介護ロボットが今後介護の現場では普及すると言われているけれど、具体的に導入するとどのようなメリットがあるのがイメージがわかない人も多いのではないでしょうか。

この記事では介護ロボットの最新の普及率から導入事例まで詳しく解説します。

介護ロボットとは?

ロボットとは情報を感知し、判断し、動作することのできる知能化した機械システムと定義づけることができますが、ロボット技術が応用され要介護者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器を介護ロボットと言います。

介護ロボットの認知の向上や普及を目指して、経済産業省と国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)では「介護ロボットポータルサイト」を運営し、開発機器や製品化した機器についての情報提供、また導入事例動画の配信などを行っています。

また厚生労働省ではホームページで介護ロボット開発のための補助金・助成金活用を呼び掛けたり、2021年の介護報酬改訂で見守り機器を導入した際に評価することの周知などを行ったりしているのです。

これらのことから介護ロボットは未来の介護を担うツールの1つとして、IcTの利用促進とともに期待されていることがわかります。

介護の現場におけるIcT活用についても知りたい人は、次の記事もごらんください。

参考:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「介護ロボットポータルサイト」
参考:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

介護ロボットの普及率

2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和3年度介護労働実態調査」の結果によると、介護ロボットの導入を行ったのは、「見守り・コミュニケーション(施設型)」が 2.8%、「移乗介助(装着型)」と「介護業務支援」が1.6%、「入浴支援」が 1.3%という結果でした。

一方「いずれも導入していない」と回答した事業所が80.9%を占めたのですが、IcT機器を全く導入していない事業所が22.0%だったことと比較すると、かなり高い数値と言えるでしょう。

また介護ロボットの導入や利用についての課題をたずねてみた所、次のような結果が出ました。

介護ロボットの導入や利用についての課題割合
導入コストが高い57.1%
投資に見合うだけの効果がない(事業規模から考えて必要ない)38.8%
設備や保管等に場所を取られてしまう32.7%
誤作動の不安がある32.4%
技術的に使いこなせるか心配である32.2%

介護ロボットの普及しない理由が価格にあるなら、介護ロボットの導入を支援してくれる補助金として都道府県が地域医療介護総合確保基金で行う、2022年度の「介護ロボット導入支援事業」に目を向けてみるのもよいでしょう。

2015年度の補正予算で同じように介護ロボットの導入を特別に支援した「介護ロボット等導入支援特別事業」においては、4,783事業所で10,496台の介護ロボットが導入されたため、補助金や助成金を積極的に活用することが、介護ロボットの普及率改善につながるのではないでしょうか。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度 介護労働実態調査」
参考:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」
参考:厚生労働省「平成29年度福祉用具・介護ロボット実用化支援事業報告書」

介護ロボット導入のメリット

介護ロボット導入は介護の現場にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。

2022年3月に厚生労働省が発表した「介護ロボット等の効果測定事業報告書」で99施設を対象に介護ロボットを導入することでどのようなメリットがあったのかを調査した所、次のような結果が出ました。

  • 業務の効率化
  • 介護職員の身体的負担・心理的負担の減少
  • 介護職員のモチベーションアップ
  • 利用者とのコミュニケーションを取る時間が作れる
  • 利用者のQOLの向上

例として、この報告書では見守り機器を導入した施設において、心理的ストレス反応測定尺度を用い、個人の合計点が0~7点を心理的負担が「弱い」、8~19 点を 「普通」、20~31 点を「やや強い」、32 点以上を「強い」と評価していますが、導入前は「弱い」が39%だったのに対し、導入後は85%に変化したのです。

報告書では他にも介護ロボット導入のメリットが数値で記されているため、費用対効果をじっくりと検討したい人は目を通しておくのが良いでしょう。

参考:厚生労働省老健局高齢者支援課「介護ロボット等の効果測定事業報告書」

介護ロボット導入のデメリット

介護ロボット導入のデメリットとしてよく上げられるのが現場のニーズとのミスマッチですが、国では介護ロボット開発加速化事業において協議会を設置し、開発前の段階から介護ロボットの開発企業と介護の現場が協議して、ニーズを反映した開発を進めるよう働きかけています。

