そろそろ高齢者の家族に食事介助を始めるタイミングだと考えているけれど、誤嚥性肺炎のきっかけになる場合もあると聞いて何だか取り組みにくいと感じている人はいませんか?

この記事では誤嚥性肺炎の症状から、介護の現場における予防方法まで詳しく解説します。

誤嚥性肺炎とは?

誤嚥性肺炎とは飲み込む力や咳嗽反射(肺に誤って食べ物や飲み物が入った時に反射的にむせること)が衰えることで、食べ物や飲み物、唾液などと一緒に細菌が気道に入り込み炎症を起こすことを指します。

2020年に厚生労働省が発表した人口動態調査によると、誤嚥性肺炎で死亡した人の総数は42,746人で、人口10万人に対する死亡率は34.6%、死亡総数に占める割合が3.1%で死因順位が6位という結果でした。

このことから高齢者が健康で長生きするためには、誤嚥性肺炎の予防にも目を向ける必要があるとわかります。

参考:厚生労働省「令和2年(2020)人口動態統計(確定数)の概況」

誤嚥性肺炎の原因とは?

誤嚥性肺炎は何が原因で引き起こされるのでしょうか。

3つご紹介します。

嚥下障害

食べ物や飲み物をうまく飲み込めなくなる状態を嚥下障害(えんげしょうがい)と呼びますが、嚥下障害は高齢になることだけではなく、次のような病気にかかることでも引き起こされます。

  • 脳卒中
  • 脳梗塞
  • パーキンソン病
  • アルツハイマー型認知症
  • 廃用症候群
  • 閉塞性肺疾患
  • 心不全
  • 歯周病

嚥下障害があると食べ物や飲み物、唾液などと一緒に細菌が誤って気道に入り込みやすくなるため、誤嚥性肺炎にかかる可能性が高くなってしまうのです。

咳嗽反射の低下

通常誤嚥をすると、肺に誤って食べ物や飲み物が入った時に反射的にむせる咳嗽反射が起こるため、気管に入ってしまったものは口へと戻ってきます。

しかし咳嗽反射が低下した人の場合、睡眠中の呼吸に伴って唾液が気管に少しずつ入り込んでしまうのと同時に細菌が気道に入り込み、誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうのです。

口腔ケアが不十分である

誤嚥性肺炎の主な原因となる細菌は、口や鼻に常に存在する常在菌と呼ばれる細菌や、気道の分泌物に含まれる肺炎球菌です。

厚生労働省では2014年10月1日から高齢者を対象とした肺炎球菌ワクチンを接種して、誤嚥性肺炎だけではなく気管支炎、敗血症などの予防にも努めていますが、虫歯や歯周病などで口内環境が悪化すると、細菌は増加し誤嚥性肺炎にもつながりやすくなります。

歯磨きが不十分であったり、飲み込みきれない食べかすが口の中に残ってしまったりすると細菌は繁殖するため、口腔ケアが不十分な状態は誤嚥性肺炎を引き起こしやすいのです。

参考:厚生労働省「肺炎球菌感染症」

誤嚥性肺炎の症状の特徴

誤嚥性肺炎の症状には、どのような特徴があるのでしょうか。

2つご紹介します。

初期症状が風邪に似ている

誤嚥性肺炎にかかると、次のような初期症状が現れます。

  • 発熱
  • 息苦しさ
  • 激しい咳
  • 黄色い痰が出る
  • 肺雑音

発熱や息苦しさ、咳などは風邪の初期症状でも現れるため、多くの人はこれだけでは誤嚥性肺炎とは気づきにくいでしょう。

しかし高齢者の場合は、上記のような症状が出た際に誤嚥性肺炎も疑ってみた方が良いということです。

早めにかかりつけ医などに受診し、対処することが重要だと言えるでしょう。

高齢者の場合肺炎と気づきにくい症状が出る場合もある

誤嚥性肺炎で特徴的なのが、高齢者の場合肺炎とは気づきにくい症状が出る場合があることです。

代表的な症状は次の通りです。

  • なんとなく元気がない
  • ぼんやりしている時間が増加した
  • 口の中に食べ物をため込み、なかなか飲み込もうとしない
  • 食後に疲れてぐったりする
  • 夜間にせき込む
  • 失禁する
  • 体重が少しずつ減少してきた

これらは疲れや認知症の症状のようにも見えるため、誤嚥性肺炎であるとすぐにはわかりにくいと言えます。

しかしいつもと様子が違うと気づいたら、どこがいつもと違う様子なのかを記録しておき念のために受診するのが望ましいでしょう。

誤嚥性肺炎の治療方法について

誤嚥性肺炎にはどのような治療方法があるのでしょうか。

5つご紹介します。

薬物療法

誤嚥性肺炎の治療には次のような薬が使われることがあるため、表にまとめてみました。

薬の種類使用理由
抗生物質誤嚥性肺炎を引き起こす原因が細菌であるため
去痰薬痰をやわらかくして気管や気管支の詰まりを改善し痰と一緒に細菌を排出しやすくするため
ステロイド薬炎症を抑えミネラルのバランスを整えるため

