の介護食でも香りを損ねることがないため、高齢者の方にとっては食事のQOL低下を防ぐことができます。

3、咀嚼しやすく誤嚥防止になる

ムース食は力を入れずにスプーンを置いただけでもその重みで少しスプーンが食材に入っていくほどやわらかいため、咀嚼しやすく誤嚥防止にもつながります。

2020年に筑波大学が発表したプレスリリースによると、2006年から2016年まで食物の誤嚥による窒息死数はおおむね4000人台で推移していました。

しかし窒息死の発生割合は75才~84才の高齢者では10万人あたり16.2人から12.1人、85才以上の高齢者では10万人あたり53.5人から43.6人へと減少しているのです。

誤嚥による窒息死数の減少要因はムース食によるものばかりではありませんが、ムース食が1994年に開発され、広まっていった過程と時を同じくしていることを考えると、誤嚥の防止に一定の効果を発揮していると言えるでしょう。

参考:2020年6月11日筑波大学プレスリリース「食物の誤嚥による窒息死は1月1日に最も多い」

4、箸を使って食べることができる

ムース食は箸を使って食べることができるため、QOL低下の防止と誤嚥防止につながります。

スプーンで食事をすると高齢者の方によっては多めにすくって口に入れてしまうことや、飲み込みが不十分なのに次の一口を口に入れてしまうことがよく見受けられます。

しかし箸の場合はつかむのに時間がかかり、一度につかむことのできる量もスプーンと比較すると少ないため誤嚥するリスクを低下させることができるのです。

5、素材の味を感じることができる

ムース食では宅配でも市販の介護食でも素材をそれぞれに成型しているため、1つ1つの味をしっかりと感じ取ることができます。

ミキサー食や流動食のように、食べる時に全てのおかずが混ざってしまうといったことはないため、高齢者の方がよく味わって食事を楽しむことにつながるでしょう。

ムース食のデメリット

ムース食のデメリットは次の2つです。

1、調理に時間がかかる

ムース食は自宅で調理しようとすると、できるだけ元の食事の見た目に近づけるため素材ごとに個別にミキサーにかけ、固め直すという工程が必要となります。

このため通常食の調理と比較すると工程が多い分だけ時間が多くかかってしまうのです。

このデメリットを解消するためにムース食の宅配サービスや市販の介護食を上手に取り入れると、調理時間を節約しつつ高齢者の方のQOLも維持できるでしょう。

2、コストがかかる

ムース食を自宅で作るためには、ミキサーやゲル化剤などそれなりに必要な道具を揃えなければなりません。

特にゲル化剤は食事を作る際に常に加算されるコストとなるため、通常の食事と比較するとどうしてもお金は多くかかってしまいます。

ムース食の宅配サービスや市販の介護食でもこれは同じことが言えるため、例えば宅配サービスを利用する際は地方自治体の補助を受けることはできないかなど、コストを下げるための方法がないか確認してから導入するのが望ましいと言えるでしょう。

ムース食の宅配サービスとは?

ムース食の宅配サービスにはどのような種類があるのでしょうか。

高齢者向けの配食サービスを行っている大手5社のムース食における特徴を表にまとめてみました。

配食サービス会社の名称ムース食の商品名介護食の規格表示ごはんの取扱い特徴ホームページ内での説明
宅配クック123・ムースセット食・スマイルケア食・「おかずのみ」と「おかず+おかゆ」から選択できる・食塩相当量2.0g
未満
・おかず1食あたり200~234kcalが目安
・参考メニューのカロリーと栄養価表示あり
・参考画像あり
・医師または管理栄養士の指導のもと利用するよう明記
まごころ弁当・ムース食・UDF(ユニバーサルデザインフード)「舌でつぶせる」・「おかずのみ」と「おかず+ごはん170g」から選択できる・普通食を基準に咀嚼・嚥下がしやすいよう配慮してある・参考画像あり(メニュー名表示)
配食のふれ愛同上同上同上同上同上
ワタミの宅食・取扱いなし
ニコニコキッチン・ムース食・UDF(ユニバーサルデザインフード)「舌でつぶせる」・ムース食以外に飲み込みやすさに配慮した「なめらかごはん150g」も注文できる
・「なめらかごはん」はUDF(ユニバーサルデザインフード)「かまなくてよい」
・飲み込む力が弱くなった方におすすめ
・やわらかいムース状で口の中でまとまって貼りつかないため飲み込みやすい
・ムース食となめらかごはんの参考画像あり

ムース食は他の食形態と比較するとコストが多くかかるため、配食サービスの業者にとっても力を入れるかどうかには違いがあります。

ホームページの情報で比較すると、その情報量の多さから「宅配クック123」と「ニコニコキッチン」がムース食に特に力を入れていると言えるでしょう。

そこで宅配クック123の「ムースセット食」とニコニコキッチンの「ムース食」の特徴を比較してみると、ごはんが宅配クック123では「おかゆ」、ニコニコキッチンではUDFの「かまなくてよい」となっているため、咀嚼力・嚥下力とも宅配クック123の「ムースセット食」の方が衰えが少ない方向けだと言えるでしょう。

また塩分摂取量を控えている場合は、宅配クック123の「ムースセット食」の方が2.0g以下と決められているため、管理がしやすいのではないでしょうか。

宅配クック123朝霞・和光店ではムースセット食の宅配も積極的にお引き受けしています。

高齢者の方の食事のQOLをムースセット食で高めたいという方は、ぜひホームページからお問い合わせください。

宅配クック123資料請求ページ

参考:宅配クック123「ムースセット食」
参考:まごころ弁当「ムース食」
参考:配食のふれ愛「ムース食」
参考:ワタミの宅食「お弁当・お惣菜」
参考:ニコニコキッチン「ムース食」

まとめ

ムース食とは介護食の1つで、通常食を細かくすりつぶした後とろみ剤などを混ぜ、型などを使用して料理の形に成型した食事のことで、宅配や市販の介護食品などで使われているとわかりました。

高齢者の方が毎日の食事を楽しむためにも、ぜひムース食を取り入れてみてください。