デイサービスに通っている家族がアニマルセラピーでたくさんの動物と触れ合えたと喜んで帰ってきたけれど、アニマルセラピーという言葉を初めて聞いたのでどのような内容なのかイメージできないと首をかしげている人はいませんか?
この記事ではアニマルセラピーとは何かからその歴史、効果まで詳しく解説します。
アニマルセラピーとは?
アニマルセラピーとはQOLの向上を目的に動物と触れ合ったり、関わったりする活動のことを指し、日本において作られた造語ですが、世界共通の正式名称はAnimal Assisted Activityで動物介在活動と訳すことができます。
アニマルセラピーは次の3つの種類があります。
アニマルセラピーの種類 | 概要 |
動物介在活動(Animal Assisted Activity=AAA) | ・情緒の安定、QOLの向上などを目的として行われるレクリエーション ・医療従事者は介入しない ・主に高齢者施設や障がい者施設で行われる ・日本でのアニマルセラピーは一般的にこれに含まれる |
動物介在療法(Animal Assisted Therapy=AAT) | ・病気の治療を目的として行われる動物を介在させた補助療法 ・医療従事者の主導で行われる ・患者に合わせた治療目標を設定し適切な動物と調教師を選択する ・治療後は治療効果の評価を行う ・欧米でのアニマルセラピーは一般的にこれに含まれる |
動物介在教育Animal Assisted Education=AAE) | ・幼稚園、保育園、小学校などに訪問して正しい動物との触れあい方や命の大切さを子供たちに学んでもらうための活動 |
欧米でも日本でも、主に医療や福祉、教育などの現場で取り入れられているのがわかるでしょう。
アニマルセラピーを規制する法律
アニマルセラピーは動物と触れ合う場を提供する行為のため、動物の愛護及び管理に関する法律の第10条では「動物の展示」と分類され第一種動物取扱業者として登録する必要があると定められています。
環境省のホームページに登録申請に必要な書類や、第一種動物取扱業者として守らなければならない事項が記載してあるため、アニマルセラピーを行う人は必ず目を通しましょう。
参考:e-GOV法令検索「動物の愛護及び管理に関する法律」
参考:環境省「第一種動物取扱業者の規制」
アニマルセラピーを行うために必要な資格
アニマルセラピーを行うために必ず取得しなければならない資格はありませんが、アニマルセラピーについて学ぶことのできる民間資格は存在するので3つご紹介します。
アニマルセラピスト
NPO法人日本アニマルセラピー協会が、動物と人間との触れあいを通じて生活の質(QOL)の向上を目指すのを目的として認定しているのがアニマルセラピストです。
アニマルセラピストの履修内容は次の3つにわかれていますが、全て受講し認定試験を受け、論文を作成し合格することで資格が取得できます。
履修の目的 | 履修内容 | |
初級 | ・動物介在活動(AAA)実施のために必要な知識を身に着ける | ・アニマルセラピストの使命 ・アニマルセラピーの意義と価値 ・犬の生体管理 ・犬の習性としつけ訓練 ・犬の特徴 ・犬の病気など |
中級 | ・動物介在教育(AAE)実施のために必要な知識を身に着ける | ・大脳生理 ・幼児教育、早期教育 ・児童心理 ・犬の特徴と人との関わり ・訓練用語の知識など |
上級 | ・動物介在療法(AAT)実施のために医師・病院・患者とラポール形成し、架け橋となるために必要な知識を身に着ける | ・セラピストとしての心得 ・感染症 ・精神障害 ・リハビリテーション ・緩和ケアなど |
アニマルセラピストの資格は最短では受講期間3ヵ月、実務研修2年間で取得できます。
広い意味でのアニマルセラピーを学び、それをさまざまな場で活かしたい人におすすめです。
参考:NPO法人日本アニマルセラピー協会「アニマルセラピスト認定資格」
動物介在福祉士
一般社団法人全日本動物専門教育協会が、動物の存在を通じてあらゆる人が心豊かな生活を送れるようになるのを目的として認定しているのが動物介在福祉士です。
動物介在福祉士には初級・中級・上級の3段階があり、それぞれの段階で学ぶ内容と受験資格は次の通りです。
履修内容 | 実技試験内容 | 受験資格 | |
初級 | ・福祉概論(高齢者) ・心理学(基礎) | ・高齢者とのコミュニケーション ・犬の扱い | ・一般社団法人全日本動物専門教育協会が指定する学校において1年間の学科と実技を修了した人 |
中級 | ・福祉概論(高齢者) ・心理学 ・動物介在活動学 ・動物行動学 | ・犬の扱い ・対象者との接し方 ・対象者への活動内容の創意工夫 | ・初級取得後一般社団法人全日本動物専門教育協会が指定する学校において1年間の学科と実技を修了した人 |
上級 | ・福祉概論(障がい者) ・心理学 ・動物介在活動 ・介在療法学 | ・グループメンバー、犬に対する確認テストの実践 ・グループリーダーの経験(3ヵ月以上) ・活動内容の計画案提出と実施 ・サイトアセスメント | ・中級取得後一般社団法人全日本動物専門教育協会が指定する学校において1年間の学科と実技を修了した人 ・中級取得後当該職種に1年以上勤務した人 |
学科、実技試験の合格基準に加え教育実習も含めて合否判定が行われます。
動物介在活動、動物介在療法に重きをおいて学びたい人におすすめです。
動物介在セラピスト
一般社団法人アニマルセラピーこころサポート協会が、セラピー活動を安全で効果的に実施するのを目的として認定しているのが動物介在セラピストです。
動物介在セラピストは次の2つにわかれています。
履修内容 | 受講方法 | 備考 | |
