最近職場で心理的安全性という言葉をよく耳にするけれど、どのような意味を持つ言葉なのかはよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では心理的安全性の定義から介護の現場でどのように活用するのかまで詳しく解説します。
心理的安全性とは?
心理的安全性とはpsychological safetyの日本語訳で、チームの中で他のメンバーが自分の発言を拒絶したり罰したりしないという確信を持てる状態のことを指す心理学の用語です。
1999年に、ハーバード大学で組織行動学の研究に取り組むエイミー・エドモンドソン教授により「Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams」という論文の中で提唱されました。
2022年現在、日本では企業、官公庁、学校などの場で幅広く心理的安全性の考え方が取り入れられています。
心理的安全性が注目された背景とは?
2012年よりGoogleが生産性の向上を目指して「効果的なチームを作る条件とは何か」を研究する「Project Aristotle」を開始しました。
「Project Aristotle」ではGoogle内の180個のチーム(エンジニアリング系のプロジェクトチームが115個、営業チームが65個で業績の高いチームと低いチーム両方が含まれる)を対象にチームの構成とチームメンバー同士の関係性がチームにどのような影響を及ぼしているかを調べます。
その結果チームに大きな影響を及ぼしている要素は大きい順に次の表に示す5つであることがわかったのです。
チームに影響を及ぼす要素 | 概要 |
心理的安全性 | 心理的安全性の高いチームのメンバーは自分の失敗を認めたり、質問をしたりすることにリスクがないと信じている |
相互信頼 | 相互信頼の高いチームのメンバーは質の高い仕事を期限内に仕上げることができる |
構造と明確さ | 効果的なチームでは仕事で要求されていること、要求されていることを達成するための過程、チームメンバーの成果とは何かを全員が理解している |
仕事の意味 | 効果的なチームではメンバーが仕事そのものや成果に対して目的意識を感じられる |
インパクト | 効果的なチームではチームメンバーが自分の仕事には意義があると感じている |
この結果から、心理的安全性はビジネスをする上で望ましいチームを構築するための重要な要素であるという認識が広まっていったのです。
心理的安全性が低いチームの特徴
心理的安全性が低いチームは、どのような特徴を持つのでしょうか。
ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授がスピーチフォーラム「TED」で紹介した内容をまとめてみました。
無知と思われる不安(IGNORANT)
心理状態 | ・「こんなこともわからない」と思われるのではないか |
行動特徴 | ・わからないと言えない ・不明点を質問できない |
無能だと思われる不安(INCOMPETENT)
心理状態 | ・「こんなこともできない」と思われるのではないか |
行動特徴 | ・失敗やミスを隠す ・自分の失敗を認めない |
邪魔をしていると思われる不安(INTRUSIVE)
心理状態 | ・「議論や仕事の邪魔をしている」と思われるのではないか |
行動特徴 | ・自発的に発言しない ・新しいアイデアを伝えない |
ネガティブだと思われる不安(NEGATIVE)
心理状態 | ・「いつも否定ばかりしている」と思われるのではないか |
行動特徴 | ・必要な指摘を躊躇する ・チームの課題について発言を控える |
エイミー・エドモンドソン教授によると、このような特徴を持つ心理的安全性の低いチームでは、これらの不安を払拭することを目的にチームメンバーが自己呈示行動(自分が他人からどう見られるかを意図的にコントロールしようとする行動)や自己印象操作(良い印象を与え人間関係を良くしていこうとする)といった行動を取るようになるとされます。
心理的安全性が高いチームの特徴
心理的安全性が高いチームは、どのような特徴を持つのでしょうか。
同じくまとめてみました。
無知と思われる不安の解消(IGNORANTの解消)
心理状態 | ・「こんなこともわからない」とチーム内では誰も思わない |
行動特徴 | ・わからないと気軽に言える ・不明点は質問できる |
無能だと思われる不安の解消(INCOMPETENTの解消)
心理状態 | ・「こんなこともできない」とチーム内では誰も思わない |
行動特徴 | ・失敗やミスを隠さない ・できないことを事前に相談できる |
邪魔をしていると思われる不安の解消(INTRUSIVEの解消)
心理状態 | ・「議論や仕事の邪魔をしている」とチーム内では誰も思わない |
行動特徴 | ・自発的に発言する ・新しいアイデアが生まれやすくなる |
ネガティブだと思われる不安の解消(NEGATIVEの解消)
心理状態 | ・「いつも否定ばかりしている」とチーム内では誰も思わない |
行動特徴 | ・必要な指摘をする ・チームの課題について建設的に議論する |
心理的安全性の低いチーム内での心理状態や行動特徴とは異なり、ビジネスに対してチームメンバーが積極的に取り組める環境となっているのがわかるでしょう。
介護の現場で心理的安全性を高めるメリットとは?
