統合失調症は若い人に多い病気だと思われがちですが、実は高齢者も多くかかる病気なのをご存知でしょうか。

この記事では統合失調症の症状から治療方法まで詳しく解説します。

統合失調症とは?

統合失調症とは脳において感情や思考をつかさどるネットワークの働きに支障が出て、いろいろな心の動きや考えをまとめることができなくなってしまう病気です。

厚生労働省が2017年に行った患者調査では、「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」の総患者数は79万2千人でした。

総務省統計局が2022年2月に公表した日本の人口概算値が1億2,534万人のため、統合失調症の患者は日本人のうち160人に1人はかかる病気だということです。

統合失調症を発症する原因については、今のところ正確にはわかっていません。

参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト『統合失調症』」
参考:厚生労働省「平成29年(2017)患者調査の概況」
参考:総務省統計局「人口推計」

統合失調症の症状とは?

統合失調症の症状にはさまざまなものがあるため、表にまとめてみました。


【陽性症状】

症状の名前症状の概要
妄想・自分が誰かに嫌がらせや攻撃を受けていると思い込む「被害妄想」
・自分に関係ないことに対し関係があるように思い込む「関係妄想」
・自分の能力や価値が実際以上に高いと思い込む「誇大妄想」
・自分の能力や価値が実際以上に低いと思い込む「微小妄想」
幻覚・聞こえないはずの音や声が聞こえる「幻聴」
・見えないはずのものが見える「幻視」
・におわないはずの香りを感じる「幻嗅(げんきゅう)」
まとまりのない会話・思考過程の障害により話の内容が飛んだり、何を話しているのかわからない会話となったりする
興奮・奇異行動・突然興奮し暴言・暴力につながる場合がある
・客観的に見て異様と思える行動を取る
陽性症状


【陰性症状】

症状の名前症状の概要
感情表現の平坦化・喜怒哀楽があまり感じられない
・無表情となる
・視線が合わない
・身振り手振りなどのジェスチャーが減る
興味・関心の低下・無気力で物事に無関心となる
思考能力の低下・情報処理能力、注意力・記憶力・集中力・理解力や計画能力・問題解決能力などが低下する
・状況に応じた適切な行動が取れず日常生活に支障が出る
コミュニケーションの障害・引きこもる
・他人との関わりを避ける
陰性症状


また統合失調症の典型的な経過では、次の4段階を経ることが多いと言われます。

段階の名前概要
前兆期明らかな症状は出ていないけれど不調がさまざまな形で現れる時期
急性期陽性症状が目立つ時期
休息期陰性症状が目立つ時期
回復期少しずつ症状がおさまり回復へ向かう時期

急性期では主に陽性症状、休息期では主に陰性症状が出ることが多いでしょう。

また統合失調症になった場合注意しなければならないのは、病識欠如という症状もあることで、これは自分が病気であるという認識を持たないことを指します。

もし自分自身が病気だと感じなければ受診して治療するタイミングは遅くなってしまうため、その間に病気が悪化することも考えられるでしょう。

高齢者の人が統合失調症なのではないかと感じた場合、まずは本人の話をよく傾聴して、病識を持っているかどうかをそれとなく確かめてみることが重要です。

話を傾聴する際、次のようなポイントに気を付けて話を聴くと、病識を持っているかどうかが判断しやすくなります。

  • 自分に対してどのように理解しているか
  • 入退院についてどのように考えているか
  • 現在や過去の症状についてどのように認識しているか
  • 治療が必要だと思うか
  • 薬を飲むことについてどう考えているか

高齢者の人に病人扱いされていると思わせないように配慮しながら話を聴くよう心掛けましょう。

統合失調症と認知症の違いについて

統合失調症認知症の症状は似ているため、一見何が違うのかわかりにくい場合があります。

まず病態の違いですが、統合失調症は「精神疾患」であり、認知症は「脳の器質的な異常が原因で引き起こされる病気」です。

統合失調症が精神的な要因が発症の原因であるのに対して、認知症は脳の機能が一部失われるのが発症の原因だということです。

また統合失調症の人には認知症の人に見られるような「徘徊」「物忘れ」の症状は見られないことも覚えておくとよいでしょう。

高齢者における統合失調症の特徴とは?

高齢者の統合失調症には、どのような特徴が見られるのでしょうか。

3つご紹介します。

陽性症状の特徴

高齢者に多い統合失調症の陽性症状は次の3つです。

  • 被害妄想
  • 誇大妄想
  • 幻聴

被害妄想ですが、高齢者の統合失調症患者は比較的現実味のあるストーリーを妄想します。

つまり身近な人などを対象に、「嫌がらせをされた」「物を隠された」といった実際にも起こり得る内容を妄想するということです。

若い統合失調症患者の場合はにわかには信じがたい突拍子もない妄想をするため、周囲の人たちに妄想であると気づかれやすいのですが、高齢者の場合は普段から本人とある程度コミュニケーションを図っていなければなかなか妄想とは気づきにくいことも多いでしょう。

