高齢者の健康維持のためにはなるべく減塩を心がけることが大切だとわかっているけれど、どのように取り組めば良いのかよくわからないと悩んでいる人はいませんか?
この記事では減塩食とは何かから、献立作りにおける減塩のコツまで詳しく解説します。
日本における食塩摂取量の現状
2019年に厚生労働省が発表した「令和元年国民栄養・健康調査」の結果では、食塩の1日あたりの平均摂取量が男性10.9g、女性9.3gという結果でした。
しかし65才以上の高齢者が含まれる60才~69才までの男性は11.5g、女性は10.0g、70才以上までの男性は11.2g、女性は9.5gの食塩を摂取しています。
この数値を厚生労働省が「日本人の食事摂取基準 2020年度版」において定めた食塩摂取量の目標値である1日あたり6.0gと比較すると、おおむね4g~6g程度も多く摂取しているのです。
塩分摂取量を減らすことで生活習慣病である脳卒中や心臓病につながる高血圧を予防することができるため、高齢者にとって減塩を意識し、食生活に減塩食を取り入れることは大切だと言えるでしょう。
参考:厚生労働省「令和元年国民栄養・健康調査報告」
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準 2020年度版」
減塩食とは
減塩食とは、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準 2020年度版」において定めた食塩摂取量の目標値である1日あたり6.0gという基準に基づき、この数値以下の食塩摂取量を目指す食事のことです。
1食あたりに換算すると2.0gとなるため厳しいようにも思えますが、海外でもこの基準は推奨され塩分摂取量の少ない地域においては高血圧の患者が少ないこともわかっています。
このことから高齢者はもちろんのこと、健康に特に問題がない人でも日頃の食事の中で少しずつ減塩を意識するのは大切なことだと言えるでしょう。
食品に含まれる塩分について
減塩食において食塩摂取量を減らすためには、まず食品に含まれる塩分がどのくらいなのかを知ることが大切ですが、その中でも特に塩分が多い食品、塩分が少ない食品について把握しておくことが重要なため、それぞれご紹介します。
塩分が多い食品
塩分が多く含まれる食品にはどのようなものがあるのでしょうか。
一部を表にまとめてみました。
食品の名前 | 食塩相当量(可食部100gあたりに含まれる量) |
梅干し(塩漬け) | 18.2g |
あみの塩辛 | 19.8g |
ザーサイ | 13.7g |
粒うに | 8.4g |
こんぶの佃煮 | 7.4g |
かぶのぬか漬け(皮なし) | 6.9g |
しらす干し(半乾燥) | 6.6g |
辛子明太子 | 5.6g |
生ハム(長期熟成) | 5.6g |
焼きたらこ | 5.3g |
漬物、魚卵などには塩分が多く含まれますが、栄養バランスの良い食生活を送るためにもこれらの食品を摂らないようにするのではなく、分量を調整したり、塩分の少ない食品と組み合わせた献立を作成したりと食べ方に工夫をするのが望ましいでしょう。
塩分が少ない食品
塩分があまり含まれていない食品にはどのようなものがあるのでしょうか。
一部を表にまとめてみました。
食品の名前 | 食塩相当量(可食部100gあたりに含まれる量) |
ところてん | 0g |
黒まぐろ(生) | 0.1g |
ぶり(生) | 0.1g |
マトン(もも) | 0.1g |
鶏(むね) | 0.1g |
鶏(もも) | 0.1g |
もずく | 0.2g |
ほたて貝(生貝柱) | 0.3g |
ゆでたまご | 0.3g |
しじみ(生) | 0.4g |
加工していない魚類、肉類、海藻類などは塩分が少なめであることがわかりますが、調理時に調味料で味付けをしなければならないため、塩分が控えめの調味料を選択したり、しょうゆボトルをスプレー式のものに変更したりといった工夫をするとよいでしょう。
塩分の少ない食品は、減塩食を作る際に積極的に摂り入れてみるのがおすすめです。
美味しく減塩するコツ
普段の食事において、美味しく減塩するコツを10個ご紹介します。
計量する
塩、味噌、しょうゆ、ソースなど日本において日常的に使用する調味料には塩分がとても多く含まれています。
どれだけ食品の塩分を控えたとしても、調味料を使い過ぎてしまえばあっというまに塩分摂取量は増加し、基準の6gを超えてしまいます。
これを防ぐためには、手間でも調味料はしっかりと計量スプーンで計って使用するのが望ましいでしょう。
調理器具の専門ショップに足を運ぶのは面倒だと感じる人もいるかもしれませんが、計量スプーンは100円ショップでも意外とたくさんの種類が販売されているため、減塩食を作るなら自分の使い勝手に合ったものを1つ準備しておくことをおすすめします。
