介護食の種類として刻み食があるのは知っているけれど、具体的な作り方や噛む力や飲み込む力がどのような状態の人に合うのかまでは良くわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では刻み食のメリットから作り方まで詳しく解説します。
刻み食とは?
刻み食とは食材を5mm~1cm程度に刻んで食べやすくした食形態で、飲み込む力は十分でも噛むことが難しい人向けに提供される介護食です。
具体的には次のような人に向いています。
・歯の調子が良くない人
・義歯を使用している人
・口が開きにくい人
・唾液の量が低下していない人
・飲み込む力が十分にある人
介護食としては定番の食形態で、個人の噛む力に合わせて食材の大きさを調整することが可能です。
刻み食のメリット
食事援助において刻み食を導入するメリットを3つご紹介します。
食材の風味が感じられる
刻み食は通常食と比較すると食材の切り方だけを変更しているため、味や風味が大きく変わるわけではありません。
そのため食材の香りや味、彩りをそのまま楽しむことができます。
噛む力が弱くても食べられる
刻み食では食材を細かく刻んで提供しているため、噛む力が弱くても食べることができます。
通常食を食べにくくなった高齢者でも刻み食を提供することで食事を摂ることができるため、栄養状態が悪くなりにくくフレイルなどの予防にもつながるでしょう。
個人の状態に合わせて食材の大きさを調整できる
刻み食においては個人の噛む力に応じて食材の大きさを自在に調整することができます。
通常食と比較して多少小さめに刻むところから始め、噛む力が衰えてしまった場合それに合わせて刻み方を変えていけばよいわけです。
歯の治療などを行って噛む力が戻った場合、再度通常食に近い大きさに戻すといった対応もできるため、介護食の中でも柔軟な食形態だと言えるでしょう。
刻み食のデメリット
刻み食を導入するデメリットも3つご紹介します。
誤嚥の可能性がある
刻み食は噛む力に問題があっても、飲み込む力は衰えていない人に向いた食形態ですが、飲み込む力に問題が生じてくると誤嚥の可能性が出てきます。
刻み食は食材を細かく刻んでいるため口の中でまとまりにくく、バラバラな状態で飲み込もうとすると食材の粒が気道へと入り込む場合があるため、誤嚥につながりやすいのです。
刻み食を提供する場合、高齢者の飲み込む力の見極めは慎重に行う必要があると言えるでしょう。
衛生管理に手間がかかる
刻み食は一般的に食材をまな板の上で細かく刻んで作りますが、通常食よりも食材とまな板の触れる面積が広くなるため、衛生面に気をつけないと食中毒などのリスクが高まります。
食品事業者においては2014年よりHASSPの基準を取り入れて衛生管理を行っているため、例えばカット野菜1つにおいても切り方から品質維持の方法まで細かく指定されていますが、家庭で刻み食を作る場合はなかなかそこまでの衛生管理は難しいでしょう。
刻み食を調理する場合は、調理する部屋の温度や湿度に気を配り、調理器具の殺菌をまめに行うなどの工夫が大切です。
参考:一般財団法人食品産業センター「HACCP導入のための手引き」
念入りな口腔ケアが必要になる
刻み食は食材を細かく刻んで作っているため、歯の間などに挟まりやすく食後は歯磨きや入れ歯のケアなどを入念に行う必要があります。
高齢者が口腔ケアを自分で行うことができる場合であっても、刻み食を提供している場合は歯磨きでの磨き残しの確認や入れ歯のお手入れがちゃんとできているかのチェックを定期的に行うのが望ましいでしょう。
刻み食における作り方のポイント
刻み食を作る場合には、どのようなポイントに気を付けるのがよいのでしょうか。
3つご紹介します。
しっかりと刻む
刻み食の作り方の基本は高齢者の噛む力に合わせた大きさにしっかりと刻むことです。
水分を多く含む食材や柔らかい食材はこれだけでも食べやすさが違ってくるためです。
刻み食を時短で作りたい場合や刻みにくい食材を使用する場合は、フードプロセッサーなどの機械や調理用のハサミを適宜用いて刻むのもよいでしょう。
丁寧に刻んだ後は、見た目をきれいに盛り付ける工夫も大切です。
食材に応じて調理方法を工夫する
刻み食においては水分の少ない食材や噛みにくい食材は柔らかく煮たり、とろみをつけたりするなど一手間加えてから刻むのも重要です。
小さく刻んでも固いままでは歯の間に挟まってうまく食べることができなかったり、誤嚥の原因になったりするため注意しましょう。
食材をほぐす・つぶす
例えば魚などは刻むより骨を丁寧に取り除いてからほぐす方が、刻み食として見た目もきれいに調理できます。
同じくかぼちゃ・じゃがいも・さつまいもなどもつぶしてペースト状にしたり、スープにしたりするとより食べやすくなるでしょう。
刻み食において刻むことは大切ですが、それにとらわれすぎずに調理法に柔軟性を持つことが大切です。
