家族に介護が必要になったため介護保険サービスを活用しながら生活を支えているけれど、もし利用している介護事業者が倒産したり休廃業に追い込まれたりしたらどうすればよいのか不安に感じている人はいませんか?

この記事では、介護事業者の倒産や休廃業の現状から高齢者への影響まで詳しく解説します。

介護事業者の倒産や休廃業の現状とは?

2022年に東京商工リサーチが調査した結果によると、「老人福祉・介護事業(介護事業者)」における倒産は介護保険制度が開始した2000年以来最も多い143件(前年比76.5%増)、休廃業・解散は2010年度の調査開始以来最も多い495件(前年比15.6%増)となりました。

また、業種別の倒産件数は次のような結果となっています。

介護事業者の種類件数前年比
訪問介護事業50件6.38%増
通所・短期入所介護事業69件305.66%増
有料老人ホーム12件200%増
その他12件7.69%減

もし今後も介護事業者の倒産や休廃業が続く場合、介護難民の増加が予想されるでしょう。

介護難民についても詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。

参考:東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増『介護事業者』倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~2022年『老人福祉・介護事業』の倒産状況~」
参考:東京商工リサーチ「2022年の介護事業者 休廃業・解散が過去最多、コロナ感染防止の利用控えや物価高が直撃~ 2022年『老人福祉・介護事業』の休廃業・解散調査~」

介護事業者の倒産や休廃業が増加する理由

介護事業者の倒産や休廃業が増加する理由には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

経営が悪化する介護事業者が増加したため

収支差率とは収益額に対する収益と費用の差額の割合を示し、介護事業者の経営指標として用いられる数値ですが、この収支差率が近年減少し続けているのです。

厚生労働省が行っている「介護事業経営実態調査」より収支差率の数値を主なサービス別に表にまとめてみました。

2015年2016年2017年2018年2019年
介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム2.5%1.6%1.7%1.8%1.6%
介護老人保健施設(老健)3.2%3.4%3.9%3.6%2.4%
訪問介護5.5%4.8%6.0%4.5%2.6%
通所介護(デイサービス)7.1%4.9%5.5%3.3%3.2%
短期入所生活介護(ショートステイ)3.2%3.8%4.9%3.4%2.5%

2021年の介護報酬改訂により、収支差率が改善するのか今後も見守っていく必要があると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「介護事業経営実態調査」

経営の大規模化を目指す動きがあるため

2022年に倒産した介護事業者を負債額別で見てみると、負債1億円未満が112件で全体の78.3%を占め、小規模事業者の倒産が多いという結果となりました。

また2022年12月20日付けで社会保障審議会介護保険部会によってまとめられた、次回の介護報酬改訂に向けた「介護保険制度の見直しに関する意見」では「介護の経営の大規模化・協働化によりサービスの質を守りつつ効率化して人材や資源を有効に活用するのが望ましい」との意見が公表されています。

一方高齢化が進む日本においては市場が拡大するのが予想できるため、介護業界におけるM&Aや事業拡大を目指す動きが活発化しているのです。

これらのことから介護業界においては国の方針もあり、大手企業が経営の大規模化を今後も進めていくことが予想されます。

参考:東京商工リサーチ「コロナ禍と物価高で急増『介護事業者』倒産は過去最多の143件、前年比1.7倍増~2022年『老人福祉・介護事業』の倒産状況~」
参考:厚生労働省「社会保障審議会介護保険部会意見」
参考:読売新聞オンライン「介護業界 競争が激化、M&Aで再編進む・・・倒産最多、異業種参入」

新型コロナウイルス感染症への対応によるコスト増加

2020年に株式会社三菱総合研究所が「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(速報)」において26,070件の介護事業者を対象に5月と10月の2回行ったアンケート調査を行った所、次のような結果が出ました。

  • 経費のうち人件費、通信運搬費、車両費は5月、10月とも変化していないと回答した事業所が最も多い
  • 衛生用品にかかる費用は5月、10月とも増加したと回答した事業所が最も多い
  • 研修関係費は5月、10月とも減少したと回答した事業所が最も多い

このことから介護事業者においては新型コロナウイルス感染症対策のために衛生用品にかかる経費が増加し、本来かける必要のある人材育成費を圧迫しているという実態が読み取れます。

人材育成に経費をかけられなければサービスの質が低下し、利用者の減少を招くことから倒産にもつながりやすくなると言えるでしょう。

参考:株式会社三菱総合研究所「新型コロナウイルス感染症の介護サービス事業所の経営への影響に関する調査研究事業(速報)」

介護事業者の倒産による高齢者へのデメリットとは?

