高齢者の家族がいるけれど、全く運動をしないので近く介護が必要になるのではないかとハラハラしている人はいませんか?

この記事では高齢者に起こりやすいサルコペニアについて詳しく解説します。

サルコペニアとは?

サルコペニアとは加齢による筋肉量減少とそれに伴う筋力低下、身体機能の低下を指します。

「筋肉(サルコ)」と「喪失(ペニア)」を意味するギリシャ語を組み合わせた造語で、2016年10月、国際疾病分類に「サルコペニア」が登録されたため疾患として位置づけられました。

2021年9月に総務省統計局が発表した調査結果によると、日本における高齢者の人口は3,640万人で、65歳以上の高齢者の15%程度がサルコペニアだと考えられているため、サルコペニアの高齢者は547万5千人程度いると推測されるのです。

参考:総務省統計局「1.高齢者の人口」

サルコペニア・フレイル・ロコモティブシンドロームの違いとは?

サルコペニアとよく混同されるのがフレイルロコモティブシンドロームです。

3つとも加齢による機能低下を指すのは同じですが、異なる点を表にまとめてみました。

名前概要原因診断基準
サルコペニア・全身の筋肉量が減って筋力や運動機能の低下が進行する状態(身体機能に特化した概念)・加齢が原因となる一次性サルコペニア
・加齢以外が原因の二次性サルコペニア
・日本サルコペニア・フレイル学会が提唱した「AWGS2019」に基づいて診断される
フレイル・健常な状態から要介護へと移行する前の状態(身体機能・精神機能・社会問題なども含む概念)・運動機会の喪失
・交流機会の喪失
・体重低下
・日常的ケアが必要な慢性疾患の発病
・栄養不足
・収入減少
・孤独や引きこもりなど
・2020年に国立長寿医療研究センターが改訂した日本語版フレイル基準(J-CHS基準)に基づいて診断される
ロコモティブシンドローム・運動器の障害で移動機能が低下した状態(身体機能の中でも筋力に特化した概念)・サルコペニア
・運動機会の喪失
・痩せすぎや肥満
・けがや障害
・骨粗しょう症、変形性膝関節症、変形性脊椎症などの運動器疾患
・日本整形外科学会が公表している「立ち上がりテスト」「2ステップテスト」「ロコモ25」により診断される

フレイルは健康と要介護の状態を広義に表しますが、サルコペニアはフレイルの中でも運動機能に特化した概念で、ロコモティブシンドロームはサルコペニアの中でも特に筋力の衰退を指します。

参考:日本サルコペニア・フレイル学会「AWGS2019」
参考:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット「フレイルの診断」
参考:日本整形外科学会ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト ロコモONLINE「ロコモ度判定方法」

サルコペニアの診断基準

2019年11月に行われた日本サルコペニア・フレイル学会の第6回特別講演において、「サルコペニア診断基準2019」が公表されました。

前回診断基準が公表されたのは2014年ですが、これはサルコペニアが他の疾病と比較するとまだ歴史が浅く、日々さまざまな知見が報告されている段階のため、5年ごとの見直しを予定しているのです。

新しい診断基準の概要を表にまとめてみました。

サルコペニアを診断する指標判定方法診断
筋肉の力・握力・筋肉の量が低下していることが必須条件
・筋肉の力と筋肉の機能いずれかが低下していればサルコペニア
・筋肉の力と筋肉の機能両方が低下していれば重症サルコペニア
筋肉の機能・歩行速度
・5回椅子立ち上がりテスト
・Short physical Performance Battery(SPPB)
・筋肉の量が低下していることが必須条件
・筋肉の力と筋肉の機能いずれかが低下していればサルコペニア
・筋肉の力と筋肉の機能両方が低下していれば重症サルコペニア
筋肉の量・生体電気インピーダンス法(BIA法)
・二重エネルギーX線吸収法(DXA法)
・筋肉の量が低下していることが必須条件
・筋肉の力と筋肉の機能いずれかが低下していればサルコペニア
・筋肉の力と筋肉の機能両方が低下していれば重症サルコペニア

サルコペニアの診断基準に関しては、最新の研究成果に基づき定期的に見直しがされることを頭に留めておきましょう。

参考:日本サルコペニア・フレイル学会「AWGS2019」

サルコペニアの原因

サルコペニアの原因は加齢が原因となる一次性サルコペニアと、加齢以外が原因の二次性サルコペニアの2つがあることをお伝えしましたが、この内容をもう少し詳しく見ていきましょう。

サルコペニアの原因を表にまとめてみました。

一次性サルコペニア加齢性サルコペニア・加齢以外に明らかな原因がない
二次性サルコペニア活動によるサルコペニア・寝たきり
・長期的な安静状態
・不活発な生活スタイル
・無重力状態
二次性サルコペニア疾患によるサルコペニア・重症臓器不全(心臓、肺、肝臓、腎臓、脳)
・炎症性疾患
・悪性腫瘍
・内分泌疾患
二次性サルコペニア栄養によるサルコペニア・エネルギーとタンパク質の摂取量不足(吸収不良、消化管疾患、および食欲不振を起こす薬剤使用)

多いのは一次性サルコペニアですが、二次性サルコペニアは高齢者でなくてもかかる人がいるため、サルコペニアは高齢者だけが注意すれば良い疾患ではないことを覚えておきましょう。

