介護における食事援助では行事食が大切だと聴くけれど、そもそもどのようなことに気を付けて行事食を提供すれば高齢者の方に喜んでもらえるのかよくわからないと悩んでいる人はいませんか?

この記事では行事食の意味から介護における目的、メニューまで詳しく解説します。

行事食とは?

行事食とは季節ごとの年中行事やお祝いの日に食べる料理のことを指し、旬の食材を用いるのを特徴とし、家族の健康や幸せを願うという意味が込められています。

民俗学の考え方を取り入れて解説するなら、折り目や節目を表す非日常の日である「ハレ」の日に食べる食べ物が行事食です。

日本において伝統的に行われてきたお正月、節分、七夕などの年中行事にちなんだ料理は、介護の現場でも積極的に行事食として取り入れられています。

参考:農林水産省「子どもの食育 行事食について」

介護における行事食の目的とは

食事援助において行事食を取り入れる目的とはどのようなものなのでしょうか。

3つご紹介します。

季節感を感じてもらう

介護が必要な生活になると、外出すること自体が少なくなるため季節を感じる機会が減ります。

特に近年は在宅介護においても施設介護においても気温や湿度の管理が厳密に行われているため、高齢者にとっては快適である反面、春夏秋冬それぞれの季節への移り変わりを感じにくくなってしまうのです。

しかし年中行事に合わせて行事食を取り入れると、その料理から季節を感じることができ、生活にメリハリができるでしょう。

生活の質(QOL)を向上させる

介護において食事援助を行う場合、高齢者の噛む力や飲み込む力に合わせたメニューが重視されるため、使用できる食材が限定されたり、同じような食事内容になったりしがちです。

しかし行事食を食事に定期的に取り入れることで、普段とは異なる食材を用いた食事を楽しめるため、高齢者の生活の質(QOL)の向上に役立ちます。

食欲を増進させる

高齢者でなくとも、いつも同じような内容の食事では食べ飽きてしまい、食欲は減退してしまいます。

行事食を定期的に取り入れることで食事をすること自体への飽きを防止し、食欲を増進させて健康を維持するのに役立つでしょう。

年間の行事食メニューと旬の食材

日本において行われる年中行事と行事食、それに使用される旬の食材をご紹介します。

1月の行事食と旬の食材

1月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材を表にまとめてみました。

日付年中行事行事食旬の食材
1月1日元日おせち料理・カニ
・エビ
1月7日人日の節句七草がゆ・大根(すずしろ)
1月11日(関東)
1月15日、20日(関西)
鏡開き鏡餅
1月15日小正月小豆粥

1月はお正月関連の行事が続き、お餅を食材として使用する機会が増えますが、介護食における行事食として提供する際は細かく刻むなど高齢者の飲み込む力や噛む力に配慮するようにしましょう。

2月の行事食と旬の食材

2月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
2月3日節分・福豆
・恵方巻き

節分では豆まきを行い、鬼を追い払ってから福豆を提供することで、楽しい時間を過ごせます。

節分の福豆は、まいた豆から発芽するのは縁起が良くないとされているため、必ず炒ってから提供するようにしましょう。

3月の行事食と旬の食材

3月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
3月3日ひな祭り・ちらし寿司
・はまぐりのお吸い物
・菱餅
・ひなあられ
・はまぐり
3月20日春のお彼岸・ぼたもち

ひな祭りではひな人形を飾ったり、歌を歌ったりしてから行事食のちらし寿司やひなあられを提供すると気持ちも盛り上がり、楽しく食べてもらえるでしょう。

4月の行事食と旬の食材

4月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
4月上旬お花見・お花見弁当
・花見団子
・たけのこ
・じゃがいも
・わらび
・ぜんまい
・いちご

お花見は外出の機会にもなるので、寒さには注意が必要な時期ですが、公園などで桜を見ながら旬の食材を用いたお弁当を食べていただくのも良いでしょう。

5月の行事食と旬の食材

5月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
5月5日こどもの日・柏餅
・ちまき

こどもの日はこいのぼりや五月人形を飾って、それを見ながらおやつとして柏餅やちまきを食べていただくと楽しい時間が過ごせるでしょう。

6月の行事食と旬の食材

6月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
6月11日入梅いわし

6月に獲れるいわしは産卵前で一番脂が乗っていて美味しいとされるので、新鮮なものを選んで食べていただくのがよいでしょう。

焼き魚でも握り寿司にしても美味しいですが、介護食における行事食としていわしを提供する場合は骨をしっかり取ることが大切です。

7月の行事食と旬の食材

7月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
7月7日七夕そうめん
7月20日以降の丑の日土用の丑の日うなぎうなぎ(養殖の場合)