介護の現場で心理的安全性を高めると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
離職率が下がる
2020年に公益財団法人介護労働安定センターが介護労働に従事する労働者22,154人を対象に行った「令和2年度 介護労働実態調査」では離職率が14.9%と、2005年度以降最低の数値となりました。
しかし職場の人間関係の悩みとして「上司や同僚との仕事上の意志疎通がうまくいかない」と回答した人が15.9%、また「悩みの相談相手がいない、相談窓口がない」と回答した人が10.6%だったのです。
このことから介護の現場において心理的安全性を高めることで、もっと離職率を下げられる可能性があると言えるでしょう。
参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査結果について」
課題の早期発見と解決につながる
介護の現場では重大な事故につながりかねない事象を「ヒヤリハット」として報告しますが、心理的安全性の高いチームではこの報告が積極的になされるので、介護する上で事故を起こしそうな課題を早期発見し、事前に解決しておくことができます。
チームの心理的安全性の高さが、結果的に要介護者の安全を守り、質の高いケアを提供することにつながるということです。
良い人材が集まりやすくなる
心理的安全性の高いチームでは多様性を受け入れやすいため、さまざまな価値観や新たなアイデアを持つ優秀な人材が集まりやすくなります。
このようなチームにおいては情報交換や議論が活発化するため、ケアワーカーとして全員が大きく成長できるでしょう。
介護の現場で心理的安全性を高めるためのポイント
介護の現場で心理的安全性を高めるには、どのようなポイントに気をつければよいのでしょうか。
3つご紹介します。
リーダーや上司がメンバーを尊重する
介護の現場で心理的安全性を高めるには、まずリーダーや上司がチームメンバーを尊重し、それぞれの考えを受け入れるようにしましょう。
リーダーや上司がチームメンバーの人格を否定してしまえば、相手は人間として自分を尊重されていないと感じるため、心理的安全性はどんどん低下します。
具体的には次のような行動を心がけましょう。
- 無視をしない
- 相手を肯定的に捉える
- 忙しい時に話しかけられてもまず相手の話に耳を傾ける
- 無関心な態度を取らない
- 意見に反対されても不機嫌な態度にならない
- 物事を相手の目線に立って伝えるよう心掛ける
- 感情的な振る舞いをしない
- チームメンバーが貢献したことに対して感謝の気持ちを示す
どれもリーダーや上司として当たり前の行動に見えますが、人間関係が上司と部下の関係に変わった時、これらが急にできなくなる人というのも存在するのです。
リーダーや上司がチームメンバーを委縮させることが、心理的安全性を高める上で何よりも妨げになることを覚えておきましょう。
非難をせず解決策に焦点を当てる
介護の現場で何か問題が起こると、チーム内でまず誰の責任かを追及し、その人を非難することばかりしていないでしょうか。
このような中では例えチームメンバーの中に解決策をアイデアとして持っている人がいたとしても、心理的安全性が担保されていないため、そのアイデアが共有されることはないでしょう。
ケアの質を高め要介護者のQOLを向上させたいなら、問題を非難するより先にチーム内で解決策がないかを話し合いましょう。
1on1ミーティングを行う
1on1ミーティングとはリーダーや上司がチームメンバーと1対1で面談することです。
この時間を設けることで各メンバーと信頼関係を築くことができるため、チームの心理的安全性を高めやすくなります。
1on1ミーティングをする上で気をつけたいポイントは次の通りです。
- 上司やリーダーは傾聴に徹する
- テーマや時間を決めてミーティングを行う
- 定期的にミーティングを行う
介護の現場で時間を作るのは難しいことではありますが、積極的に取り組むことでよりよいケアを提供することができるようになります。
宅配クック123は高齢者の方とケアマネージャーの良き相談相手を目指しています
宅配クック123では高齢者の方、ケアマネージャーの方双方の食に関するより良き相談相手になりたいと考えています。
高齢者の方に対してはお弁当の手渡しを原則とし、寝たきりの方には枕元までお届けをするのは、食事についてのご相談があればすぐに声をかけてもらえる、安心感のある関係を築いていきたいからです。
またケアマネージャーの方に対しては、高齢者の方々の安否、食事の内容について日々気にかけている気持ちをできるだけ理解し、必要があれば配達時の様子を報告するようにしています。
宅配クック123が目指すのは、心理的安全性が担保された上での「向こう三軒両隣」の関係です。
そんな私たちと、高齢者の方々の「安心できる食生活」を一緒に作っていきませんか。

まとめ
心理的安全性とはチームの中で他のメンバーが自分の発言を拒絶したり罰したりしないという確信を持てる状態のことを指し、介護の現場では心理的安全性を高めることで課題の早期発見や解決方法の発見、離職率の低下などにつながります。
この記事も参考にして、ぜひ心理的安全性の高いチーム作りに挑戦してみてください。
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