刻み食を作る際の注意点
刻み食を作る際に注意したいことを2つご紹介します。
口の中でまとまりやすくする
刻み食は飲み込みに問題がない高齢者向けの食事ではありますが、誤嚥を予防する観点から考えると口の中でまとまりやすくする配慮は行った方がよいでしょう。
風味にあまり影響のない範囲で薄いとろみをつけたり、水分の少ない食材は煮たりするなど工夫して刻み食を提供することが重要です。
調理器具を清潔に保つ
刻み食のデメリットの項目でも紹介しましたが、調理器具を清潔に保つよう心がけましょう。
家庭で調理を行う場合、刻み食を作るための包丁やまな板などを別に準備するのもおすすめです。
刻み食のおすすめレシピ
家庭でもあまり手間をかけずに作ることのできる刻み食のおすすめレシピを3つご紹介します。
かぼちゃサラダ
紫玉ねぎときゅうりで見た目や食感も楽しむことができるかぼちゃサラダです。
材料(1人分)
・ゆでたかぼちゃ(150g)※ゆで加減は高齢者の方の噛む力に合わせる
・きゅうり(50g)
・紫玉ねぎ(40g)
・塩(適量)
・酢(10g)
・マヨネーズ(25g)
・こしょう(少々)
【作り方】
- ゆでたかぼちゃと塩、酢をボウルに入れ、つぶして混ぜる
- きゅうりと紫玉ねぎを高齢者に合った大きさに刻んだ後塩を振って10分間置き、よく揉んでやわらかくする
- きゅうりと紫玉ねぎを水洗いして絞る
- かぼちゃときゅうり、紫玉ねぎを混ぜてマヨネーズとこしょうで味を整えて完成
家庭ではゆでたかぼちゃが余った際などに作り置きしておくのもよいでしょう。
塩鮭の大葉和え
ごはんのおかずとしてもおにぎりの具としても定番の塩鮭を用いた刻み食レシピです。
材料(1人分)
・甘塩鮭(70g)※1切れ
・大葉(2g)
・水(100g)
・酒(5g)
【作り方】
- 水と酒をボウルに入れ、甘塩鮭をひたして10分間置く
- 水気をキッチンペーパーで拭き取って6~8分ほど蒸す
- 甘塩鮭に熱が通ったら骨を取り除き、高齢者の噛む力に合わせた大きさにほぐす
- 大葉を刻む
- 甘塩鮭と大葉を混ぜて完成
ごはんのおかずとして提供し、余ったらおにぎりの具として使用するのもよいでしょう。
野菜シチュー
高齢者に洋食はカロリーや脂質の摂り過ぎを考慮して避ける人も多いかもしれませんが、寒い時期の煮込み料理は身体が温まるため喜ばれることが多いのです。
介護食は栄養バランスを考えて提供するのを第一に考えがちですが、生活の質(QOL)を高めるためには食べる楽しみを時には優先するのもよいでしょう。
材料(1人分)
・缶詰のコーン(大さじ2)
・人参(1/4本)
・ブロッコリー(50g)
・シチュールー(適量)
・水(300ml)
【作り方】
- 野菜をよく洗いコーン、人参、ブロッコリーを高齢者の噛む力に合わせた大きさに刻む
- 鍋に刻んだ野菜と水を入れて火にかける
- 沸騰したら火を弱め、ルーを溶かして野菜が柔らかくなるまで煮込んだら完成
野菜だけでは物足りないと感じる人向けにはほぐした鶏肉を加えて作ると喜ばれるでしょう。
刻み食が食べにくくなったら宅配クック123にご相談ください
刻み食は家庭でも比較的調理しやすく、高齢者の噛む力に合わせた微調整も手軽に行えるため便利な食形態ですが、少しずつ飲み込む力にも問題が生じて刻み食では対応しきれなくなることもあります。
そのような場合はひとまず宅配クック123にご相談ください。
宅配クック123ではさまざまな食形態で介護食の配食サービスを行っており、入れ歯や義歯などで固い食材は食べにくい高齢者の方向けに「やわらか食」「ムースセット食」を提供しています。
宅配クック123のやわらか食は凍結含浸法という調理法を用いて野菜や肉をやわらかく仕上げ、しっかりとした形があり、農林水産省が推奨するスマイルケア食の指定を受けているのです。
見た目や色が美しく、歯茎や舌でつぶせるやわらかさのため刻み食が食べにくくなった高齢者の方でも食事を楽しむことができ、容易に飲み込めるようになっています。
またムースセット食は通常食を細かくすりつぶした後とろみ剤などを混ぜ、型などを使用して料理の形に成型していますが、宅配クック123では野菜、肉、魚などの素材が持つ風味を大切にしながら調理しているのです。
刻み食を飲み込むことが難しくなった高齢者の方には、ぜひ宅配クック123のやわらか食、ムースセット食をおすすめください。
まとめ
刻み食とは食材を5mm~1cm程度に刻んで食べやすくした食形態で、飲み込む力は十分でも噛むことが難しい人向けに提供される介護食ですが、個人の噛む力に合わせて柔軟に食材の大きさを変更できたり、食材の風味をそのまま楽しめたりする便利な食形態だとわかりました。
この記事も参考にして刻み食の特性を活かし、ぜひ高齢者の方が充実した食生活を送れるよう心掛けてみてください。