要介護者の家族やケアを担当する職員は、介護拒否をされてつらい気持ちになったことが一度はあるのではないでしょうか。

この記事では介護拒否とは何かから原因や対応方法まで詳しく解説します。

介護拒否とは?

介護拒否とは要介護者が介護を受けることを嫌がり、拒否することを指します。

対象は家族、特定の職員などさまざまで、拒否方法も口頭での申し出から暴言、暴力など多岐に渡るため初めて介護拒否をされた人は戸惑うことも多いのではないでしょうか。

2017年にクリックジョブ介護が男女76名の介護職員を対象に行ったアンケート調査によると、介護拒否を受けた経験のある人は88.2%で、拒否された内容は「入浴・清拭」が47名、「排泄」が35名、「服薬」が27名、「食事」が23名、「レクリエーション」が7名という結果でした。

この結果から介護拒否は介護の現場ではほとんどの職員が経験し、拒否される内容はサポートされるのが恥ずかしいと感じやすい入浴や排泄が若干多いということがわかります。

参考:クリックジョブ介護「9割の職員が経験する介護拒否!その実態とは」

介護拒否の原因とは?

要介護者の方が介護拒否をするのは、どのような原因が考えられるのでしょうか。

5つご紹介します。

認知症のため

認知症の代表的な副次的症状である周辺症状で、介護拒否が見られる場合があります。

具体的には食事拒否、服薬拒否、入浴拒否、着替え拒否、トイレ拒否、外出拒否などです。

認知症の周辺症状が原因とはいっても、要介護者の方本人にはきちんとした理由があるため、まずはそれを伺うことが大切だと言えるでしょう。

例えば羞恥心からの入浴やトイレ拒否、配膳されたものが食事だと認識できないための食事拒否、知らない場所へ行くことの恐怖が理由の外出拒否、自立心からの着替え拒否といった形ですが、ご本人なりの理由が理解できれば対処の方法も見出しやすいのではないでしょうか。

羞恥心があるため

介護を受けることが恥ずかしいと感じる気持ちが介護拒否に結び付く場合があります。

要介護者の気持ちに配慮せず無理に介護をしようとすると、介護拒否が強くなる傾向があるため注意が必要だと言えるでしょう。

自信喪失しているため

要介護者の方は自分が介護を受ける状況になったことから自信を喪失してしまったり、現実を受け入れられなくなったりして介護拒否を起こす場合があります。

例えばプライドの高い人ほど自分を情けなく思うため、昼間に強い言葉で介護拒否をしたにもかかわらず、夜間に自分の不遇を悲しんで涙を流すといった事例も見受けられるのです。

自信喪失をしている場合介護を受け入れてもらうことも重要ではありますが、まずは傷ついた気持ちに寄り添うことから始めるのが望ましいでしょう。

自分の生活習慣と異なるため

要介護者の方が今まで行ってきた生活習慣と異なることをしようとすると、介護拒否を受ける場合があります。

例えば昼に入浴介護をしようとすると、その時間には掃除や洗濯を優先した方がよいと考える人も少なくないでしょう。

このような場合、本人の時間の使い方をもう少し詳しく聞いてみることで、解決に結び付きやすくなるのではないでしょうか。

体調不良のため

要介護者の方の中には疾患などにより、体調に波がある人もいるでしょう。

このような場合、体調が良くない時に介護拒否をする人がいます。

例えば夜更かしをしてしまって少し眠いので、朝食にあまり手が伸びないといった軽度のことから、発熱や腹痛など何らかの医療的な対応が必要な場合もあるでしょう。

見た目であまり元気がない、顔が赤いといった何か普段と違う様子があれば、本人に体調を確認してみることをおすすめします。

介護拒否への対応方法

要介護者の方が介護拒否をした場合、どのような対応をするのが望ましいのでしょうか。

対応方法を4つご紹介します。

信頼関係を構築するよう心がける

どのような人間関係においても同じですが、まずは要介護者の方と信頼関係を構築するよう心がけましょう。

信頼関係を構築することを心理学の用語でラポール形成と呼びますが、この言葉はフランス語のrapport(架け橋)に由来し、元々は患者とカウンセラーの間の関係を示す用語でした。

ラポール形成をするには3つの要素が必要となるため表にまとめてみました。

ラポール形成をするための要素概要
受容的な態度要介護者に対して賛成も反対もせずあるがままに受け入れるという態度
尊重要介護者が大切に思っている価値観や物事を把握してそれに敬意を払い肯定的な感情で受け止める
類似性要介護者に警戒心を抱かせないよう自分と共通点を見出せるように振る舞う

またラポール形成をするには、次の3つの手法が有効です。

ラポール形成をするための手法概要
バックトラッキング日本語で「オウム返し」と呼ばれ要介護者の言ったことを繰り返して言うが、要介護者の言った「事実」「感情」「要約」の3種類を返すのが望ましい
ペーシング話すテンポ、声のトーンや呼吸のリズムを要介護者に合わせる
ミラーリング要介護者の仕草や表情、言動などを真似ることにより親近感を持たせる心理的効果

