フレイルについて調べていたらオーラルフレイルという言葉にたどりついたけれど、意味やフレイルとの違いがよくわからないと困っている人はいませんか?

この記事ではオーラルフレイルのセルフチェックのやり方から予防方法まで詳しく解説します。

オーラルフレイルとは?

オーラルフレイルとは「Oral」と「Frailty」を合わせた造語で、口のささいな衰えをそのままにしたり、対処をしないままでいたりすると口の機能低下、食べる機能の障がい、心身の機能低下につながるため、それに警鐘を鳴らす意味でできた概念です。

2013年に、平成25 年度厚生労働省老人保健健康増進等事業「食(栄養)および口腔機能に着目した加齢症候群の概念の確立と介護予防(虚弱化予防)から要介護状態に至る口腔ケアの包括的対策の構築に関する研究」で設置されたワーキンググループにより提唱されました。

千葉県柏市在住の高齢者2,044名を対象に行われた45か月間の追跡調査「柏スタディ」によると、オーラルフレイルの人が抱えるリスクについて次のような結果が出ました。

リスクの種類新規発症リスク(オーラルフレイルではない人との比較
身体的フレイル2.4倍
サルコペニア2.1倍
要介護認定2.4倍
総死亡リスク2.1倍

このことからオーラルフレイルは身体機能の衰えに先立って起こるため、それを予防することでさまざまな高齢化に伴うリスクを回避できるとわかります。

サルコペニアについても詳細を知りたい人は、次の記事をごらんください。

参考:日本歯科医師会「歯科診療所におけるオーラルフレイル対応マニュアル2019年度版」

オーラルフレイルとフレイルの違いとは?

フレイルは健常な状態から要介護へと移行する前の状態を指し、身体機能・精神機能・社会問題なども含まれる概念です。

オーラルフレイルはフレイルの中でも口腔機能に注目して作られた概念で、オーラルフレイルが進むほど、フレイルへの影響も大きくなります。

オーラルフレイルは4つのレベルから構成され、数値が大きくなるほどフレイルへの影響度が大きくなるため内容を表にまとめてみました。

オーラルフレイルのレベル概要適切な対応
第1レベル
口の健康リテラシーの低下
・生活範囲の縮小や精神面の不安定さから口腔機能の管理への関心が低下する段階・ポピュレーションアプローチ(集団に対して健康リスクを減らすようアプローチすること)
第2レベル
口のささいなトラブル
・食習慣の変化や老化により、自覚しにくい口の機能低下が進む段階・地域保健事業介護予防による対応
第3レベル
口の機能低下
・口の機能低下が顕在化しサルコペニアやロコモティブシンドローム、口腔機能低下症、栄養障がいへと陥る段階・地域の歯科診療所で対応
第4レベル
食べる機能の障がい
・摂食嚥下機能低下や咀嚼機能不全から、要介護状態、運動・栄養障害になる段階・専門知識のある医師・歯科医師による対応

レベルを示す数値が上がり、オーラルフレイルが進むほど身体や精神のフレイルも進んでいくのがわかります。

オーラルフレイルと老化による口の衰えの違いとは?

オーラルフレイルと老化による口の衰えはどのような違いがあるのでしょうか。

老化は加齢に伴う身体的な機能低下であるため止めることはできませんが、フレイルは適切に介入することで機能を戻すことができるという違いがあります。

オーラルフレイルも前項目で示したレベルの数値が低いうちに適切な対応を行うことで口腔機能を回復できるため、早めに気づき何らかの対策を取ることが重要だと言えるでしょう。

オーラルフレイルの症状

オーラルフレイルの症状とはどのようなものなのでしょうか。

具体的には次のような症状が見られます。

  • 食べこぼしが多い
  • 飲み込む時にわずかにむせる
  • 噛めない食べ物が増える
  • 滑舌がよくない
  • 口の中が乾燥気味になる
  • 体重が減ってきた

オーラルフレイルの症状は、食欲の低下や食べられるものの種類の減少などを引き起こし、結果的に高齢者から食べる楽しみを奪ってしまうことにつながります。

オーラルフレイルの予防方法

オーラルフレイルを予防するには、どのような方法があるのでしょうか。

3つご紹介します。

かかりつけ歯科医を持つ

かかりつけ歯科医とは、安全・安心な歯科医療の提供だけではなく医療・介護に関する幅広い知識と見識を持ち、地域住民の生涯にわたる口腔機能の維持・向上を目指し、地域医療を担う責任を果たすことができる歯科医師のことを指します。

公益社団法人日本歯科医師会が15才~79 才の男女 1万人を対象に行ったインターネット調査の結果では、歯科治療経験者の63%は「かかりつけ歯科医がいる」と回答した一方で、定期的に歯科受診をしている人は31%という結果でした。

またもっと早くから歯の検診や治療を行っておけばよかったと思うかどうかに関して、「そう思う」と回答した人が41.5%、「ややそう思う」と回答した人が34.2%いたのです。

