親の介護をきっかけに介護離職してしまったけれど、もう退職してからずいぶん時間が経過してしまったので就職活動になかなか踏み切れず悩んでいる人はいませんか?

この記事では労働市場の中で少しずつ問題が顕在化してきているミッシングワーカー増加の問題について詳しく解説します。

ミッシングワーカーとは?

ミッシングワーカーとは労働経済学の用語で、雇用統計上求職活動をしていないため失業者としてカウントされない人たちのことを指します。

労働政策を専門とするアメリカのシンクタンク、EPI=エコノミック・ポリシー・インスティテュートによって提唱されたまだ新しい概念です。

2018年6月2日に放送されたNHKスペシャル「ミッシングワーカー 働くことをあきらめて・・・」では専門家の推計で、ミッシングワーカーが103万人いると指摘されていました。

2022年2月1日に総務省統計局が発表した「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均」によると、完全失業者数が193万人という結果だったため、その数値と比較してもミッシングワーカーの数は決して少なくないことがわかります。

参考:NHKスペシャル「ミッシングワーカー 働くことをあきらめて・・・」
参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2021年(令和3年)平均」

ミッシングワーカーが増加する背景

ミッシングワーカーが増加してしまう背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

介護離職をする人の増加

介護離職とは家族や親族の介護をするためにそれまで勤務していた会社をやめてしまうことを指します。

介護離職をきっかけにいつ終わるのかわからない介護生活が始まり、介護と両立できる仕事に転職しようとしても見つからずに求職活動をやめてしまうことからミッシングワーカーになる人がいると予想されます。

また介護が終わっても職歴のブランクの長さから転職活動に踏み切れず、そのままミッシングワーカーになってしまう場合もあるでしょう。

2020年に厚生労働省が行った「令和2年雇用動向調査」によると、介護や看護を担うことになりやすい40代~50代の、介護・看護を理由とする離職率は次の通りです。

年代男性の一般労働者男性のパートタイム労働者女性の一般労働者女性のパートタイム労働者
40才~44才0.0%0.3%0.1%0.3%
45才~49才0.0%0.1%0.1%0.4%
50才~54才0.0%0.0%0.1%0.4%
55才~59才0.0%0.2%0.4%0.5%

男女別では女性、また40代と50代においては年齢を重ねるほど介護・看護を理由とする離職率が高くなると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和2年雇用動向調査結果の概要」

非正規雇用者の増加

前項目でご紹介した「令和2年雇用動向調査」では介護・看護を理由とする離職率は、一般労働者よりパートタイム労働者の方が高い傾向にありました。

また、厚生労働省が2020年に発表した「令和2年版厚生労働白書」によると2019年の非正規雇用労働者の割合は56.0%で、1989年が36.0%だったのと比較すると20%も増加していることがわかったのです。

家庭の中で正規雇用労働者より仕事をやめやすい非正規雇用労働者が介護を担うこととなって離職し、転職活動がうまくいかずミッシングワーカーになってしまう姿が浮かび上がってきます。

参考:厚生労働省 令和2年版厚生労働白書「図表1-3-18 非正規雇用労働者の割合の推移」

40代~50代の再就職は成功するとは限らない

40代~50代はライフステージの中で自分の内面やキャリアを見つめ直す時期でもあるため、転職を志す人も出てきます。

しかし2020年12月に独立行政法人労働政策研究・研修機構が2018年~2020年までの間に転職した30才~54才までのホワイトカラー・フルタイム雇用者を対象に行ったアンケート調査の結果では、これまでの職業経験で身に着けたスキルが「あまり活かせていない」と回答した人が5.8%、「全く活かせていない」と回答した人が4.8%だったのです。

転職先とのミスマッチを起こした結果、働く意欲をなくしてミッシングワーカーになってしまう人も一定数いることが予想されます。

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構「調査シリーズNO.215 ミドルエイジ層の転職と能力開発・キャリア形成~転職者アンケート調査結果~」

ミッシングワーカー増加の問題点

ミッシングワーカーが増加すると、社会的にどのような問題が出てくるのでしょうか。

3つご紹介します。

社会的損失

40代~50代の人は「働き盛り」と呼ばれることも多く、それぞれの職業で得たさまざまな知識やスキル、経験を活かして本来企業にたくさんの利益をもたらすはずの存在だと言えるでしょう。

しかし、その世代がミッシングワーカーとなってしまえば、社会全体の生産活動が大きく低下することにもつながりかねません。

生産性の低い社会では、景気を回復させるための原動力も低下してしまうため、ミッシングワーカーの増加は大きな社会的損失だと言えるのです。

貧困層の拡大

ミッシングワーカーが増加すると、貧困層もそれに応じて拡大していきます。

貧困を表す指標にはその国の生活レベルに関係なく生きる上で最低限の生活水準を満たせない貧しさを指す絶対的貧困と、所得の中央値の半分以下の所得しか得られない貧しさを指す相対的貧困があります。