そして幻聴では音楽、壁をたたく音などの非言語性の幻聴や、自分に対して話しかけてくる言語性の幻聴などが多く見られます。

陰性症状の特徴

統合失調症の陰性症状ですが、高齢者にはあまり見られないのが特徴的です。

若い統合失調症患者の場合、陰性症状に伴う人格の崩壊など重い症状が出る場合もあるのですが、高齢者の統合失調症患者の場合は意思疎通や社会への適応も比較的スムーズにできることが多いのです。

休息期には周囲の人たちとの軽いトラブルなどを起こす場合もありますが、それでも若い統合失調症患者と比較すると陰性症状は軽い人が多いでしょう。

摂食・嚥下障害

高齢者の統合失調症患者においては未処置の歯が多く、物を噛む顎の力である咬合力(こうごうりょく)が弱いことが報告されています。

また抗精神薬の副作用から嚥下障害を起こす率が高く、誤嚥性肺炎を引き起こしやすいことがわかっているのです。

これらのことから高齢者の統合失調症患者は食事を掻き込むようにして食べたり、丸飲みや流し込んで食べたりする様子が多く見られます。

そのため食事を食べているからといって安全に食べられているとは限らないのです。

また「食事に毒が入っている」などの妄想や体調などから食事に集中できなくなることもあります。

高齢者の統合失調症患者が安全に食事を取れるようになるためには、まず歯科受診を行って未処置歯を治療し、医師や看護師の指導のもと噛む力や飲み込む力を回復するためのリハビリなどに取り組むことをおすすめします。

ただし受診やリハビリ自体がストレスになってしまわないよう、説明や声がけは丁寧に行うようにしましょう。

参考:日本赤十字九州国際看護大学「統合失調症を患う高齢者の摂食嚥下障害とケアのポイント」

統合失調症の治療について

統合失調症の治療は何を目的に、どのような方法で行われるのでしょうか。

それぞれご紹介します。

治療の目標

今まで統合失調症の治療は、主に次のようなことを目標として行われていました。

  • 陽性症状、陰性症状など病気の症状を軽くする
  • 記憶や注意などの障害により社会生活機能が低下するのを予防する
  • 回復後の再発を予防する

しかし、近年では統合失調症の治療の目的としてノーマライゼーション(普通の生活ができるようになること)を意識したリカバリーが注目されています。

リカバリーの考え方による統合失調症の治療目標は次の2つです。

  • 症状がなくなることだけではなく、社会生活や仕事ができるようになるまでの改善を目指す
  • 統合失調症が治らなくても、症状をコントロールしながら自分らしく生きていけるようにする(パーソナルリカバリー)

今まで症状にばかり目を向けて治療の目標を定めていたのが少し変わり、リカバリーは病気から回復した後や病気とともに生きる患者の生活を意識した目標だと言えるでしょう。

急性期の治療

統合失調症の急性期における治療は薬物療法が中心となります。

主に中心的な症状を抑える抗精神病薬が使用され、人によっては抗不安薬、睡眠薬、抗うつ薬、気分安定薬などが処方される場合もあるでしょう。

薬は医師の指示通りに服用することが大切で、症状が安定したからといって自己判断で減薬したり、服用を止めたりといったことはしてはいけません。

休息期と回復期の治療

統合失調症の休息期と回復期における治療では心理社会的な療法が薬物療法とともに行われます。

具体的には次のような治療です。

  • 病気や治療に対する知識を身に着けるための心理教育
  • 社会生活や対人関係のスキルを身に着けるための生活技能訓練(SST)
  • 園芸、料理、木工などの作業療法
  • 認知行動療法
  • 就労支援

心理社会的な療法と薬物療法を組み合わせることで、再発率が低下する場合があるとされています。

高齢者が統合失調症になった場合の接し方

高齢者が統合失調症になった時、周囲の人は次のようなことに気を付けて接することをおすすめします。

  • 統合失調症についての知識を積極的に身に着ける
  • 傾聴を心がけ話は最後までよく聞く
  • 簡潔でわかりやすい伝え方をする
  • 子供扱いをしない
  • 対立や言い合いを避ける
  • できたことを褒めて感謝する
  • 批判をしない
  • 回復をあせらず本人のペースを尊重する
  • 巻き込まれない

周囲の人への普通の接し方とあまり変わらないのではないかと感じる人もいるかもしれませんが、もしも自分が治りにくい病気にかかった時、周囲の人に腫れ物に触るようにされたり、刺激しないようにと下手にばかり出られたりしたら、かえって嫌な気持ちになるのではないでしょうか。

ゆったりとした気持ちでいつも通りに接することが大切です。

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宅配クック123資料請求ページ

まとめ

高齢者が統合失調症にかかった場合、急性期に比較的現実に即した内容の妄想や幻聴などの症状が出ますが、病識を持たない場合が多く病気の影響で飲み込む力や噛む力が低下することも多いため、少しでも早く受診につなげることが大切だとわかりました。

ぜひこの記事も参考にして、統合失調症への理解を深めてみてください。