介護事業者が倒産すると、高齢者にはどのようなデメリットが発生するのでしょうか。

3つご紹介します。

サービス内容の変更

運営会社が経営を引き継ぐ場合でも、新たな介護事業者を探す場合でも一緒ですが、今まで受けていた介護サービスを全く同じように受けられるとは限りません。

例えば通所介護であれば、通う場所やサービスを受けられる時間、今まで一緒に通っていた仲間、自分のことを理解してくれた介護職員の存在など、経営者の違いで変わる可能性があることはたくさんあると言えるでしょう。

今まで慣れ親しんできた環境が急に変化することから、介護事業者の倒産は介護サービスを受ける高齢者にとって負担が大きいことがわかります。

入居一時金が返還されない

有料老人ホームが倒産した場合、2006年に告示された「厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置」により、入居一時金の保全が義務付けられています。

具体的には入居一時金の未償却部分を、2006年4月以降に設置届出をした有料老人ホームなら500万円を上限として銀行や保険会社、公益社団法人全国有料老人ホーム協会が支払ってくれるのです。

しかし2006年3月以前に設置届出をした有料老人ホームの場合、入居一時金の保全は努力目標だったため、返還されない場合もあります。

有料老人ホームに入居するため、自宅を売却して高額な入居金を支払ったにもかかわらず倒産してしまった場合、住む場所がなくなってしまうこともありうるということです。

参考:厚生労働省「厚生労働大臣が定める有料老人ホームの設置者等が講ずべき措置」

新たな介護事業者を探さなければならない

今まで利用していた介護事業者が倒産した場合、新たな介護事業者を探す必要がありますが、ケアマネージャーに相談して複数の介護事業者を見学して比較検討するという作業を高齢者本人も交えて再度行う必要があるため、精神的にも身体的にも大きな負荷がかかるでしょう。

またすぐに高齢者本人に合った介護事業者が見つからない場合、その間必要な介護サービスを受けられなくなるためQOLが低下するというデメリットも発生します。

倒産しにくい介護事業者を見分けるポイント

倒産しにくい介護事業者を見分けるには、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。

3つご紹介します。

稼働率が高い

稼働率が高い介護事業者は、倒産しにくいと言えるでしょう。

例えば特別養護老人ホームであれば空室がなく、ショートステイであれば人気でなかなか予約が取りにくいといった傾向にあるとお客様である高齢者の利用が多いため、倒産しにくくなるのです。

職員数が多く入れ替わりが少ない

職員数が多く、入れ替わりが少ない介護事業者も倒産しにくいと言えるでしょう。

職員数が多いということはそれだけの人件費を負担できる体力があり、入れ替わりが少ないということは計画外の採用や人材育成に費用をかけなくてもよいということです。

ただし、2021年に行われた「令和3年度介護労働実態調査」によると前職の勤続年数について「5年以上」と回答した人が44.1%、「3年程度」と回答した人が14.3%だったため、一般の企業のように終身雇用という感覚で働いている人は少ないことも覚えておきましょう。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査結果について」

人材育成に取り組む介護事業所の認証評価制度の認証を受けている

各都道府県における「人材育成に取り組む介護事業所の認証評価制度」の認証を受けている介護事業者も倒産しにくいと言えるでしょう。

認証を受けるためには労働環境や処遇の改善、新規採用者への育成体制の確立、キャリアパスと人材育成に関する取り組みなどさまざまな観点から人材育成に積極的に取り組む姿勢を求められます。

そのため前の項目でご紹介した、研修関係費を減らさなければならないような介護事業者の場合、この認証を受けるのは難しくなるのではないでしょうか。

例えば埼玉県ではこの認証を受けた介護事業者をホームページで公表しているため、これから介護サービスを利用したい人はチェックしておきましょう。

参考:埼玉県「埼玉県介護人材採用・育成事業者認証制度 認証事業所のご紹介」

宅配クック123では介護施設さまにもお弁当をお届けしています

宅配クック123では在宅で介護サービスを受けて生活する方だけではなく、介護施設さまにもお弁当をお届けしています。

介護施設さまでは調理ができる人が事情で退職されたり、毎日の献立を考えるのが大変だったりとさまざまなお悩みを抱えながら食事を提供しているため、そのお悩みを解決するために宅配クック123がお手伝いをしているのです。

宅配クック123では月間約280万食の配食実績を持つだけではなく、約430の行政から配食業務を受託しているため、高齢者の方が安心して召し上がることのできるお弁当をお届けできます。

また管理栄養士がメニューを作成しているため、高齢者の方が陥りがちな栄養不足を最大限防止することができるのです。

「ヒト」「カネ」「モノ」を効率的に使い、高齢者さまへのサービスの質を向上させて良い循環を生み出すためにも、宅配クック123のお弁当を活用してみませんか。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

2022年に東京商工リサーチが調査した結果によると、介護事業者における倒産は介護保険制度が開始した2000年以来最も多い143件(前年比76.5%増)となりました。

自分の家族を介護難民化させないためにも、介護事業者を選ぶ際にはサービス内容だけではなく経営状態も確認することが大切です。