介護の現場では感情のコントロールを大切にする必要があるけれど、最近そのことに何だか疲れてきたと悩んでいる人はいませんか?

この記事では感情労働とは何かから介護の現場における問題点まで詳しく解説します。

感情労働とは?

感情労働とは労働における3つの分類のうちの1つであり、業務上において感情のコントロールやその場に合わせた適切な表現が必要な労働を指します。

アメリカの社会主義者であるアーリー・ラッセル・ホックシールドによって提唱されました。

アーリー・ラッセル・ホックシールドは感情労働における感情のコントロールには次の2つの種類があると述べています。

感情のコントロールの種類概要
表層演技お世辞や愛想笑い、社交辞令など自分の感情とは関係なく相手に示す演技だが自分の本当の感情と異なるため演技を見透かされることもある
深層演技自分の感情そのものをコントロールして演技すること

何度も感情をコントロールをすることで深層演技がうまくなっていきますが、これが習慣化すると休日でも心が休まらないといった問題が発生します。

労働における3つの分類とは?

前項目において労働は3種類に分類できると説明しましたが、それぞれの定義と主な職種を表にまとめてみました。

労働の分類定義主な職種
感情労働業務上において感情のコントロールやその場に合わせた適切な表現が必要な労働・医師
・看護師
・介護士
・カウンセラー
・教師
・保育士
・秘書
・キャビンアテンダント
肉体労働身体を動かして報酬を得る労働・農業
・林業
・建築業
・土木業
・工場での作業
頭脳労働頭を使って考え出したアイデアや企画、提案などで報酬を得る労働・弁護士
・税理士
・大学教授
・システムエンジニア
・デザイナー
・ライター

感情労働においては、その場に応じた適切な感情が定められていて、そのルールに従うことで報酬を得るというのが肉体労働や頭脳労働と大きく異なる点であると言えるでしょう。

感情労働をする人が増加している社会的な背景について

感情労働をする人が増加している社会的背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

サービス業に従事する人が増加したため

2022年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「人口統計資料集 2022年度版」によると、職業別の就業人口において感情労働に分類されることの多いサービス業への従事者は685万7000人で、人口における6.2%を占めています。

これは事務従事者10.2%、専門的・技術的職業従事者8.5%、生産工程従事者7.3%、販売従事者6.8%に継ぐ数字となっており、日本においては感情労働に従事する人の割合が大きいことがわかるでしょう。

参考:国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集 2022年度版 表8-11」

SNSが普及したため

2020年に総務省が発表した「令和3年 情報通信白書」によると2020年のSNS利用者数は全年齢において73.8%となりました。

SNSの普及は情報拡散が早くなるというメリットを社会にもたらしましたが、同時に企業のささいな不手際も広がりが早く、初動を間違えると企業イメージを大きく損ねるようになってしまったのです。

このような悪評の拡散から企業を守るためにも、より高度な感情労働が求められているのが現実と言えるでしょう。

参考:総務省「令和3年 情報通信白書 インターネットの利用状況」

顧客満足度の向上が業績に影響するため

公益財団法人日本生産性本部が2011年度より企業やブランドを対象に行っている「顧客満足度調査(JCSI)」の2021年度の調査結果によると、各業界において13年連続で顧客満足1位を達成した企業が次の4つであることがわかりました。

  • 帝国ホテル(シティホテル)
  • 阪急電鉄(近郊鉄道)
  • ヤマト運輸(宅配便)
  • 楽天カード(クレジットカード)

どの企業も売上が安定していますし、2021年度の年間上位を占めた企業にも同じ傾向が見られます。

このことから競合他社との差別化をするために、企業では従業員に感情労働をしてもらうことで接客の質を向上させ、顧客満足度を高めようとする姿勢が見受けられます。

参考:公益財団法人日本生産性本部「顧客満足度調査(JCSI)」

感情労働の介護の現場における問題点とは?