3つの要素と手法を比較してみると、受容的な態度を取るにはバックトラッキング、要介護者を尊重するにはペーシング、要介護者に類似性を見出してもらうにはミラーリングが有効だとわかるでしょう。

カウンセラーと同じレベルでこれらのことをするのは難しいことですが、ケアの現場で少しずつ取り入れていくことでラポール形成ができるため、少しずつでも介護拒否を減らしていけるのです。

要介護者の意志を尊重する

ケアをする上で要介護者の意志を尊重することは、介護拒否があってもなくてもとても大切なことです。

要介護者の考えや意見に耳を傾けず、ケアを無理強いするようなことがあってはいけません。

介護拒否が強ければ強いほど、日常の細かなことでも要介護者に一度相談する姿勢を持つことで、相手は自分が尊重されていることに気づいてくれる可能性があります。

また何かをしてもらう際に2つの選択肢を提示してどちらかを選んでもらうことで相手から拒否されないようにする方法を心理学の用語で「選択話法」と言いますが、話し方の工夫としてケアの現場で取り入れてみるのもよいでしょう。

介護の必要性を具体的な言葉で伝える

要介護者の中には介護が必要だと認識できない、もしくは必要だと理解していてもそれを感情的に認められないなどの理由で介護拒否をする場合があります。

このような時は少しずつでも良いので、なぜ介護が必要なのかを具体的な言葉で要介護者に説明しましょう。

すぐには納得してはもらえないかもしれませんが、時間をかけて理解してもらうことができれば介護拒否がおさまる場合もあります。

時間を置いて再度声がけをする

強い言葉や暴力的な振る舞いによって介護拒否をされた場合は一度同じ部屋から退室して距離と時間を置き、要介護者が冷静さを取り戻したタイミングで再度お声がけしてみましょう。

どれだけ人生経験を積んだ人でも、感情的な状態で相手に適切な対処をするのは難しいことではないでしょうか。

ほんの少し時間を置くことで、思いがけなく謝罪の言葉を聞くことができたり、スムーズに介護をすることができたりすれば、ケアをする側も気持ち良く取り組むことができます。

また要介護者が何らかの理由でたまたま機嫌を損ねて介護拒否につながった場合も、同じく距離と時間を置くと、何事もなかったかのようにスムーズにケアができる場合があるのです。

要介護者も自分と同じ感情を持つ人間であることを理解して、冷静な状態でお声がけをするのが重要です。

体調を確認する

体調に波がある要介護者は特にそうですが、介護拒否をされた場合身体の具合をたずねてみましょう。

あまり深刻そうにせず、「お熱はありませんか?」「どこか痛い所はありませんか?」など普通の会話に交えておたずねしてみると、気を使わせて申し訳ないといった罪悪感をあまり抱かせずに済みます。

調子が良くなくてもそのような気遣いや、認知症などの影響でうまく自分の状態を伝えられない人もいます。

そのような場合はケアをする側が積極的に質問をすることで、要介護者の正確な状態を知ることができるでしょう。

体調が良くない時には介護を無理強いすることなく、必要な処置や休むことを優先し回復の状態を見て再度お声がけするようにすることが大切です。

宅配クック123では食事拒否を起こしにくいようにすることを心掛けています

宅配クック123では、要介護者の方が食事拒否を起こしにくいようにすることを3つ、心がけています。

1つめは、1日1回、1食からの利用OKとしているので、要介護者の方が体調が良くなくてあまり気乗りしない期間には、自由に配達日数等を変更することで本人のペースに合わせた配達を行っています。

弊社としては食べるのを楽しみにしてくださるのはうれしいですが、プレッシャーになってしまうのは本意ではないため、このような仕組みとしているのです。

2つめは、手すりや杖をついている方でも片手で持てるよう、軽い容器を使用しています。

自分で配膳して食べるのも食事の楽しみの1つのため、要介護者の人がご自身で行いたいことをスムーズに行えるよう配慮して、食事に前向きな気持ちを持ってもらえるようにしているのです。

3つめは、お弁当を手渡しすることです。

もしお弁当を誰がどのように届けたかわからないとすれば、要介護者の方でなくともとても寂しい気持ちになるのではないでしょうか。

宅配クック123では要介護者の方をそのような気持ちにはさせたくないので、少しお節介なコミュニケーションとともに、お弁当をお届けしています。

宅配クック123の取り組みをもっと知りたい方は、ぜひ次のページものぞいてみてください。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

介護拒否とは要介護者が介護を受けることを嫌がり拒否することを指しますが、原因を分析し適切な対処方法を考えることで少しずつ改善されていくことがわかりました。

この記事も参考にして、ぜひ要介護者の方の意志を尊重したケアに取り組んでみてください。