2019年に厚生労働省より発表された国民生活基礎調査の結果によると、2018年の相対的貧困率は15.4%で、1985年の12.0%と比較すると明らかに増加しているのです。

ミッシングワーカーの増加だけが貧困層を拡大させているわけではありませんが、一因となっていることを覚えておきましょう。

参考:厚生労働省「2019年国民生活基礎調査の概況」

社会との隔絶

ミッシングワーカーが増加すると、社会とのつながりを絶って生きていく人も増えてしまいます。

もし介護離職をして要介護認定を受けずに自宅介護をする場合、会社でそれまで築き上げてきた人間関係を手放し、要介護認定を受ければサポートを求められるはずのケアワーカーや医療関係者とのつながりもなくなってしまうためです。

介護離職をする前に近所づきあいや地域での人間関係を作ってこなかった場合、日常的な会話や相談をする先も自分のプライベートの友人関係頼りとなってしまうため、社会との隔絶がさらに起こりやすくなるでしょう。

ミッシングワーカーを増やさないための対策

ミッシングワーカーをこれ以上増やさないためには、どのような対策が必要なのでしょうか。

3つご紹介します。

介護離職を防ぐ

ミッシングワーカーを増やさないための対策として一番重要なのは、介護離職を防ぐことです。

厚生労働省には「仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~」という専門のページが設けられており、次のような情報提供が行われています。

  • 介護離職を防ぐための国の施策についての紹介
  • 介護休業の特設サイトの紹介
  • 介護休業法についての説明と相談窓口の案内
  • 事業者向けの介護休業法や介護休業給付についての紹介
  • 介護離職に関するデータの紹介

厚生労働省では家族の介護を抱えている労働者が仕事と介護を両立できる社会を目指してこのような情報提供を行っているため、当事者、事業者とも介護離職に関する正しい知識を深めておくことが大切だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「仕事と介護の両立~介護離職を防ぐために~」

早期に再就職するよう働きかける

ミッシングワーカーを増やさないためには、早期に再就職するよう働きかけることも大切です。

人間が変化することを損失と捉えてしまうことを心理学の用語で「現状維持バイアス」と呼びますが、長く介護生活を続けるとその現状を維持したいと考えるようになり、再就職を損失と感じるようになってしまうため、この現状維持バイアスが働かないうちに再就職をするのが望ましいと言えるでしょう。

厚生労働省のホームページには生活困窮者自立支援制度についてのページがあり、生活保護に至っていない生活困窮者に対する支援について就労準備支援事業、就労訓練事業といったサポートの内容が紹介されています。

もし周囲の人がミッシングワーカーになりかけているのではないかと感じたら、まずは地域の自立相談支援機関の窓口に相談するよう促してみましょう。

参考:厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」
参考:厚生労働省「令和3年度自立相談支援機関窓口情報(令和3年7月1日現在)」

社会とのつながりを持たせる

周囲の人に対し社会とのつながりを絶たせないように働きかけることが、ミッシングワーカーの増加の予防につながります。

人間は完全に社会から孤立してしまうと働く意欲がなくなるだけではなく、生きる気力すら失ってしまうこともあるのではないでしょうか。

声がけや見守りを定期的にするだけでも、その人が意欲的に生きるための一助になるということを覚えておいてください。

宅配クック123では介護離職を防ぐお手伝いがしたいと考えています

宅配クック123では、介護の中で大きな負荷となりやすい食事の提供をサポートすることで、介護離職を予防するお手伝いができればと考えています。

どのような状況に置かれている人であっても、1日3回栄養バランスの良い食事を365日休まずに家族に提供し続けるのはとても難しいことです。

仕事を持ち、自分でお金を稼ぎながら介護をする場合はなおさらでしょう。

宅配クック123では1日1食、1回からの利用を可能としているのは、家族の介護にしっかりと向き合っている方が小さな「介護休み」を取れるようにしたいためです。

介護離職をし、ミッシングワーカーとなってしまう人を増やさないためにも、宅配クック123では今日もお弁当をお届けに伺っています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

ミッシングワーカーとは雇用統計上求職活動をしていないため失業者としてカウントされない人たちのことを指しますが、ミッシングワーカーを増加させないためには介護離職を防止し、離職しても早期に再就職するよう働きかけ、社会とのつながりが絶たれないよう周囲が見守りを続けることが大切だとわかりました。

この記事を読んでミッシングワーカーになりそうな人を周囲に発見したら、まず暖かい声がけをすることから始めてみてください。