このことからオーラルフレイルを予防するためには、かかりつけ歯科医を持ち、定期的に検診や治療を受けることが大切だとわかります。

参考:公益社団法人日本歯科医師会「あなたには何でも相談できるかかりつけ歯科医はいますか?」

口腔体操をする

オーラルフレイルの予防には口腔体操の効果が高いと言われるため、おすすめの口腔体操を5種類ご紹介します。

かみかみ体操

かみかみ体操は噛む力をつける体操で、口周りをリラックスするストレッチと共に口の筋肉を整える効果があるため、次の手順で行ってみましょう。

  1. 首のストレッチ:首を左右に3回ずつ回します。
  2. 口の上・下・左・右の順番で10回ずつふくらませる:口を閉じて素早く行いましょう。
  3. ウーイーと言いながら4回足踏みする:口の動きを意識して行うのが大切です。

柔らかい食べ物を多く食べている人におすすめです。

ゴクゴク体操

ゴクゴク体操は飲み込む力をつける体操で、のどの筋肉を柔らかくするストレッチもできるため次の手順で行ってみましょう。

  1. 手を組んで天井に向かって上げ、前後左右に倒してストレッチする:体幹の柔軟性を高めのどの動きをスムーズにします。
  2. のどの出っ張りを上げる:アゴは引き、出っ張りに軽く触れて確認しながら行いましょう。
  3. 上げたまま5秒キープする:できる範囲でやってみましょう。
  4. 息を吐く:お腹から息を吐き切ります。

毎日続けることが大切です。

母音体操

母音体操は口の健康を保つためのトレーニングなので、次の手順で行ってみましょう。

  • 「イ」「エ」「ア」「オ」「ウ」の順番で大きく口を開いて発声する:舌がちゃんと上下に移動しているか鏡でチェックするのもよいでしょう。

口腔内に大きなスペースを作るよう意識して行うことが大切です。

子音体操

「パタカラ体操」とも言いますが、子音を意識してしっかり発音すると唇や舌の力を使うためさらに効果的です。

  1. 単音で発音する:「パ」「タ」「カ」「ラ」と一音ずつ発音します。
  2. 連続で発音する:「パパパパ・・・」「タタタタ・・・」「パタカラパタカラ・・・」のように連続で発音します。
  3. 言葉や文章で発音する:「パ」「タ」「カ」「ラ」を含む言葉や文章を発音しますが、事前に準備することなく思いついた言葉や文章を発音することで脳トレにもなるでしょう。

舌のパワーをつける体操

体操で舌にパワーをつけることで誤嚥やむせの予防や症状改善につながるので、次の手順で鏡を見ながら行ってみてください。

  1. 舌を下あごの先に向かって伸ばす:舌が下に向かって伸びます。
  2. 舌を鼻の頭に向かって伸ばす:舌が上に向かって伸びます。
  3. 舌を左右に動かす:どちらかの方向に動かす力が弱くなっていないかをチェックしましょう。
  4. 口の周りで舌を回転させる:スムーズにできるかを確認しましょう。
  5. スプーンを舌にあてて押し、スプーンを舌の力で持ち上げる:左右上下、いろいろな方向から押すとより効果的です。

口のささいな衰えを見逃さない

オーラルフレイルを予防するためには口のささいな衰えを見逃さないことが大切なので、オーラルフレイルのセルフチェック表を用いて定期的に口の状態をチェックしてみるのもおすすめです。

セルフチェック表は公益社団法人日本歯科医師会の「オーラルフレイル」のページにあるリーフレットに掲載されているため、気になる人は目を通してみましょう。

参考:公益社団法人日本歯科医師会「オーラルフレイル」

バランスの取れた食生活をする

オーラルフレイルを予防するためには、フレイルの予防同様にバランスの取れた食生活を送ることが重要です。

フレイルを予防するためには特にたんぱく質を摂取することが有効だとされていて、日本人における高齢者の場合、男性は1日に48 g、女性は1日に 43.3 g以上のたんぱく質を摂取すると、これよりも少ない量を摂取している場合と比較して、フレイルのリスクが低くなると報告されているのです。

オーラルフレイルを予防するためにも、食事を抜いたり、お菓子などで済ませたりせず3食きちんと取るよう意識することが大切です。

参考: 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」高齢者

宅配クック123では食事でオーラルフレイルの予防をお手伝いします

宅配クック123では食事でオーラルフレイルの予防をお手伝いしたいと考えています。

宅配クック123では厚生労働省が地方自治体に通知した配食ガイドラインに基づき、1食あたりのカロリーを普通食で430kcal~600kcalとし、たんぱく質量は16g~24g(普通食)が摂取できるようにしているのです。

配達の際にお弁当にはエネルギー量と栄養価が記載されたメモを同封しているため、自分が1食でどのくらいの栄養を取れたかが一目でわかる仕組みとなっています。

高齢者の方の口の健康を、バランスの取れた食事で守りたい。

宅配クック123のささやかな願いです。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

オーラルフレイルとは口のささいな衰えをそのままにしたり、対処をしないままでいたりすると口の機能低下、食べる機能の障がい、心身の機能低下につながるため、それに警鐘を鳴らす意味でできた言葉です。

高齢者の人が元気に長生きするためにも、この記事も参考にし口の健康を大切にしてください。