七夕の夜は笹に飾る短冊にお願い事を書いていただき、天気が良ければ星空を眺めながらそうめんを食べていただくと夏でも食が進みやすいでしょう。

うなぎはどんぶりやお重で提供するため、高齢者には重たいのではないかと考えがちですが、少し小さめの器を選んで提供すると意外と残さず食べてもらえて栄養も豊富なためおすすめです。

8月の行事食と旬の食材

8月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
8月13日~16日お盆精進料理・枝豆
・きゅうり
・トマト
・ピーマン
・かぼちゃ
・なす

8月は緑黄色野菜の多くが旬を迎えるため、精進料理に上手に取り入れると彩りも華やかになるでしょう。

9月の行事食と旬の食材

9月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
9月中旬以降十五夜月見団子
9月の第3月曜日敬老の日赤飯
9月23日秋のお彼岸おはぎ

9月は意外と行事が多いのが特徴的ですが、敬老の日には行事食を提供するだけではなく、日頃の感謝の気持ちなどを書いたメッセージカードを添えると喜ばれるでしょう。

また高齢者が日頃食べたいと思っている食材をあらかじめ聞いておき、敬老の日当日のメニューに取り入れて振る舞うのも良い工夫です。

10月の行事食と旬の食材

10月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
10月中旬~十三夜・月見団子
・栗ごはん
・栗
10月31日ハロウィン・かぼちゃ

十三夜は十五夜の次に美しい月が見られるため、夜空を眺めながら栗ごはんや月見団子を食べていただくのがよいでしょう。

寒さへの配慮が必要な時期になるため、温かい飲みものと一緒に提供することをおすすめします。

11月の行事食と旬の食材

11月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
11月15日七五三千歳飴

千歳飴は粘り気があり長くのびる食材ですが、介護食における行事食として提供する場合は高齢者の方の噛む力や飲み込む力に配慮して、少し小さめに刻むなどの工夫をするのが望ましいでしょう。

入れ歯にもくっついてしまいやすいため提供の仕方には注意が必要です。

12月の行事食と旬の食材

12月に行われる主な年中行事と行事食、旬の食材は次の通りです。

日付年中行事行事食旬の食材
12月22日冬至・かぼちゃ
・名前に「ん」のつく食材
・れんこん
・大根
12月24日クリスマスイブ・チキン
・ケーキ
12月31日大晦日・年越しそば

クリスマスイブのチキンやケーキは高齢者の方のカロリーオーバーや糖質・脂質などの摂りすぎを懸念して敬遠しがちですが、にぎやかにパーティをしながら楽しく食事をするという意味では生活にメリハリができる大切な行事食だと言えます。

また年越しそばは大晦日の夕食に食べる人もいれば、夕食とは別に年が明ける少し前に食べる人もいるため、個人の習慣に合わせて提供するのが望ましいでしょう。

宅配クック123では行事食を大切にしています

宅配クック123では献立を決める際、行事食を大切にしています。

例えば2022年1月の普通食の献立では、1月1日の元旦向けの行事食として、昼食になますと黒豆をメニューに取り入れました。

またお正月の三が日には1月2日の昼食で華かまぼことゆず入り芋きんとん、夕食には桜でんぶ、1月3日の夕食で花形人参や花斗六豆を提供し、高齢者の方々にお正月らしい気分を味わっていただけるよう工夫を重ねています。

これは、宅配クック123がどれだけ栄養価の高くバランスの良い食事を提供しても、高齢者の方に喜んで食べてもらわなければ意味がないと感じているからです。

宅配クック123では、食事は栄養も大切ですが、食べる楽しみをそれに加え、高齢者の方の生活の質(QOL)を向上させるものでありたいと考えています。

その考えを実現するために、献立には行事食を積極的に取り入れ、見た目もできるだけ食欲を増進させるものになるよう配慮しているのです。

高齢者の方にとって生活における楽しみの1つにもなる行事食を、宅配クック123の配食サービスで手軽に取り入れてみませんか。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

行事食とは季節ごとの年中行事やお祝いの日に食べる料理のことを指し、旬の食材を用いるのが特徴的ですが、介護食においては生活の質(QOL)を高めたり、高齢者の食欲を増進したりする役割を果たしていることがわかりました。

高齢者の方に少しずつでも食事を楽しんでもらうために、ぜひ行事食を大切に考え、積極的に取り入れてみてください。