感情労働は介護の現場においてどのような問題をもたらすのでしょうか。

3つご紹介します。

仕事へのモチベーションが低下する

仕事へのモチベーションを維持するためには、周囲からの感謝や自分が定めた目標の達成など、何かしらの原動力が必要となります。

しかし介護の現場では要介護者からの理不尽なクレームや普通の職場では考えられない暴力への対処など、高度な感情労働を業務としてこなしたとしてもできてあたりまえだとされ、感謝や評価にはつながらないため、働く人のモチベーションを維持するのが難しいのです。

バーンアウトを引き起こす可能性がある

感情労働には表層演技と深層演技の2種類があるとご紹介しましたが、介護の現場においてこれが過剰となり限界を超えるとバーンアウトを引き起こす可能性があります。

バーンアウトとは日本語では燃え尽き症候群と訳されますが、それまで1つの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなってしまうのです。

バーンアウトは病気や障害とは位置づけられていませんが、治療を必要とし回復までにはそれなりの期間を必要とする場合が多いため、過度な感情労働は控えた方がよいと言えるでしょう。

バーンアウトについてもう少し詳しく知りたい人は、次の記事もごらんください。

精神疾患を引き起こす可能性がある

介護の現場において感情労働を続けると、ずっと自分の感情をコントロールすることを強いられるため、無理をしすぎるとうつ病依存症といった精神疾患を引き起こす可能性が出てきます。

精神疾患が原因で休職や離職となった場合、それまで働いてくれていた人の経験や技術は職場で活かされなくなるため大きな損失を生みます。

感情労働における問題点を介護の現場で解決するためには?

感情労働における問題点は、介護の現場においてどのように解決していけばよいのでしょうか。

3つご紹介します。

ストレスチェックをする

2015年12月より労働者がメンタルヘルス不調になることを未然に防ぐのを目的として、ストレスチェック制度が施行されています。

ストレス耐性は個人差が大きいため、介護の現場で働く人は自分がどのくらいのストレスに耐えられるのか、メンタルヘルス不調に陥る可能性のあるストレスのレベルとはどのくらいなのかを知るためにも、ストレスチェックをすることが大切です。

また、もしストレスチェックにおいて自分のストレスレベルが耐性を越えているなら、会社の産業医などに相談し、早めの対処を心がけましょう。

参考:厚生労働省「ストレスチェック制度」

職場でメンタルヘルス研修を行う

メンタルヘルス対策の重要性を介護の現場で働く人たちがしっかりと理解するためにも、社内でメンタルヘルス研修を行いましょう。

厚生労働省のポータルサイトである「こころの耳」には忙しくてなかなか研修に参加する時間が取れないという人向けにe-ラーニングで学ぶことのできるメンタルヘルス研修ツールが無料で公開されています。

このようなツールを積極的に活用し、職場の全員がメンタルヘルスに対する共通認識を持つことで、お互いの心を大切にしながら働いていけるのではないでしょうか。

参考:厚生労働省 こころの耳「職場のメンタルヘルス研修ツール」

産業医と連携する

2019年4月から施行された働き方改革関連法で、産業医や産業保健機能、また長時間労働者に対する面接指導の内容が強化されました。

具体的には産業医の面接指導の対象となる労働者の要件が「時間外・休日労働時間が月80時間を越え、かつ疲労の蓄積が認められた者」と変化したのです。

労働者が申し出れば産業医との面談をすることが可能なため、介護の現場で働いていてこの条件に合う人は覚えておきましょう。

参考:厚生労働省「働き方改革関連法により2019年4月1日から『産業医・産業保健機能』と『長時間労働者に対する面接指導等』が強化されます」

宅配クック123では感情労働について理解し、がんばりすぎない介護をめざしています

高齢者への食事支援が大変なのは、食事を準備するということだけではなく、家族に対して感情労働を強いられるからではないでしょうか。

高齢者がうまく食べられずこぼしてしまったおかずの後始末や、飲み込みが良くない場合の食事介助は、「家族であるにもかかわらず」高度な感情コントロールを強いられます。

宅配クック123では、このようなご家族の状況を鑑み支援する人のバーンアウトを防ぐためにも、お弁当を
適度に活用した、がんばりすぎない介護を共に目指していきたいのです。

宅配クック123のお弁当は、高齢者の方々にとって一番の食事にはなれません。

ご家族が心を込めて作った食事の味を越えることはできないためです。

高齢者と、高齢者を支えるご家族の方々両方を支えるために、宅配クック123では今日も「NO.2の味」を目指したお弁当をお届けしています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

感情労働とは労働における3つの分類のうちの1つであり、業務上において感情のコントロールやその場に合わせた適切な表現が必要な労働を指しますが、介護の現場においては仕事へのモチベーションの低下、バーンアウト、精神疾患の発病の可能性があるため、次のような対策を施すのが望ましいでしょう。

  • 定期的なストレスチェック
  • 職場でのメンタルヘルス研修の実施
  • 産業医との連携

この記事も参考にして感情労働への理解を深め、現場での対策に活かしてみてください。