動物介在セラピスト検定2級 | ・アニマルセラピー概要 ・セラピーの効果等について ・実際のセラピー活動 ・認知症、リハビリ、精神障害、知的障害、発達障害について ・犬の生体管理、健康管理、グルーミング ・基本のしつけ、セラピードッグの資質 ・感染症 ・各現場でのコミュニケーションの取り方 | ・テキストで在宅学習 ・通学1日 ・検定試験 | ・動物介在セラピスト検定2級修了のみでは、セラピー活動に参加できない |
動物介在セラピスト検定1級(2級修了者が対象) | ・セラピーの事例と実施方法 ・セラピストの心構え ・カウンセリング(傾聴技法) ・セラピードッグのトレーニング ・リスクマネジメント ・犬を使っての実践・現場実地研修 | ・通学3日 ・実施研修3回 | ・動物介在セラピスト身分証明書が発行されセラピー活動に参加できる |
2級、1級ともに受講しないとセラピー活動には参加できないことに注意しましょう。
短期間で資格を取得しアニマルセラピーを行いたい人におすすめです。
参考:一般社団法人アニマルセラピーこころサポート協会「動物介在セラピスト受講生募集」
アニマルセラピーの歴史
アニマルセラピーの歴史は古く、古代ローマ帝国の時代(紀元前27年~)から戦場でけがをした兵士のリハビリとして乗馬が行われていたことがわかっています。
また身体面だけではなく精神面への治療としては18世紀後半のイギリスにおいて、精神障がい者施設でうさぎやにわとりなどの世話をすることで患者の治療を進める働きかけや、ドイツでてんかん患者の施設において犬や猫、鳥、馬との関わりを奨励する取り組みがされていたのです。
人間の身体面、精神面両方に働きかけることのできるアニマルセラピーは、世界で活動の発展が期待されています。
アニマルセラピーに適する動物
アニマルセラピーに適する動物としては犬、猫、うさぎ、モルモット、ハムスター、小鳥など人間とともに長く暮らしてきた生き物が推奨されています。
ただし個別に獣医師などが適性をチェックする必要があることと、適性があったとしてもストレスサインが見られたら休憩し、動物に負荷をかけないようにすることを忘れてはいけません。
アニマルセラピーの効果
アニマルセラピーには3つの効果があるので、それぞれご紹介します。
医療費が削減できる
2013年に北海学園大学大学院が発表した「アニマルセラピー導入の医療費削減効果分析」によると動物介在療法を行うことで、361.1億円の医療費が削減できると試算されました。
これは動物介在療法に参加した高齢者数の推計、参加した高齢者の通院減少回数の推計、運営・育成コストの推計などを基にして47都道府県ごとに数値化しているため、アニマルセラピーに興味のある人は参考にしたい結果だと言えるでしょう。
参考:北海学園大学大学院「アニマルセラピー導入の医療費削減効果分析」
高齢者のコミュニケーションを活発にすることができる
2013年に大分大学の発表した「動物をかこむ場の発話から捉える認知症高齢者に対する動物介在療法を目指した試み」によると、認知症患者4名に対し2週間に1度、合計6回の動物介在活動を行った所、自発的な発話が増えたことがわかりました。
また2006年~2007年までに社団法人日本動物病院福祉協会が109人の高齢者を対象に16回にわたって行った動物介在活動では、動物がいる場合といない場合で次の表のようなコミュニケーションの違いが見受けられたのです。
動物がいる | 動物がいない | |
笑顔 | 4.45回 | 0.88回 |
アイコンタクト | 2.86回 | 0.31回 |
うなずき | 2.5回 | 1.31回 |
物にさわる | 3.73回 | 0.25回 |
長い会話 | 0.32回 | 0.13回 |
短い会話 | 4.18回 | 2.00回 |
動物がいた方が高齢者の言語コミュニケーションだけではなく、非言語コミュニケーションも活発化しているのがわかります。
参考:水谷渉「高齢者福祉施設等で実施される『アニマルセラピーについての効果』の検証事業」
参考:河村奈美子「動物をかこむ場の発話から捉える認知症高齢者に対する動物介在療法を目指した試み」
高齢者の体調を整えることができる
2006年に東京大学大学院が高齢者37名を対象に1か月に3回の乗馬をしてもらい、その効果について調べた所、乗馬後に多くの高齢者が身体のぬくもり、柔軟性、呼吸機能、満足感などが高まることがわかりました。
このことから適正な乗馬プログラムのもとに馬に乗ることによって、高齢者の体調を整えることができるのがわかります。
参考:局 博一「馬介在療法の健康効果に関するオーバービュー」
宅配クック123では食事面から高齢者の方の体調を整えるお手伝いをしています
宅配クック123では高齢者の方が積極的にアニマルセラピーに取り組んでいただくのを、食事面からサポートしたいと考えています。
アニマルセラピーではたくさんの動物やスタッフの方たちとコミュニケーションを取るため、家に帰ってきてから食事の準備をするのがおっくうになることもあるでしょう。
宅配クック123では1日1回、1食からでもお弁当をお届けしているので、そのような際にご連絡をいただければ、疲れた身体が元気になる栄養バランスの取れた食事を手間をかけずに取ることができるのです。
またたくさん活動して食事でも元気になりたい方には、しっかり食べられる健康ボリューム食のご用意もございます。
アニマルセラピーの後のお食事は、ぜひ宅配クック123にお申しつけください。
まとめ
アニマルセラピーとはQOLの向上を目的に動物と触れ合ったり、関わったりする活動のことを指しますが、高齢者が行うと医療費の削減、コミュニケーションの活発化などさまざまな効果があります。
この記事でアニマルセラピーについて理解を深め、積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。