介護の現場で老人性うつという言葉やその予防について耳にするけれど、そもそもどのような病気なのかイメージがわかないという人も多いのではないでしょうか。

この記事では老人性うつの症状から認知症との違い、予防方法まで詳しく解説します。

老人性うつとは?

老人性うつとは正式な病名ではありませんが、65才以上の人に見られるうつ症状を指します。

2017年に厚生労働省が行った患者調査の結果によると、65才以上の気分(感情)障害(躁鬱病を含む)の患者数は42万2千人で、2014年が39万3千人だったことと比較すると3万人程度増加しているのです。

この結果からも介護の現場では老人性うつについての理解を深め、予防に努めることが大切だとわかるでしょう。

参考:厚生労働省「患者調査」

老人性うつの原因とは?

老人性うつの原因には「環境的要因」「心理的要因」の2つがあるとされているため、それぞれの具体例をご紹介します。

環境的要因の具体例

環境的要因とは老人性うつの原因の中で生活環境の変化が発症のきっかけとなった場合を指し、具体例は次のようなものがあります。

  • 定年退職した
  • 子供が独立した
  • 引っ越しをした
  • 離婚をした
  • 家族や親戚、友人に会える機会が少ない
  • 夢中になれる趣味がない
  • 経済的な困難を抱えている
  • バランスの良くない食生活を送っている

心理的要因の具体例

心理的要因とは老化に伴う肉体的・精神的な衰えが老人性うつの発症のきっかけとなった場合を指し、具体例は次の通りです。

  • 配偶者と死別した
  • ペットと死別した
  • 重い病気にかかった
  • 病気がなかなか治らない
  • 病気の後遺症がある
  • 夫婦の性的関係がなくなった
  • 友人や親戚との関係が悪化した

老人性うつ特有の症状とは?

老人性うつ特有の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

身体の不調を訴える

老人性うつの患者は、若い世代のうつ患者と比較すると身体の不調を訴えることが多いという特徴があります。

具体的には次のような症状を訴えてくることが多いでしょう。
・頭痛
・胃痛
・息苦しさ
・身体のしびれ
・めまい
・胸の痛み
・不眠

これらの症状を病院で検査してみると異常なしと判断されてしまうため、最終的に精神科や心療内科
を受診してようやく老人性うつが原因と判明することもよく見受けられます。

妄想が見られる

妄想とは、現実ではないことを強く確信していて周囲が説得してもその考えを変えられないという症状です。

老人性うつにおいては、自分に価値がないと思い込む妄想である微小妄想が見られることがあります。

微小妄想には3つの種類があるため、それぞれの内容を表にまとめてみました。

妄想の種類概要
心気妄想自分が重篤な病気にかかっていると思い込む妄想
貧困妄想貯金があるのにお金がない、破産したと思い込む妄想
罪業妄想ささいなことで重罪を犯したと感じ逮捕される、罰せられるなどと思い込む妄想

微小妄想が重篤化すると極端に自発性が低下し、無言・無動の昏迷状態に陥ることがあります。

不安や緊張がある

老人性うつでは不安や緊張に駆られるのも特徴的で、これが強まると自殺などに結び付くこともあるでしょう。

身体の不調や妄想と比較すると、周囲の人が気づきやすい症状だと言えます。

老人性うつ・認知症・アパシーの違いについて

老人性うつ、認知症、アパシーの3つは症状が似通った部分があり混同されやすいため、違いを項目別に表にまとめてみました。

老人性うつ認知症アパシー
初期症状身体の不調・抑うつなど性格の変化・記憶障害などはっきりとは現れない
症状の進行何らかのきっかけで発症・短期間で激変することがある遅い急に進行することもある
気分の落ち込み多い少ない意欲もなく落ち込みもしないフラットな状態
物忘れ・忘れ方短期記憶に支障が出る・自覚があり忘れやすいと訴える短期記憶に支障が出る・自覚が少なく、取り繕う傾向がある記憶に支障はない
攻撃性なし出現することもありなし
妄想の種類心気妄想・罪業妄想・貧困妄想などの微小妄想もの盗られ妄想などなし
日内変動朝方調子が悪く、夕方になるにつれて良くなる比較的少ない少ない

老人性うつと認知症は併発する場合があり専門家でも見分けが難しい場合があるため、疑いのある症状が見受けられたらまず受診し、専門の医師に相談することが大切です。

老人性うつの治療について

老人性うつの治療方法には薬物療法、環境調整、精神療法の3種類があるため、それぞれの内容をご紹介します。

薬物療法

薬物療法とはその人に合った抗うつ剤などを処方して経過を観察する治療法です。

食欲不振や不眠、不安や緊張の改善に効果的ですが、若い世代のうつに対する薬物療法と比較すると老人性うつの治療では副作用が出やすく効果が出にくいというデメリットがあります。

