高齢者は脱水や熱中症予防のためにも水分を多めに摂るのが大切だと聴くけれど、どのくらいの水分摂取量を目安にすればよいのかよくわからない人も多いでしょう。
この記事では人間にとってなぜ水が必要なのかから高齢者における望ましい水分摂取量まで詳しく解説します。
人間にとっての水とは?
年齢や脂肪の量によって異なりますが、人間の身体の約60%は水分でできています。
体内における主な水の役割を表にまとめてみました。
水の役割 | 概要 |
物質の溶解 | 老廃物の排泄のために使用される |
物質の運搬 | 食事の中に含まれる栄養素を血液やリンパ液を介して輸送する |
体温調節 | 水は温まりにくく冷めにくいため体温を一定に保つのに役立つ |
このように人間が体内で1日に利用する水は摂取される水分と排出される水分によって成り立ち、この2つはほぼ等しい量であると言われています。
高齢者にとって望ましい水分摂取量について
厚生労働省では1日の水分摂取量、水分排出量の目安を2.5リットルとし、その内訳は次のようになっています。
・食事1リットル+体内で作られる水0.3リットル+飲み水1.2リットル=1日の水分摂取量2.5リットル
・尿・便1.6リットル+呼吸や汗0.9リットル=1日の水分排出量2.5リットル
これはあくまでも目安のため、運動や暑さのため発汗量が多い際には、より多くの水を必要とします。
より自分に適切な水分補給量を知りたい場合、次のような計算式で求めることができます。
・体重×体重1kgあたりに必要な水分量(ml)÷990.5=水分摂取量(リットル)
体重1kgあたりに必要な水分量は年齢によって異なるため、次の値を使用します。
年齢 | 体重1kgあたりに必要な水分量(ml) |
30才未満 | 40ml |
30歳以上55歳以下 | 35ml |
56歳以上 | 30ml |
例えば年齢が70才で体重が60kgの高齢者の場合で試算すると、60×30÷990.5=1.8172・・・のため、適切な水分摂取量は1.8リットルです。
参考:厚生労働省「健康のため水を飲もう」推進運動
参考:厚生労働省<参考>水
脱水症状について
高齢者は脱水に注意した方がよいとよく言われますが、体内の水分量をどのくらい失うと脱水症状が現れるのでしょうか。
表にまとめてみました。
脱水率 | 症状 |
2% | のどの渇き |
3% | 強い喉の渇き、食欲減退、皮膚の紅潮 |
5% | めまい、疲労感 |
8%~10% | 筋肉のけいれん、失神、循環不全 |
20% | 死亡 |
人間の身体の60%は水分なので、多少の脱水では大丈夫だと思いがちですが、3%の水が失われるだけでも脱水症状は起こりはじめるため、高齢者の場合は特に水分摂取量に気を付け、心がけて水を飲む方がよいと言えるのです。
このことから厚生労働省では「入浴後」や「起床後」など、発汗によって体内の水分が不足しがちなタイミングで「あと2杯」水を飲むことを推奨しています。
脱水が引き起こす疾患について
脱水によって引き起こされる疾患にはどのようなものがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
1,熱中症
熱中症とは体内の水分や塩分の減少、血液の流れが滞るなどの原因で体温が上昇し内臓が高温にさらされることで発症する障害の総称です。
死に至る可能性もありますが適切な予防方法を実践することで完全に防ぐことができ、適切な応急処置を行うことで重症化や後遺症の発生を減少させることができます。
熱中症になりやすい人として高齢者が挙げられていますが、その理由は次の通りです。
- 暑いことやのどのかわきを感じにくくなる
- 体温調節機能が衰える
- 発汗量・皮膚血流量が減少し増加しにくい
- 体内の水分量が低下している
このことはデータでも証明されており、1970年から2016年にかけて京都女子大学が行った調査結果によると、熱中症による死亡総数に占める65才以上の高齢者の割合は1995年には54%でしたが、2008年には72%、2015年には81%と上昇しているのです。
熱中症を予防するための水分補給のポイントは次の通りです。
- 小まめに、また喉がかわく前に水分を補給する
- アルコールを飲むと体内の水分を排出してしまうため水分補給としてお酒は飲まない
- 起床時と入浴前後に水分補給をしておく
- 大量に汗をかいた際は塩分も補給しておく
また熱中症にかかってしまった際の応急処置の方法を表にまとめてみました。
応急処置の項目 | 概要 |
涼しい環境への避難 | ・風通しの良い日陰かクーラーの効いた室内へと移動する |
脱衣と冷却 | ・衣服を緩めて熱を放出させ、首の後ろ、腋の下、太もものつけねを氷枕や冷却シートなどで冷やす |
水分・塩分の補給 | ・意識のある場合冷たい水や経口補水液、スポーツドリンクなどを飲ませる |
医療機関への搬送 | ・意識のない場合救急搬送する |
高齢者が熱中症のリスクを軽減するためには、自分にとって適切な水分摂取量を把握し小まめに水分補給をおこなうことが大切だと言えるでしょう。
