高齢者の噛む力や飲み込む力が少しずつ衰えてきているため、そろそろ食事介助をしようかと考えているけれど、そもそもどのようなことに気を付けて行えばよいのかよくわからないと悩んでいる人はいませんか?
この記事では食事介助の準備から介助のコツまで詳しく解説します。
食事介助とは?
食事介助とは自力でうまく食事を取れない人に対して行うサポートのことを指します。
高齢者にとって食事は生活の楽しみの1つですが、噛む力や飲み込む力が衰えて口から食べ物を摂取することが難しくなると経管栄養や点滴などで生きるための栄養を摂取することになり、食べる楽しみは失われてしまうのです。
できるだけ身体の機能を維持し口から食事をすることは低栄養や脱水を防止し、QOL(生活の質)の維持にもつながるでしょう。
このことから食事介助は高齢者にとって命を守り生きがいを増やすケアだとも言えるのです。
食事介助の目的とは?
食事介助の目的とはどのようなことなのでしょうか。
3つご紹介します。
スムーズに食事をしてもらうため
食事は自分で取ることができるのが一番良いのですが、高齢者の場合自分で食べるのが難しかったり、食べることができても時間がかかってしまって食事を取ることに疲れを感じてしまったりします。
そのような際に食事を少しでもスムーズに取れるようサポートするのが食事介助の目的です。
高齢者の食事が少しでも楽しい時間となるように配慮して食事介助を行うことが大切です。
安全に食事をしてもらうため
噛む力や飲み込む力が衰えると、誤嚥を引き起こす可能性が高くなります。
また厚生労働省が2020年に行った人口動態調査では誤嚥性肺炎が原因で死亡した人の総数は42,746人でした。
生きる楽しみの1つである食事が原因で命を失うことのないよう、食事介助では安全に十分に配慮する必要があるということです。
参考:厚生労働省 令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況
体調をチェックするため
食事介助の目的は食事を取ってもらうことだけではなく、食事を取る高齢者の様子を観察して体調に変化がないかをチェックするということもあります。
例えば普段は食事を全量摂取する人が急に大量に食べ残すようになったとしたら、体調不良の可能性を考えた方が良いということです。
食事介助の際に「普段とは異なることがないか」という視点で食べる様子を観察すると、体調の変化に気づきやすくなるでしょう。
食事介助をする前の準備について
食事介助をする前には、どのような準備を行えばよいのでしょうか。
7つご紹介します。
食事前の声がけ
高齢者の中には周囲からの軽度の刺激で意識を取り戻す程度の意識障害である、傾眠状態に陥りやすい人がいます。
傾眠状態にある人はしっかりと覚醒していない状態のため、いきなり食べ物を口に運ぶのは安全上問題があると言えるでしょう。
そのためまずは覚醒してもらえるようこれから食事であることをはっきりと伝え、次に献立の内容を説明して食欲を刺激することをおすすめします。
体調チェック
食事介助をする前には次のような体調チェックを行いましょう。
- 検温と血圧測定
- 呼吸の様子
- 覚醒しているか
いつもと違う点はないかという観点でチェックし、必要あれば食事の内容やボリュームを調整してみましょう。
食事に集中できる環境作り
食事介助の前には高齢者が集中して食事をできる環境作りをすることが大切です。
具体的には次のようなことに気を付けてみましょう。
- 食事を取る場所は明るい場所とし、人の出入りの多い所は避ける
- テレビはつけない
- 排泄を済ませたかどうか確認する
高齢者が食事を中断せず、楽しく食べてもらうためにはどうすれば良いのかを考えてみることが大切です。
部屋と身の回りを清潔にする
食事介助の前には食事を取る部屋と身の回りを清潔にしましょう。
具体的には次のようなことを行います。
- 洗面所で手を洗うか、自力で洗えない場合はウェットティッシュなどで手を拭いてもらう
- 食べこぼしが多い場合は食事用エプロンをしてもらう
- ベッドで食事をする場合は部屋の換気をしておく
- 物が散らかっていたら片づける
- 排泄のにおいなどが残っていたら換気や消臭をする
高齢者の方が気持ちよく食事に臨んでもらえるよう配慮することが重要です。
口腔ケア
健康な歯やあごの力を維持するためには食後の口腔ケアはもちろんですが、食前に口腔ケアを行い口内の雑菌を減らしておくことが大切だと言えるでしょう。
高齢者の場合だ液の分泌量が減少しているため、特に口腔内に雑菌が繁殖しやすいのです。
本人のペースに合わせてうがいや口腔ケア用スポンジで舌苔を取り除くなどして、口腔内の清潔に心がけましょう。
水分補給
食事介助の前には水分を補給してもらい、だ液の分泌量が減少している分を補うようにします。
誤嚥を起こさないよう高齢者本人のペースで少しずつ水分を取ってもらうようにしましょう。
姿勢
食事介助の前には必ず正しい姿勢で座れているかを確認してみてください。
例えば車椅子からずり落ちそうな状態で食事介助を行うと、のどの開きが阻害されるため誤嚥を引き起こす可能性が高まります。
足を床や車いすのフットレストにしっかりとつけ、あごを引いて食べたものがしっかりと食道に流れる姿勢を保持することが大切です。
食事介助のポイント
高齢者に正しく食事介助をするためには、どのようなポイントに気を付けて行えばよいのでしょうか。
5つご紹介します。
安全な体制で介助する