例えば2019年の取り組みにおいては、介護施設などで解決したい具体的な課題を伝える側(ニーズ側)と、課題を解決できる技術を持つ側(シーズ側)が連絡会議を開き、開発・導入・普及それぞれの段階別の課題から介護ロボットの重点開発分野に関する意見交換まで活発に行われました。

このような取り組みを続けることで、少しずつ介護ロボットが介護の現場に寄り添ったものへと変化していくのではないでしょうか。

参考:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

介護ロボットの種類

介護ロボットにはどのような種類があるのでしょうか。

2017年に国では「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂し、次の分野における介護ロボット開発が重点的に経済産業省・厚生労働省などによって支援されています。

【移乗支援】

装着・ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
非装着・ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器

【移動支援】

屋外・高齢者などの外出をサポートし、 荷物などを安全に運搬できるロボット技術を用いた歩行支援機器
屋内・高齢者などの屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
装着・高齢者などの外出をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器

【排泄支援】

排泄物処理・排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置調節可能なトイレ
トイレ誘導・ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
動作支援・ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱などの排泄における一連の動作を支援する機器

【見守り・コミュニケーション】

施設・介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
在宅・在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
生活支援・高齢者などとのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器

【入浴支援】

・ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器

【介護業務支援】

・ロボット技術を用いて、介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能とする機器

重点分野は高齢者のQOL向上だけではなく、介護者の負担軽減の実現も目的として指定されています。

参考:厚生労働省「『ロボット技術の介護利用における重点分野』を改訂しました」

開発中の機器

国立研究開発法人日本医療研究開発機構が運営する「介護ロボットポータルサイト」においては、開発中の機器一覧を見ることができます。

例えば移乗介助(装着型)では介護士の腰痛防止のためのパワーアシストスーツが開発中となっていますが、動力が内蔵されているためケーブルなどが不要で、着脱が簡単に行えるため施設でも在宅でも活用できるものとなっているのです。

製品化されればその旨情報更新され問い合わせ先も記載されているため、開発されたら将来的に使いたい機器の候補をここで選ぶのもよいでしょう。

製品化された機器

介護ロボットポータルサイトにおいては製品化された機器の一覧も見ることが可能です。

例えば排泄支援では排泄が予測できるデバイス「Dfree」が紹介されていますが、超音波センサーで膀胱の変化を捉えてクラウド上で解析を行い、「そろそろ」「出たかも」の2種類の通知をすることができるのです。

想定される使用者や使用環境なども一覧表に含まれているため、自分の働く介護の現場に合っているかどうかがイメージしやすいでしょう。

参考:国立研究開発法人日本医療研究開発機構「介護ロボットポータルサイト」

介護ロボットの導入事例

厚生労働省のホームページには、2016年~2019年度までの介護ロボットの導入事例、好事例として表彰された事例など多数が紹介されています。

例えば「介護ロボット導入活用事例集2019」では開発重点分野別の事例が機器の概要、使用状況、導入の経緯、選定理由などと共に紹介されているため、似たような機器を導入したい時に事前に目を通しておくと参考になるでしょう。

また高齢者と介護者それぞれへの効果や影響も具体的に記載があるため、導入メリットがイメージしやすくなっているのも特徴的です。

参考:厚生労働省「介護ロボットの開発・普及の促進」

宅配クック123では介護ロボットにできないサービスを追求し続けます

宅配クック123では、介護ロボットにできないサービスを追求し続けたいと思っています。

例えば宅配クック123の場合、通常では玄関において手渡しでお弁当をお届けするのを、寝たきりの方に対しては枕元へのお届けとする場合がありますが、このような柔軟な個別対応は人間だからこそできると考えているのです。

少子高齢化社会に向けて介護の担い手が少なくなる中、介護ロボットの普及は介護の現場をより効率化してくれることでしょう。

そんな中、宅配クック123には何ができるのかを考え続け、サービスに活かしていきたいと考えています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

介護ロボットとはロボット技術が応用され、要介護者の自立支援や介護者の負担軽減に役立つ介護機器のことで、普及率はまだ低いものの厚生労働省や経済産業省が協力して介護の現場のニーズに合った機器の開発を推進しています。

この記事も参考にして、ぜひ介護ロボットについての理解を深めてみてください。