誤嚥性肺炎では一般的な肺炎とは原因となる細菌が異なること、全身状態があまり良くない人が発症することなども鑑みながら薬物治療が行われます。

酸素療法

誤嚥性肺炎で肺がダメージを受けると酸素をうまく体内に取り込むことができなくなるため、酸欠状態になる場合があります。

そのような場合パルスオキシメータで血中酸素濃度を計測したり、動脈血液ガス分析を行ったりして酸欠の程度を判断した上で酸素療法が行われるのです。

酸素療法では1分間に1リットル~15リットルほどの酸素を追加で吸い込みます。

人工呼吸器

重症の誤嚥性肺炎では、酸素療法をしても酸欠状態が改善されない場合があります。

その場合鼻やマスクから酸素吸入を行いますが、それでも身体が酸素不足である場合は人工呼吸器を使用するかどうかを決めなくてはなりません。

人工呼吸器にはマスク型のものと気管挿管が必要なものの2種類があるため、違いを表にまとめてみました。

人工呼吸器の種類メリットデメリット
マスク型の人工呼吸器(NPPV)・装着が気管挿管の必要なタイプの人工呼吸器より簡単
・どうにか会話や水を飲むことができる
・状況に応じて使用を中止できる
・集中治療室だけではなく一般病棟でも使える
・患者が自力でマスクを外してしまう場合は使えない
・痰の吸引が難しく痰詰まりになりやすい
・マスクの脇から酸素がもれる可能性がある
気管挿管が必要なタイプの人工呼吸器(IPPV)・確実に酸素の通り道が確保できる
・マスク型の人工呼吸器より痰詰まりを起こす可能性が減る
・鎮静薬を併用するため意思疎通が困難になる
・水を飲んだり食事を取ったりできない
・集中治療室でないと使えない

重症の誤嚥性肺炎の場合、生死の境をさまよっている時に人工呼吸器をつけるかどうかの決断が迫られますが、気管挿管をするタイプの人工呼吸器の場合は特に意思疎通が困難になり、つけるかどうかで命の終わりの迎え方が大きく異なるでしょう。

そのため本人の意志や、人工呼吸器が必要になった際家族としてどのように対応するかは事前に話し合いをして、確認しておくのが望ましいでしょう。

経管栄養や胃ろう造設

誤嚥性肺炎の治療ではいったん飲食を中止として点滴栄養となりますが、経過が良ければ喉のリハビリを行った後飲食が再開できます。

しかし食事を再開すると誤嚥を繰り返してしまう場合、鼻や口から管を入れて胃腸に栄養分や水分を流し込む経管栄養や、お腹に穴を開けて直接栄養分や水分を注入できるようにする胃ろうを造設することがあるでしょう。

口から食べられなくなることをどのように考えるのかによって、経管栄養や胃ろう造設については判断が異なるため、人工呼吸器と同様事前に話し合って意志を確認しておくのが望ましいと言えます。

リハビリテーション

入院して誤嚥性肺炎の治療を行っても、飲み込みの機能が衰えたままでは再び誤嚥をする可能性があるため、再発を防ぐために行われるのが喉のリハビリテーションです。

入院中からリハビリテーションは行われますが、方法を習得し退院後も継続的に行うことが重要です。

介護の現場で誤嚥性肺炎を予防するには?

介護の現場で誤嚥性肺炎を予防するには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

3つご紹介します。

食事を取る時の姿勢に気を付ける

誤嚥性肺炎を予防するためには、まず食事を取る際の姿勢をよく観察しましょう。

椅子に座って正しい姿勢の場合、背中・腰・膝が安定してお腹に余裕があるはずです。

またベッドに座って正しい姿勢の場合、頸部・背部・足元が安定し、腰の位置がベッドの折れ目に合っているでしょう。

食事介助をする前にこれらのポイントを確認するだけで、誤嚥をよりしにくくすることができます。

食形態と一口あたりの量に配慮する

介護食の食形態には刻み食、ムース食、ミキサー食などさまざまなものがありますが、誤嚥性肺炎を予防するためにはその人に合った食形態の介護食を提供することが大切です。

そして健康な成人の人の一口あたりの量はスプーン1杯が15ml~20mlですが、誤嚥性肺炎を予防するためには約半分程度の8ml程度とするのが適切です。

嚥下障害がある場合はさらに少なく、3ml程度から始めましょう。

食事介助においては一口ずつ確実に食べきるまで見守りを行い、介助者ではなく本人のペースで食事を取ることが大切です。

参考:山陰労災病院 耳鼻咽喉科 平憲吉郎「誰でもできる誤嚥性肺炎の予防」

食後はすぐに横にならない

食後すぐにベッドに横になると食べ物が逆流し、それが原因で誤嚥を引き起こす可能性があるため、食後1時間半を目安に座った状態を維持してもらえるよう心掛けましょう。

家での習慣ですぐに横になりたがる人に対してはお声がけをし、なるべく横にならないよう配慮することが大切です。

宅配クック123ではニーズに合わせたさまざまな食形態をご提案しています

宅配クック123では、誤嚥性肺炎の予防のために普通食だけではなく、刻み食では食べにくい方のためのやわらか食、噛む力と飲み込む力が低下している方のためのムースセット食と、ニーズに合わせてさまざまな食形態をご提案することが可能です。

またお弁当をお届けする際には必ず安否確認を行っているため、お客様の体調が急変した際には緊急連絡先への連絡対応もすることができます。

誤嚥性肺炎を予防しながら楽しくお食事を召し上がっていただくために、宅配クック123では今日も見守りを続け、暖かなお弁当をお届けしています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

誤嚥性肺炎とは食べ物や飲み物、唾液などと一緒に細菌が気道に入り込み炎症を起こす病気ですが、正しい姿勢で食事を取る、食形態と一口あたりの量に気を付ける、食後にすぐに横にならないなどの予防方法があるため、それを守って食事を取ることが日々の生活では重要だと言えるでしょう。

この記事も参考にして誤嚥性肺炎への理解を深め、正しく予防に努めてみてください。