高齢者の介護を高齢者が行う状態が増えていることから、認認介護という言葉を最近よく耳にするようになったけれど、具体的にはどのようなことかよくわからないという人も少なくないでしょう。

この記事では認認介護の現状から原因、解決策まで詳しく解説します。

認認介護とは?

認認介護とは、認知症にかかっている人が認知症にかかっている人を介護する状態を指します。

介護は健康な人がするというイメージがありますが、何らかの理由で公的なサポートが受けられず、認認介護が行われるという現状があるのです。

認認介護の現状

2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢社会白書」によると、2021年10月1日現在の日本の総人口1億2,550万人のうち65才以上の人口が3,621万人となっているため、高齢化率は28.9%となりました。
また65才以上の要介護者のうち、介護が必要となった要因として「認知症」と回答した人は18.1%で1位となっているのです。

一方2019年に山口県地方自治センターと山口県立大学が共同で行った調査の結果によると、山口県おける在宅介護を受けている5,734人の中で、認認介護状態にある人は146人で、10.4%という割合であることがわかりました。

全国的な調査結果はないものの、これらのことから認認介護が増加し続けている現状がうかがえます。

参考:内閣府「令和4年高齢社会白書」
参考:岩本晋・堀内隆治・斎藤美麿「在宅介護における認認介護の出現率」

認認介護が起こる原因とは?

認認介護はなぜ起こるのでしょうか。

原因を3つご紹介します。

平均寿命と健康寿命に差があるため

平均寿命とは0才時に何才まで生きられるかを統計から予測した平均余命のことで、健康寿命とは健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる時間のことを指します。

2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢社会白書」によると、2020年の男性の平均寿命は81.56才、女性は87.71才でした。

一方2019年の男性の健康寿命は72.68年、女性の健康寿命は75.38年となっています。

このように平均寿命と健康寿命の間には差があり、要介護となる時間が長くなってきているため認認介護が発生すると考えられます。

参考:内閣府「令和4年高齢社会白書」

高齢者世帯では夫婦のみの世帯が最も多いため

2019年に厚生労働省が発表した「2019年国民生活基礎調査」によると65才以上の人がいる世帯は2,558 万4千世帯(全世帯の 49.4%)で、世帯構造をみると、「夫婦のみの世帯」が 827 万世帯(65 歳以上の人のいる世帯の 32.3%)で最も多いことがわかりました。

このことから夫婦のみの世帯で介護をしながら生活をしていくうち、介護者が自分が認知症であることを気づかずに介護を続けてしまい認認介護を引き起こすということが想定できるでしょう。

参考:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」

生活が苦しい世帯が増加しているため

2019年に厚生労働省が発表した「2019年国民生活基礎調査」によると2018年の1世帯あたりの平均所得は全世帯で552万3千円ですが、高齢者世帯では312万6千円となっています。

このことから要介護認定を受け、必要なサービスを受けたくても金銭面からそれを躊躇する人が増加し、認認介護が起こる原因となっていることが予想されます。

参考:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」

認認介護の問題点

認認介護には、どのような問題点があるのでしょうか。

5つご紹介します。

QOLの低下を招く

介護者も要介護者も認知症を発症した状態では短期記憶ができなくなるため、QOL(生活の質)の低下を招く可能性が高いでしょう。

具体的には次のようなことが起こる可能性があります。
・料理がうまくできず食生活が乱れる
・服薬を忘れたり、必要以上に飲んだりしてしまう
・洗濯や掃除、入浴など衛生面に問題が出る
・電化製品の使い方がわからなくなる
・ゴミ出しの際の分別や曜日の指定がわからなくなるため近所とトラブルになる
・お金の管理ができなくなる
・災害時に逃げ遅れる

それまで築いてきた生活パターンが崩れるため、介護者と要介護者双方のQOLが低下するのです。

要介護者が適切な介護を受けられない

認認介護をしている状態では介護者が介護についての情報を得ることが難しくなるため、要介護者が適切な介護を受けられなくなる可能性があります。

例えば飲み込む力や噛む力が弱くなっている要介護者の場合、食べやすい食形態がありますが、介護者がこのような情報を知らない場合延々普通食を提供してしまうため、要介護者が満足に栄養を取れず体調を崩してしまうといったことが起こりうるわけです。

介護者の精神的・身体的な負担が大きい

認認介護においては介護者の身体的負担だけではなく、精神的な負担も大きくなります。

要介護者の認知症の症状によってはコミュニケーションがうまくいかなくなったり、性格が変化したりする可能性があるため、介護者は精神的に疲れやすくなってしまうのです。

虐待につながる可能性がある

認認介護では介護者・要介護者とも正確な判断ができなかったり、感情のコントロールがきかなくなったりすることから高齢者虐待につながる可能性が出てきます。

2016年度に行われた高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対 応状況等に関する調査結果においては、虐待の発生原因として「虐待者の介護疲れ・介護ストレス」が27.4%で1位、「被虐待者の認知症の症状」が12.7%で4位であるとわかりました。