またどのような薬物でも同じですが、他の病気の治療を並行して行っている場合薬の飲み合わせに関しては配慮が必要なため、飲んでいる薬は医師に全て報告するようにしましょう。

環境調整

環境調整とは老人性うつの原因である環境的要因を調整する治療方法です。

孤独感の強い人には関わる時間やコミュニケーションを増やし、バランスの良くない食生活を送っているなら食事の改善を行います。

医師の指導を受けながら実行していくことが大切です。

精神療法

精神療法とはカウンセラーなどが行うカウンセリングを通して老人性うつの改善を目指す治療方法です。

薬物療法との組み合わせで行われることが多いでしょう。

周囲の人の関わり方が治療のプラスになることもあるため、医師のアドバイスをもらうのもおすすめです。

周囲が気を付けたい老人性うつのサインとは?

老人性うつは老化現象の1つと勘違いされたり、認知症やアパシーと間違えられやすかったりするため周囲が症状の進行に気づきにくく、受診が遅れてしまうことがあります。

このようなことを避けるために覚えておきたい老人性うつのサインを5つご紹介します。

  • 習慣だったことができなくなる
  • 無口になり、ぼんやりしている
  • 趣味や好きなことへの興味がなくなった
  • 体に不調があるが、検査をしても異常が見つからない
  • 死にたい気持ちをほのめかす

様子観察をする上で普段と違う言動や行動が見られないかに気を付けて行うようにすると、老人性うつのサインに気づきやすくなるでしょう。

また老人性うつのサインを感じたら、自己判断は避けてまずは受診することが大切です。

老人性うつの予防法

老人性うつにかからないよう予防するには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

3つご紹介します。

社会とのつながりを絶やさないようにする

定年退職して会社での人間関係に区切りをつけたとしても、地域の活動に参加したり、ボランティアを始めたりすれば新たな人間関係を築くことができるでしょう。

また給与が多くなくとも働く喜びを感じたい人にはシルバー人材センターへの登録などもおすすめです。

自発的に社会とのつながりを作る人であればそれを支持的に見守るのが望ましく、自分から積極的にそのような行動を取らないタイプの人であれば周囲の人が見守りを行い、気にかけておくことが大切です。

生活に運動を取り入れる

年齢を重ねるほど運動をしたり、身体を動かしたりすることをおっくうだと感じがちですが、日光を浴びて屋外で運動するのは精神を安定させる神経伝達物質のセロトニンの分泌を促すため、生活の中で身体を動かす習慣を作るのは老人性うつの予防のためには重要です。

高齢者本人が若いころ所属していた部活や、趣味で行ってきた運動などを聴いて、好きな運動に目が向くように促すのも良い方法だと言えるでしょう。

バランスの取れた食生活を心がける

自炊をせずコンビニのお弁当やスーパーのお惣菜中心の食生活を送ると必要な栄養素が不足し、炭水化物中心の食生活になりがちです。

このような食生活を続けていると脳の働きが鈍くなってしまい、老人性うつの引き金を引くことになってしまいます。

さまざまな食材を取り入れ、栄養バランスの良い食生活を送ることが老人性うつだけではなく、生活習慣病全般の予防にもつながるでしょう。

老人性うつの予防に宅配クック123のお弁当を

あまり手間をかけずに老人性うつの予防を心がけたいなら、宅配クック123の配食サービスを利用してみてはいかがでしょうか。

宅配クック123の普通食は少量のおかずを少しずつ楽しむことができるため、栄養のバランスが取りやすく老人性うつの予防を食事面からサポートすることができます。

また普段から運動を心がけていたり、仕事を続けていたりして運動量の多い方向けには健康ボリューム食を用意し、栄養が偏る心配をせずにボリュームのある食事を楽しめるように工夫しているのです。

それぞれの季節に応じた行事食なども豊富に取り入れているため、食事を楽しみにしている人にとっては老人性うつの予防だけではなく、生活の質(QOL)を向上させることにもつながります。

宅配クック123では、高齢者の方が心も身体も健やかな毎日を過ごすのを、食事の面から応援したいと考えています。

試食をして高齢者ご本人に味を確かめていただくことも可能なので、興味のある方はぜひ一度お問い合わせをお願いします。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

老人性うつとはうつの中でも65才以上の人に見られるうつ症状を指し、薬物療法、環境調整、精神療法などの治療方法が確立されているため治らない病気ではありませんが、高齢者の方が健康的に生活を送るためにも予防を心がけ、もしかかってしまった際も周囲の人が早めにサインに気づくことが大切だとわかりました。

もし普段とは異なる言動や行動を見かけたらすぐに対処し、老人性うつを重症化させないように心がけましょう。