慢性腎臓病の人向けに透析食という食事があるのは知っているけれど、具体的な内容や基準まではよくわからないという人は多いのではないでしょうか。

この記事では腎臓病における食事療法の基準から透析食の作り方まで詳しく解説します。

透析食とは?

透析食とは長期に渡る透析療法において合併症を予防するのを目的として行われる食事療法です。

透析食における具体的な基準は、2014年に日本腎臓学会が提唱した「慢性腎臓病に対する食事療法基準」によって次の表のように定められています。

項目血液透析の場合(1日あたり)腹膜透析の場合(1日あたり)
エネルギー(体重1kgあたり)30~35Kcal(体重1kgあたり)30~35Kcal
たんぱく質(体重1kgあたり)0.9g~1.2g(体重1kgあたり)0.9g~1.2g
食塩6g未満PD 除水量(L)×7.5 +尿量(L)×5
水分できるだけ少なくPD 除水量 +尿量
カリウム2000mg以下制限なし
リンたんぱく質(g)×15以下たんぱく質(g) ×15以下

この数値は成人用ですが、表にもあるように個人の体格や性別、年齢、身体活動レベルなどに応じて適時変更するのが望ましいことを覚えておきましょう。

項目別に管理する目的をご紹介します。

エネルギー

腎臓病の食事療法においてエネルギー量を考える場合、目標とする体重と制限するたんぱく質の量とのバランスを考えて設定する必要があります。

標準体重の人に対して標準的な食事療法を行い、たんぱく質制限を強化する場合は摂取するタンパク質の量を1日で体重1kgあたり0.6~0.8g、エネルギー摂取量が35 kcalとするのが望ましいとされています。

しかし性別や身体活動量、肥満や糖尿病の有無などに応じてこの数値は変動するため、医師の指導に応じたエネルギー摂取量を満たす透析食を提供することが望ましいと言えるでしょう。

たんぱく質

慢性腎不全を予防するため、食事におけるたんぱく質制限は海外でも各国のガイドラインに沿って広く行われてきました。

海外での基準は1日で体重1kgあたり0.6~1.0gという値での制限が望ましいとされていますが、日本の透析食においてはたんぱく質の制限とともにエネルギー摂取量が大幅に下がってしまうのを避けるため、少し多めの値となっています。

食塩

一般的には食塩を制限することにより血圧を低下させることができます。

そのため透析食において血圧と尿蛋白量を低下させて腎不全などを予防するためには、1日あたりの食塩摂取量を6g以下に抑える必要があるのです。

水分

透析治療はそもそも腎臓の代わりに身体にたまった老廃物、余分な水分などを装置によって体外に出し、洗浄する治療です。

透析治療を受けている人が水分を多く摂り過ぎると、むくみ・体重増加・呼吸困難・血圧上昇などの症状が現れ、高血圧・心不全・肺水腫などを引き起こしてしまいます。

このことから透析食においてはできるだけ水分を控えることが大切なのです。

カリウム

透析治療を受けている人は腎機能が低下していて高カリウム血症を合併するリスクが高くなるため、カリウムの制限をする必要があります。

しかし透析治療を行うにあたってはたんぱく質の摂取量を増加させるためにカリウムの制限量を緩和する必要があり、2000mg以下という数値が設定されました。

この数値も一律なものではないため、透析食においては医師の指導に応じて数値を設定することが大切です。

リン

リンの過剰摂取で引き起こされる高リン血症は腎機能の低下させる要因となるため、透析食においてはリンを制限する必要があります。

透析食においてはたんぱく質の摂取制限をすることで、同時にリンも制限することができるでしょう。

参考:日本腎臓学会「慢性腎臓病に対する食事療法基準2014年度版」

透析食における食事管理のポイント

透析食の基準を知ると、食事管理がとても難しいように感じますが、次の3つのポイントを理解すると管理しやすくなるでしょう。

  1. 栄養状態を良好に保ちやせないようにする
  2. 食塩の摂りすぎに注意し水分摂取量を守る
  3. カリウムとリンの摂取量に注意する

これらの3つのポイントを基に、それぞれの項目における管理のコツをご紹介します。

エネルギー

透析食においてエネルギーを十分に摂取するコツは次の3つです。
① 主食(ごはん、麺類、パンなど)をしっかり摂る
主食をきちんと摂ることで一定のエネルギーを摂取することができるため、献立から主食を抜かないように心がけましょう。

② 油脂や砂糖を利用する
油を摂取しやすい揚げ物、炒め物、サラダ、また砂糖を利用する煮物などを献立に取り入れるとエネルギー摂取を維持しやすくなります。

油が多いメニューは重すぎて苦手という場合は砂糖、水あめ、バターなどを使ったお菓子を間食に取り入れるのもおすすめです。

③ でんぷん製品を料理に取り入れる
春雨、くずきり、片栗粉などをメニューに取り入れるとエネルギーを摂取しやすくなります。

主食や油、砂糖を用いたメニューのような重さがないため、手軽に取り入れられるのがうれしいメリットと言えるでしょう。

たんぱく質

透析食でたんぱく質を制限しながらも、良質なたんぱく質を摂るコツは次の通りです。

① たんぱく質を肉・魚・豆から摂るようにする
肉・魚・豆は必須アミノ酸がバランス良く含まれているため、透析食でたんぱく質を摂る場合はこれらの食品から摂ることをおすすめします。