この結果から、認認介護が高齢者虐待に結びつきやすい要因であることがうかがえます。

参考:厚生労働省「市町村・都道府県における高齢者虐待への対応と養護者支援について(国マニュアル)」

共倒れになる可能性がある

認認介護は介護者に大きな負担がかかるため、耐えきれず体調を崩して倒れてしまうことがあります。

すると要介護者も日常生活が維持できず、共倒れになってしまうのです。

認認介護を予防するには?

認認介護を予防するためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

5つご紹介します。

健康的な生活を心がける

認認介護にならないようにするには、日頃の生活習慣を見直して健康的な生活を送り、介護予防をすることが重要です。

具体的には次のようなことを心がけてみましょう。

  • 1日3食、栄養バランスの取れた食事を取る
  • 生活に適度に運動を取り入れる
  • 自分が楽しめる趣味や地域の活動を見つけ、それに没頭する時間を作る
  • 同じ時間に起床、就寝するなど生活習慣を整える
  • 喫煙や適量を超える飲酒は控える
  • 自分が参加できるコミュニティを見つけ、人と積極的に話をする
  • 身体に違和感があったら早めに受診する

また認知症が発症しても、進行を遅らせるため次のようなことができます。

  • 認知症患者を受け入れてくれるデイサービスなどに通い周囲の人とコミュニケーションを取る
  • 処方薬を忘れずに服薬する
  • 簡単なゲームや計算などを行い脳を鍛える

健康を意識した日常生活を送ることが、認認介護の一番の予防となるでしょう。

介護についての知識を持つ

正しい介護についての知識を持つことで、介護が必要となった際にどこに相談すればよいかを把握し、認認介護にならないようスムーズに行動することができるでしょう。

介護保険のサービス、介護保険外のサービス、福祉機器について、正しい介護の方法などをひととおり学ぶことで介護についての不安感がなくなり、サービスを最大限活用した心地よい介護生活を送ることが可能となります。

最初は地域の介護教室などに足を運んだり、イベントの車いす体験に参加してみたりなど、きっかけ作りから始めてみるのもよいかもしれません。

介護について家族で話し合う

介護を必要とする前に、一度は自分の介護について家族で真剣に話してみるのもよいでしょう。

介護者となる人、要介護者となる可能性のある人両方の意見をすり合わせておき、かかる費用についてもしっかりと事前に話し合っておくことで、認認介護の予防につながります。

地域のコミュニティに参加する

人とのコミュニケーションを大切にすることで、社会から孤立せず認認介護を引き起こしにくくなります。

地域のコミュニティに積極的に参加し、挨拶や世間話ができる程度の関係を作っておくことで、認知症になりにくくなるだけではなく、体調急変時にも気づいてもらいやすくなるでしょう。

社会活動や近所づきあいを大切にする

2022年に内閣府が発表した「令和4年高齢社会白書」によると、近所の人とのつきあい方について65 才以上の人の 82.8%が「会えば挨拶をする」、57.3% が「外でちょっと立ち話をする」と回答しました。

また近所の人とのつきあい方について「趣味をともにする」と回答した人は15.1%でしたが、この中で生きがいを「十分感じている」人は33.2%、「多少感じている」人は55.5%という結果だったのです。

挨拶や世間話程度の近所づきあいでも十分だと感じている人が多い一方で、近所づきあいにおいて一緒に社会的な活動を行っている人ほど、生きがいを感じながら生きていくことができるということがわかったのです。

このことからできるだけ近所づきあいや社会活動を大切にした方が自分に合ったコミュニティを維持できるため、認認介護を引き起こしにくくなることがわかります。

参考:内閣府「令和4年高齢社会白書」

宅配クック123は認認介護を予防するためにも認知症への理解を深めていきます

宅配クック123では認認介護を予防するためにも、認知症への理解を積極的に深めていきたいと考えています。

そのため地域ごとに「認知症サポーター講座」を受講し、修了者はその証としてオレンジリングを身につけています。

毎日お弁当を届けるという身近な存在である自分たちだからこそ、食事で高齢者を支え、認認介護を予防する最前線に立ちたい。

宅配クック123はそんな風に考えています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

認認介護とは、認知症にかかっている人が認知症にかかっている人を介護する状態を指しますが、健康的な規則正しい生活を心がけたり、地域のコミュニティに参加したりすることで予防することが可能です。

この記事も参考にして認認介護への理解を深め、ぜひ自分がそうならないよう心掛けてみてください。