食事介助の準備として高齢者の姿勢保持が大切なことを説明しましたが、食事介助をする際には介助者も体制に気を付けて行う必要があります。
食事介助の際は高齢者と同じ目線になるよう椅子などを持ってきて横に座り、立ったままで行うのは避けましょう。
これは高齢者があごを上げる姿勢ではむせやすくなるのと、スプーンやフォークが正しい位置で口に入りにくくなるためです。
誤嚥を予防するためにも、食事介助は高齢者が安心できる同じ目線から行うようにしましょう。
食事の提供方法
食事介助の方法は高齢者の身体の状態やペースを見極めて柔軟に変える必要がありますが、おおまかに次のような手順で行うのが望ましいと言えます。
- 食べ物を口に運ぶ前に次に何を食べるか知らせる
- スプーンに軽めの量を取り、口の手前に入れる
- 口を閉じたらスプーンを抜く
またごはんばかり食べるといった一品食いではなく、全てのおかずをかわるがわる食べてもらうようにし、胃酸の分泌を促すためにも水分の多いものから先に食べてもらうのがよいでしょう。
食事のペースを見極め急かさない
施設介護では十分な食事介助の時間が取れないためついやってしまいがちですが、高齢者本人のペースを考えずに急かすのは望ましい対応とは言えません。
高齢者の食べたい気持ちを尊重した食事介助をすることが大切です。
食事の摂取量を確認し記録する
食事介助の後には高齢者が何をどのように食べたかを確認し、記録をしましょう。
今後の食形態や食事内容の検討材料になるのはもちろんですが、本人があまり意識していない好き嫌いなども把握することができます。
食後に口腔ケアを行う
食事介助の後には必ず口腔ケアを行いましょう。
雑菌を減らし口内環境を整えるだけではなく、すっきりした気持ちで食後の休みを迎えることができます。
症例別の食事介助のポイント
今までお伝えしたのは一般的な食事介助のポイントですが、食事介助では高齢者の症例別にそれぞれ配慮する内容が異なります。
症例別の食事介助のポイントを5つご紹介します。
運動機能に障害がある場合
片麻痺や筋萎縮症など運動機能に障害を持つ高齢者の場合は、動きを補完できるような福祉用具を準備するのが望ましいでしょう。
介護用食器などで本人が使いやすいものを選ぶと、自力で食事を取れる可能性も出てきます。
リハビリなどとも連携が必要ですが、少しずつ自立できるようサポートしていきましょう。
認知症の場合
認知症の高齢者の場合、食事を食べ物だと認識するまでに時間がかかってしまったり、食事の時間であることを忘れてしまったりすることがあります。
このような場合無理に食事に向かってもらうのではなく、次のような配慮をしてみましょう。
- 献立の内容を一緒に読み合わせをして確認する
- 食卓を拭くなど、食事の準備を一部できる範囲で手伝ってもらう
- 食事の時間を時計を一緒に見て確認する
食事のメニューや時間に興味を持ってもらえるにはどうすればよいのかを考えてみることが重要です。
傾眠が見られる場合
傾眠が見られる場合は誤嚥のリスクが高くなるため、すぐに食事介助を行うのは望ましい対応とは言えません。
いったん食事を中止し食事時間を再検討するのはもちろんですが、事前準備の声がけを耳元で何度か行いしっかりと覚醒してもらうよう心掛けることが大切です。
リクライニング車いすを使用している場合
リクライニング式の車いすを使用している高齢者は疲れやすいと言えますが、そのままの姿勢で食事介助をすると誤嚥の可能性が大きくなります。
リクライニングの角度を60度~80度程度とし、膝を90度に曲げて姿勢を整え、後頭部や首の下に枕を敷くことであごが上がってしまわないよう配慮しましょう。
食事を拒否する場合
食事を拒否する背景にはさまざまな理由が隠されているため、まずはその理由を明らかにしてから対処の方法を考えるのが望ましいでしょう。
例えば「今日は食が進まない」といった理由での拒否であれば、健康な人でもなんだかお腹が空かないという日はあるため、無理に食べることを勧めず様子を見るのがおすすめです。
しかし精神的な理由で生きる意欲を喪失しているのが食事の拒否につながっている場合は、好きで食べていた食材を家族とともに食べてもらうなど、別のアプローチが必要となってくるでしょう。
まずはどのような理由で食事を拒否しているのかを確認することが重要です。
宅配クック123では食事介助が必要な方にも食事を楽しんでもらいたいと考えています
宅配クック123では、食事介助が必要な高齢者の方にも食事を楽しんでほしいと考えています。
例えばお弁当をお届けする際、メニューと栄養価が書かれた紙を同封しているので、それを声に出して確認すれば認知症の方でも食事に向かう心の準備ができるでしょう。
そしてお弁当に使用している容器の形状はスプーンですくいやすいように工夫がしてあるため、お箸を使いにくくなった方でも残さず食べることができます。
また手の運動機能に障害を持つ人でも空けやすいふたを準備し、ごはんとおかずを別の容器にすることでお茶碗を手に持っていた時と同じような作法を大切にしながら食べることができるのです。
宅配クック123のお弁当で、高齢者の方とともに食事介助の時間を楽しく過ごしてみませんか。
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まとめ
食事介助とは自力でうまく食事を取れない人に対して行うサポートのことを指しますが、高齢者の身体の状態により必要な準備や介助のポイントは異なることがわかりました。
この記事も参考にして、ぜひ適切な食事介助を行ってみてください。