高齢者はたんぱく質を摂取することが大切だと聞くけれど、どうしてなのかいまいち理解できないと悩んでいる人はいませんか?
この記事では高齢者がたんぱく質を積極的に摂取した方が良い理由から、高齢者におけるたんぱく質の摂取基準まで詳しく解説します。
高齢者におけるたんぱく質摂取の現状
2019年に厚生労働省が発表した「令和元年国民健康・栄養調査」によると、高齢者におけるたんぱく質の摂取量は年代別・男女別で次のような結果となりました。
60才~69才 | 70才~79才 | 80才以上 | |
男性 | 80.6g | 81.6g | 71.8g |
女性 | 70.2g | 71.4g | 61.8g |
しかし1995年からの国民健康・栄養調査の結果におけるたんぱく質摂取量と比較してみると、この数字はどんどん下がり続け、1995年と2019年ではおよそ10%低下しているのが現状です。
参考:厚生労働省「令和元年国民健康・栄養調査の結果」
参考:国立健康・栄養研究所「栄養素等摂取量」
高齢者が積極的にたんぱく質を摂取した方がよい理由
高齢者はなぜ積極的にたんぱく質を摂取した方がよいとされるのでしょうか。
理由を3つご紹介します。
健康寿命を延ばすため
健康寿命とはある健康状態で生活することが期待される平均期間を表す指標で、以前は平均寿命が指標として広く用いられていましたが、生活の質(QOL)を勘案した新しい指標として注目されるようになったのです。
2000年にWHOが発表した世界の健康寿命ランキングでは、日本が1位となっています。
その後日本における健康寿命は「日常生活に制限のない期間の平均」を主指標、「自分が健康であると自覚している期間の平均」を副指標とし、国民生活基礎調査で得られたデータを基に算出されるようになりました。
2013年よりスタートした第4次国民健康づくり運動である「健康日本21(第二次)」では「健康寿命の延伸」だけではなく、「不健康な期間」である「平均寿命と健康寿命の差」の短縮も目標とされています。
2021年12月に公表された数値では男性の健康寿命は72.68才、女性の健康寿命は75.38才でした。
この数値を2001年と比較すると、女性が2.73才、男性が3.28才延びて男女とも過去最長を更新し続けているため、健康日本21(第二次)の取り組みは成果が出てきたと言えます。
このように健康寿命を延ばし、さらに平均寿命と健康寿命の差を縮めるためには、高齢者における心身の機能を低下させないことが望ましいでしょう。
中でも運動機能の低下を防止し日常生活動作(ADL)に支障が出ないようにするためには、筋肉を維持することが大切です。
このことから、高齢者が筋肉を作る栄養素のたんぱく質を積極的に取ることは、健康寿命を延ばすことにつながるのです。
フレイル予防のため
フレイルとは健康から要介護へと移行する段階のことで、心身の状態が低下して日常生活を送る上でいろいろな健康障害が起こりやすくなった状態を指します。
Friedらが定めたフレイルの定義は次の通りです。
・体重減少
・疲労感
・活動度の減少
・身体機能の減弱(歩行速度の低下)
・筋力の低下(握力の低下)
これらの5項目中3項目以上該当するとフレイルと診断されます。
フレイルとたんぱく質摂取の関連については、日本人における高齢者の場合、男性は1日に48 g、女性は1日に 43.3 g以上のたんぱく質を摂取すると、これよりも少ない量を摂取している場合と比較して、フレイルのリスクが低くなると報告されているのです。
そのため最新の2020年版「日本人の食事摂取基準」では総エネルギー量に占めるべきたんぱく質由来エネルギー量の割合(単位:%エネルギー)について、65歳以上の目標量の下限を13%エネルギーから15%エネルギーに引き上げています。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」高齢者
サルコペニア予防のため
サルコペニアとは加齢による筋肉量減少とそれに伴う筋力低下、身体機能の低下を指します。
サルコペニアによって引き起こされる症状を表にまとめてみました。
筋肉量の減少による症状 | ・体重減少・増加 ・冷え性 ・熱中症・脱水 ・骨粗しょう症 ・糖尿病 |
筋力の低下による症状 | ・排尿障害 ・摂食・嚥下障害 ・立ち上がり困難 ・握力低下による作業困難 ・転倒による骨折 ・疲労 |
身体機能の低下による症状 | ・階段昇降の困難 ・歩行の困難 ・運動機能の低下による引きこもり |
サルコペニアとたんぱく質摂取の関連については、一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会のホームページに、適切な栄養摂取、特に1日に(適正体重)1kg あたり1.0g以上のたんぱく質摂取は、サルコペニアの発症予防に有効な可能性があるという記載があります。
サルコペニアについての研究はまだ深まってきているとは言えず、診断基準なども5年ごとに見直しをしている状態のため、タンパク質摂取との関連についても今後見解が異なってくる可能性があることを頭に留めておきましょう。
参考:一般社団法人日本サルコペニア・フレイル学会「サルコペニア診療ガイドライン2017年版のCQとステートメント」
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」高齢者
高齢者におけるたんぱく質の摂取基準
高齢者においては健康寿命を延ばすことやフレイル、サルコペニア予防のためにもたんぱく質を積極的に摂取した方が良いのですが、摂取基準はどのように設定されているのでしょうか。
たんぱく質の必要量を推定平均必要量と言い、次の式で計算することができます。
(推定平均必要量)=(維持必要量)+(新生組織蓄積量)
また、たんぱく質の推奨量は、 次の式で計算できるのです。
(推奨量)=(推定平均必要量)×(推奨量算定係数)
これを踏まえた高齢者におけるたんぱく質の推定平均必要量と推奨量は、次の通りです。
性別 | 推定平均必要量 | 推奨量 |
男性 | 50g/日 | 60g/日 |
女性 | 40g/日 | 50g/日 |
高齢者においては65才~74才、75才以上で基準は分かれていますが、推定平均必要量、推奨量ともに同じ数値が設定されています。
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)タンパク質」
たんぱく質を多く含む食品とは?