サルコペニアの症状

サルコペニアにかかると、具体的にどのような症状を引き起こすのでしょうか。

3つに分けてご紹介します。

筋肉量の減少による症状

筋肉量の減少による症状は次の通りです。

・体重減少・増加
・冷え性
・熱中症・脱水
・骨粗しょう症
・糖尿病

高齢者にとって、どれも普段から予防したいと感じるような症状ばかりではないでしょうか。

人の体重の40%を占める筋肉が減少するというのは、高齢者の身体にとって大きな負荷がかかることがわかります。

筋力の低下による症状

筋力の低下による症状は次の通りです。

・排尿障害
・摂食・嚥下障害
・立ち上がり困難
・握力低下による作業困難
・転倒による骨折
・疲労

筋力が低下することにより、日常生活動作(ADL)に良くない影響を及ぼすのがわかります。

身体機能の低下による症状

身体機能の低下による症状は次の通りです。

・階段昇降の困難
・歩行の困難
・運動機能の低下による引きこもり

外出するのが難しくなることにより、さらに身体機能が低下していくという悪循環を引き起こす可能性があると言えるでしょう。

サルコペニアの治療方法

サルコペニアはどのような方法で治療をするのでしょうか。

3つご紹介します。

栄養療法

サルコペニアの治療では低栄養の改善、筋肉を作る栄養素であるタンパク質の摂取、ビタミンDが不足している場合はビタミンDの補充を行います。

低栄養を改善するのは、もし身体を維持するのに十分なエネルギー量が確保されていないと、足りないエネルギーを補うために筋肉が分解されてしまうためです。

サルコペニアの治療においては十分なエネルギー量を確保し、バランスの良い食生活を目指すことが大切です。

運動療法

運動の習慣はサルコペニア予防には有効ですが、発症後の症状改善に有効かどうかはまだはっきりとはわかっていません。

しかし症状を進行させないため、筋力トレーニングを行って筋肉量を増やすと筋力、通常歩行速度、最大歩行速度の改善に効果があるのではないかと見られています。

高齢者の場合高い負荷をかけての筋力トレーニングは難しいため、少ない負荷で十分な回数を行うなどの工夫をしましょう。

薬物治療

サルコペニアの治療において筋肉量を増やすためにテストステロンの内服やビタミンDなどの補充を行うことがありますが、2022年4月現在治療に有効とされる薬物は見つかっていません。

服薬をする際は、医師の指示に従い適切に行うことが大切です。

サルコペニアを予防するためには?

サルコペニアを予防するためには、食事と運動が重要な要素となりますが、継続することが何より有効となるでしょう。

これを踏まえてサルコペニア予防のための食事と運動についてご紹介します。

サルコペニア予防のための食事

サルコペニアを予防するためには、筋肉を作るためにタンパク質を適切に摂ることが重要となります。

筋肉を作る上では雑穀、野菜、果物、きのこ類、海藻などに多く含まれる植物性タンパク質より、肉、魚、卵、乳製品などに多く含まれる動物性タンパク質の方が有効だとされます。

動物性タンパク質の多い食品を表にまとめてみました。

食品名動物性タンパク質(g)
豚ゼラチン87.6
豚もも(皮下脂肪なしで焼いたもの)30.2
豚スモークレバー29.6
牛もも(皮下脂肪なしで焼いたもの)27.7
鶏ささみ(ソテー)36.1
鶏ひき肉(焼いたもの)27.5
鶏むね肉(皮なしで焼いたもの)38.8
生卵75.0
ゆで卵76.7
フカヒレ83.9
かつおぶし77.1

サルコペニアを予防するためにはこれらの食材を意識して取るようにし、過度の飲酒は筋肉がつくられるのを妨げるミオスタチンを増加させるため飲酒も控えめにするとよいでしょう。

参考:文部科学省「食品成分データベース」

サルコペニア予防のための運動

サルコペニア予防のためにはレジスタンス運動(筋肉に抵抗をかける運動)や有酸素運動が有効だとされています。

高齢者の場合はジムなどに通うより、まずは万歩計などで現状の歩数を把握し+1500歩を目指す、階段を使う、一駅分多く歩く、早歩きをしてみるといった生活の中でできる運動を取り入れてみましょう。

軽く息が上がる程度の運動を意識し無理をする必要はありませんが、筋肉を回復する時間を空けながらも2~3日に1度程度、継続して行うことが大切です。

宅配クック123ではサルコペニア予防のお手伝いをしたいと考えています

宅配クック123では、サルコペニア予防を食事管理の面からお手伝いしたいと考えています。

宅配クック123では厚生労働省が地方自治体に通知した配食ガイドラインに基づいて、1食あたりのタンパク質量を16g~24gと定めているのです。

もちろん配達の際、その日のお弁当にはエネルギー量と栄養価が記載されたメモを同封しているため、サルコペニアを予防したい場合、毎日のタンパク質量をメモから確認できるわけです。

地域の高齢者の方が健康で楽しい生活をしていただけるよう、今日も宅配クック123では小さなお節介を続けています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

サルコペニアとは加齢による筋肉量減少とそれに伴う筋力低下、身体機能の低下を指しますが食事管理や生活に運動を取り入れることで予防をすることができるとわかりました。

この記事も参考にして、ぜひサルコペニアについて理解を深め、予防や治療に役立ててみてください。