2、脳梗塞
脳梗塞とは脳の血管の一部がつまり、その先に十分な血液が流れず脳細胞がダメージを受ける病気です。
血液が流れないと脳細胞に必要な酸素やエネルギーが足りなくなり壊死するのですが、一度壊死した脳細胞がよみがえることはありません。
「脳血栓」と「脳塞栓」の2種類があり、脳血栓は脳動脈がせまくなり、徐々にふさがってつまることで、脳塞栓は、心臓など他の場所でできた血の塊である血栓が脳動脈をふさいでつまることです。
脳梗塞を引き起こす要因として考えられるのが脱水による体内の水分不足です。
特に夏は気温や湿度が高く発汗量が多くなるため、高齢者はそれに見合った水分摂取量を確保しなければ脳梗塞のリスクは高まります。
脳梗塞を予防するための水分補給のポイントは次の通りです。
- 小まめに水分を補給する
- 夜の大量飲酒はしない
- 就寝前にコップ1杯の水を飲む
また次のような症状が出たら様子を見ずに受診しましょう。
- 身体の左右どちらかがしびれる、動かせない、力が入らない
- ろれつが回らず言葉が出ない
- 視野が半分欠ける
- ふらつきがある
- めまいが起こる
参考:国立研究開発法人「国立循環器病研究センター 脱水や夏かぜにご注意ください」
3、心筋梗塞
心筋梗塞とは心臓が酸素不足に陥ることによりダメージを受ける病気です。
心筋を取り巻いている冠動脈は心臓に血液と酸素を送っていますが、これがつまると心筋は酸素不足となり、心筋細胞が壊死を起こしてしまうのです。
心筋細胞の壊死は血流が止まってわずか20分で始まり、激しい胸痛を伴います。
心筋梗塞を引き起こす要因の1つとして考えられるのが脱水による血液粘稠度(血液の硬さ・やわらかさ・流動性などを表す)の上昇です。
心筋梗塞を予防するための水分補給のポイントは次の通りです。
- 1日にコップ5杯以上の水を飲む人は2杯以下の人より心筋梗塞の発症率が低くなるため小まめに水分補給をする
- 就寝時の発汗による朝の血液粘稠度の上昇は夜中のスポーツドリンク250mlの補給で予防できる可能性があるため、寝る前にコップ1杯のスポーツドリンクを飲む
高齢者の場合は日ごろから心筋梗塞予防のためにも自分に合った水分摂取量を維持するのが大切ですが、20分以上激しい胸の痛みがおさまらなければすぐに救急車を呼び、受診するようにしましょう。
参考:日本老年医学会雑誌「水分を多く摂取することで脳梗塞や心筋梗塞を予防できるか?システマティックレビュー」
適切な水分摂取の方法
人間が水分を摂取する方法は、水から摂る方法と食べ物から摂る方法があるので、それぞれの留意点について説明します。
水から摂る方法
水分摂取をする方法としてすぐに思い浮かぶのが水から摂取する方法ですが、高齢者の人が水分摂取量を確保する上でやってはいけないのがアルコールから摂取することです。
アルコールには利尿作用があるため、ビール10本でビール11本分の水分が体内から排出されてしまうのです。
水分補給は水や経口補水液、また塩分の補給が必要な場合はスポーツドリンクなどを上手に取り入れて行うようにしましょう。
食べ物から摂る方法
水分は食事からも摂取することができます。
そのため、高齢者の場合は水分量の多い食べ物を把握して介護食のメニューなどに活かせば、必要な水分摂取量を確保しやすくなります。
食品に含まれる水分量は、文部科学省の「食品データベース」を使用すると簡単に検索することができます。
水分の多い食品を一部抜粋して表にまとめてみました。
食品名 | 水分量(100gあたり) |
うどん | 75g |
食パン | 39.2g |
もやし | 92g |
きゅうり | 95.4g |
鶏肉 | 62.8g |
あさり | 90.3 |
あんこう | 85.4g |
すけそうだら | 81.6g |
すいか | 89.6g |
いちご | 90g |
発汗量の多い日や夏場などは水分を多く含むメニューを取り入れるとより効率的に水分摂取ができるでしょう。
宅配クック123の配食サービスと水分摂取
宅配クック123朝霞・和光店のホームページでは、「今月の献立」で配食サービスを利用される方向けにその月のメニューをあらかじめ公開しています。
そのためメニューに使用されている食材を「食品データベース」で検索すれば高齢者の方が食事から摂ることのできる水分摂取量を知ることができるのです。
また「おじやセット」など、あまり食欲のない時でも手軽に食べ物から水分補給できるメニューも選択できます。
高齢者の方が適切な水分摂取量を確保し、脱水から来る熱中症・脳梗塞・心筋梗塞などの疾患を手間をかけずに予防するためにも宅配クック123の配食サービスの利用を検討してみませんか。

まとめ
人間が必要な水分摂取量は1日に2.5リットルが目安で、高齢者の方向けには体重×体重1kgあたりに必要な水分量(ml)÷990.5という計算式を用いるとより適切な水分摂取量が試算できるとわかりました。
脱水によるさまざまな疾患のリスクを少しでも減らすためにも、高齢者の方が飲料水だけではなく食べ物からも適切な水分摂取ができるよう工夫してみてください。