高齢者が積極的に取りたいたんぱく質を多く含む食品にはどのようなものがあるのでしょうか。
魚介類、肉類、豆類・卵・乳製品の3つにわけてご紹介します。
魚介類
魚介類で多くたんぱく質を含む食品は次の通りです。
名前 | 100gあたりのたんぱく質量 |
かたくちいわし煮干し | 64.5g |
かたくちいわし田作り | 66.6g |
たたみいわし | 75.1g |
かつおぶし | 77.1g |
削りぶし | 75.7g |
ごまさば節 | 73.9g |
乾燥かずのこ | 65.2g |
ほたて貝煮干し | 65.7g |
さくらえび素干し | 64.9g |
するめいか | 69.2g |
とびうお煮干し | 80.0g |
とびうお焼き干し | 73.4g |
煮干しやかつおぶしなど、出汁を取るための食材にたんぱく質が多く含まれていることから、まずは毎日1杯のお味噌汁を飲むことから始めると、高齢者の方でもたんぱく質摂取量が増やしやすいのではないでしょうか。
肉類
肉類で多くたんぱく質を含む食品は次の通りです。
名前 | 100gあたりのたんぱく質量 |
牛腱(ゆで) | 28.3g |
ビーフジャーキー | 54.8g |
和牛もも脂肪なし(焼き) | 27.7g |
和牛もも脂肪なし(ゆで) | 25.7g |
牛ひき肉(焼き) | 25.9g |
豚大型種肉ロース脂身付き(焼き) | 26.7g |
豚大型種肉ロース脂身付き(ゆで) | 23.9g |
豚大型種肉ヒレ赤肉(焼き) | 39.3g |
豚大型種肉ヒレ赤肉(とんかつ) | 25.1g |
豚もも脂肪なし(焼き) | 30.2g |
豚もも脂肪なし(ゆで) | 28.9g |
豚生ハム(促成) | 24.0g |
豚生ハム(長期熟成) | 25.7g |
ドライソーセージ | 26.7g |
豚ゼラチン | 87.6g |
豚ひき肉(焼き) | 25.7g |
にわとり胸皮なし(生) | 24.4g |
にわとり胸皮つき(焼き) | 34.7g |
にわとりささみ(生) | 24.6g |
にわとりもも皮つき(焼き) | 26.3g |
にわとりもも皮なし(焼き) | 25.5g |
にわとりささみ(焼き) | 31.7g |
にわとりささみ(ゆで) | 29.6g |
にわとりひき肉(焼き) | 27.5g |
マトンロース脂身つき(焼き) | 25.8g |
ラムもも脂身つき(焼き) | 28.6g |
肉類の中でも普段のお惣菜によく使う部位が多く含まれているため、3食のうち1食は肉のおかずにするよう心掛けるとたんぱく質摂取量が増やしやすいのではないでしょうか。
豆類・卵・乳製品
豆類・卵・乳製品で多くたんぱく質を含む食品は次の通りです。
名前 | 100gあたりのたんぱく質量 |
国産乾燥黄大豆 | 33.8g |
黄大豆きな粉 | 36.7g |
乾燥凍り豆腐 | 50.5g |
干し湯葉 | 50.4g |
国産乾燥黒大豆 | 33.9g |
乾燥全卵 | 49.1g |
乾燥卵黄 | 30.3g |
乾燥卵白 | 86.5g |
全粉乳 | 25.5g |
脱脂粉乳 | 34.0g |
パルメザンチーズ | 44.0g |
普段のおかずとして取り入れるのが望ましいですが、おやつとして食べることを考えるのもよいでしょう。
宅配クック123では高齢者のたんぱく質摂取を応援します
宅配クック123では健康寿命を延ばし、フレイルやサルコペニアを予防するためにも、高齢者の方のたんぱく質摂取に積極的に取り組んでいます。
宅配クック123のお弁当ではたんぱく質が1食あたり16g~24g摂取できるだけではなく、配達時には高齢者の方がたんぱく質量を目で見て確認できるよう、その日のお弁当に含まれているたんぱく質量が記載されたメモを添えているのです。
また低栄養やフレイルなどについても知識を深めてもらうことが、栄養バランスの良い食生活を心がけるきっかけになればと考えているため、ホームページ内でそれぞれの内容を詳しく解説しています。
どの取り組みも、高齢者の方に納得していただいた上で栄養バランスの良い食生活を送ってほしいという想いから、このように丁寧な情報提供を心がけているのです。
高齢者の方が食事を美味しく食べるだけではなく、健康への意識も高めていただくため、今日も宅配クック123では少し、お節介をしているのです。
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まとめ
高齢者の方におけるたんぱく質摂取量は、1995年と2019年で比較するとおよそ10%低下しているのが現状ですが、健康寿命を延ばし、フレイルやサルコペニアを予防するためにも積極的に摂取量を増やすことが大切だとわかりました。
この記事も参考にして、普段の食事から少しずつたんぱく質摂取量が増やせるよう工夫をしてみてください。