② 高齢者はたんぱく質の摂取不足に注意する
高齢者の場合、食事自体のボリュームが少なすぎたり、食事を抜いてしまったりしてエネルギーとたんぱく質が同時に不足してしまうことがあります。

食事を3食規則正しく食べて、たんぱく質を制限しながらも不足しないように心がけましょう。

③ たんぱく質は3食に分けて摂取する
たんぱく質は1食で1日の分をまかなおうとせず、3食にわけて摂取することが大切です。

食塩

透析食において食塩を制限するコツは次の通りです。

① 食卓に塩と醤油を置かない
塩分を含む調味料を食卓に置くと、あまり意識せずに塩分量をオーバーしてしまいがちになります。

調理時も100円ショップで購入できるスプレー式の醤油ボトルを使用するなどの工夫をして、減塩に努めましょう。

② 調理法を工夫する
減塩をすると食事の風味が劣化するのではないかと思われがちですが、だしを効かせる、酸味や香辛料を取り入れる、旬の食材を用いるなどの工夫で味を良くすることができます。

食材本来の味を引き出すように調理することで、透析食がより美味しくなるでしょう。

③ 漬物をなるべく避ける
漬物は箸休めとして1品加えてしまいがちですが、塩分を多く含む食品のため透析食の場合はなるべく避けることをおすすめします。

水分

透析食において水分制限をするコツは次の通りです。

① 手軽にお茶を飲める道具を周囲に置かない
電気ケトルや保温つきの電気ポット、ティーバッグなどを居間に置いておくと、手軽にお茶を飲めるため水分制限がしにくくなります。

あまり意識せずに水分を摂取できる環境を作らないことが大切です。

② 冷たい飲み物より熱い飲み物を飲むようにする
熱い飲み物の方が少量でも満足できるため水分制限しやすくなるだけではなく、身体を温めることができるのが高齢者にはメリットとなります。

③ 小さめのコップを準備する
本人の好みに合った小さめのコップを準備すると、飲みすぎを防止し気持ちよく水分制限ができるでしょう。

カリウム

透析食においてカリウムを制限するコツは次の通りです。

① カリウムを多く含む食品を把握しておく
カリウムを制限するためにはまずカリウムを多く含む食品にはどのようなものがあるのかを知る必要があるため、表にまとめてみました。

食品の分類食品
果物バナナ、メロン、キウイフルーツ、ドライフルーツ、アボカド
野菜ほうれん草、たけのこ、カリフラワー、芽キャベツ、枝豆、とうもろこし
芋類さつま芋(干し芋も含む)、じゃがいも、里芋、大和芋、長芋
豆類大豆、納豆、きな粉
種実類栗、ぎんなん、アーモンド、ピーナッツ

芋類はでんぷんを多く含む食品のため、エネルギー維持のために献立に取り入れようとしがちですが、カリウムを多く含むため摂り過ぎに注意しましょう。

② 野菜ジュースや牛乳の飲みすぎに注意する
高齢者の場合喉の通りが良く手軽に栄養補給ができるため野菜ジュースや牛乳を飲む人もいますが、カリウムを多く摂り過ぎてしまう可能性があるのであまりおすすめしません。

リン

透析食においてリンを制限するコツは次の通りです。

① 加工食品を控える
家庭での調理に手間をかけたくない場合市販の加工食品を利用しがちですが、加工食品にはリンが多く含まれているため透析食には用いないことをおすすめします。

② おやつを食べ過ぎない
おやつによく用いられる牛乳、卵、チーズなどの乳製品はリンを多く含むため、食べすぎに注意しましょう。

甘いものがどうしても食べたければ和菓子にするといった工夫をしてみてください。

実際に透析を受けている方の食事管理とは?

筆者の友人で、27年間透析を受けながら食事管理を受けている方に管理のコツを伺ってみたところ、次のようなポイントを抑えた管理を行っているそうです。

  1. 制限のある食材は量で調整する
  2. 野菜はなるべく火を通して食べる
  3. カリウム制限とリンの制限を特に意識する
  4. お酒は週に缶ビール1本程度とする
  5. 周囲に食事制限について伝えておく
  6. 万歩計をつけて運動量も管理する

透析をしながら会社で仕事をし、お酒のつきあいもあったため食事管理については周囲に理解してもらうことが特に大切なのだそうです。

また食事管理をする・しないで腎臓病の予後が大きく変わることをちゃんと意識するのが望ましいとのことでした。

透析食を手軽に取り入れるなら宅配クック123

透析食の基準や食事管理のポイントについて理解はしたものの、自分で調理するとなると敷居が高いと感じる人も少なくないのではないでしょうか。

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宅配クック123ではおかず1食あたり228~252kcal、たんぱく質14.4~17.6g、カリウム600mg以下、リン225mg以下、食塩相当量2.0g未満を目安とした透析食を提供しています。

毎日透析食の基準に合わせた調理を行うのが難しい場合や、作ることができてもたまに息を抜きたい場合など1日1回、1食からでもご注文を承っています。

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まとめ

透析食とは長期に渡る透析療法において合併症を予防するのを目的として行われる食事療法で、具体的な基準は、2014年に日本腎臓学会が提唱した「慢性腎臓病に対する食事療法基準」によって定められていることがわかりました。

この記事も参考にしいて透析食の基準を正しく理解し、腎臓病を悪化させない食生活を目指してみてください。