だしを活用する
和食においてはかつおだし、昆布だし、干ししいたけのだしなど非常に多くの種類のだしがありますが、これらのだしにおける可食部100gあたりの塩分相当量は0.1g~0.2g程度です。
つまり、だしを少し濃いめに取って旨味を補っても、塩分摂取量に対して大きな影響はないと言えるのです。
だしの旨味が効いていると、塩分を減らしても味付けに物足りなさを感じにくくなります。
ただし、市販の顕粒だしには小さじ1杯あたり1~2gほどの塩分が含まれているため、減塩食を作る際に用いるのはおすすめしません。
薬味や香辛料、香味野菜を活用する
わさび、マスタード、こしょう、カレー粉、しょうが、にんにく、しそ、みょうが、山椒などの薬味や香辛料、香味野菜は、食材の香りを引き立たせてくれるため薄味が気にならなくなります。
いくつかの薬味や香辛料、香味野菜を組み合わせて、より複雑な味に仕上げるのもおすすめです。
酸味を効かせる
食材にお酢、柑橘系の果汁、トマトなどの酸味を効かせると、少ない塩分でも美味しく感じるようになります。
これは酸味に塩味をより強く感じさせる効果があるためです。
味のアクセントや食欲増進にもつながるため、減塩食では積極的に酸味を取り入れてみましょう。
仕上げに油を使う
ごま油、オリーブオイル、グレープシードオイルなど、栄養価が高く食欲を引き立てる香りを持つ油があります。
このような油を料理の仕上げに1滴垂らすと、食材にこくと旨味が加わるため薄味が気にならなくなります。
大量に使用してしまうとカロリーオーバーしてしまうため注意が必要ですが、調理後に一味足りないといった時に油を活用するのはおすすめです。
焦げ目・焼き目をつける
食材を焼いたり揚げたりすると焦げ目や焼き目がつきますが、これらの「香ばしさ」があると薄味でも物足りなさを感じさせません。
過度に意識する必要はありませんが、美味しそうな見た目にもなるためオーブンやトースターなども活用し、ちょうどよい焦げ目や焼き目がつくよう工夫してみましょう。
食物繊維やカリウムを含む食品を摂取する
食物繊維とカリウムは余分なナトリウムを吸着して尿や便と一緒に排泄してくれる働きがあるため、減塩食においては積極的に摂取したい栄養素です。
食物繊維は野菜、果物、いも、きのこ、海藻などに多く含まれ、カリウムは海藻、しいたけ、大豆、こんにゃくなどに多く含まれているため献立に取り入れてみましょう。
インスタント食品・加工食品などを避ける
インスタント食品・加工食品・市販のお惣菜などは、印象に残る味に仕上げるためどうしても塩分を多く使用する傾向にあります。
安く、簡単で便利に使用できる食品ではありますが、減塩を目指すなら多用しない方がよいでしょう。
またインスタント食品・加工食品・市販のお惣菜に多く含まれる食品添加物の中には、塩分を感じにくくする効果のあるものも含まれていることを覚えておいてください。
全てのおかずを薄味にしない
1食のおかずのうちどれか1品には塩味を効かせるようにしましょう。
全ての料理を薄味にしてしまうと、食事の満足感を損ねてしまい減塩食を続けられなくなってしまうことも考えられるため、主菜を減塩したら副菜は少し塩を効かせるなどメリハリをつけた減塩を心がけることが大切です。
新鮮な食材を使う
新鮮な食材はあまり手間をかけなくても美味しいと感じた経験を持つ人は少なくないのではないでしょうか。
例えば野菜を直売所で手に入れたり、市場でお魚を購入してきたりといった工夫をすれば、素材の味そのものを感じることができるため、手の込んだ調理や濃い味付けをしなくても美味しく食べることができるでしょう。
新鮮な食材や旬の食材を積極的に取り入れることで、食卓の見た目が華やかになり満足感も得られます。
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手間をかけすぎずに減塩に取り組む工夫は、前の項目でもご紹介したようにたくさんありますが、やはり3食休みなく減塩食を作り続けるというのは、家族であっても負担が大きいと感じる人も多いでしょう。
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まとめ
減塩食とは、厚生労働省が「日本人の食事摂取基準 2020年度版」において定めた食塩摂取量の目標値である1日あたり6.0gという基準に基づき、1食あたり2.0gの塩分摂取を目指す食事のことです。
塩分摂取量を減らすことで生活習慣病である脳卒中や心臓病につながる高血圧を予防することができるため、高齢者にとってはメリットの大きい食事ですが、薄味でも美味しく感じてもらうための工夫は長く続けるためにも欠かせません。
この記事も参考にして、無理をしすぎず減塩に取り組んでみてください。