介護の現場で働いている人の中には、もっと業務を効率化したり、職員の負担軽減を図ったりしたいと考える人も少なくないでしょう。

この記事ではそんな時に役立つ介護におけるIcT化について詳しく解説します。

介護の現場におけるIcT化とは?

IcTとは「Information and Communication Technology」の頭文字を取った言葉で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。

IcTは総務省が推進する政策の中で経済・資源・まちづくり・ビジネスモデル作り・放送コンテンツ流通などさまざまな課題解決のために利用されますが、その中の1つに、「IcT超高齢社会構想会議」があります。

2022年に内閣府が発表した「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は2021年10月1日現在1億2,550万人で、65歳以上の人口は3,621万人でした。

総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は28.9%ですが、2025年には30.0%、2065年には38.4%に達すると予想されています。

データを見てもわかる通り日本は超高齢化社会に突入しますが、「IcT超高齢社会構想会議」では医療・介護の分野において、IcTを活用することで超高齢化社会における次のような課題を解決できるとしています。

  • 生産年齢人口の減少
  • 社会保障費の増大
  • 介護負担の増大
  • 高齢者の孤立、孤独、不安

このことから介護の現場におけるIcT化は国の施策として推進されていることがわかります。

参考:内閣府「令和4年版高齢社会白書」

介護の現場においてIcT化が進む背景とは?

介護の現場においてIcT化が進む背景にはどのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

高齢者自身がIcTを活用し始めている

2021年に総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」によると、スマートフォンやタブレット端末の利用について次のような結果が出ました。

年齢よく利用しているときどき利用している
60才~69才55.5%17.9%
70才以上24.3%16.5%

60才~69才の人では半数以上、70才以上の人でも4割程度の人がスマートフォンやタブレット端末を使用しているため、介護の現場においてIcT化が進むことにもそれほど抵抗がない人が増えてきていると言えるのではないでしょうか。

高齢者におけるスマホ利用の現状についても知りたい方は、次の記事もごらんください。

参考:総務省「令和3年版 情報通信白書」

財政支援制度が設立されている

日本では2025年に団塊の世代が全て75才以上となる超高齢化社会へと突入します。

これに伴い医療においては病気と共存しながらQOL(生活の質)を高めたいというニーズ、介護においては医療的ケアを必要とする要介護者の増加などがあるため、医療と介護が連携してサービス提供を行う形を作るのが重要だと言えるでしょう。

このことから国では地域医療介護総合確保基金を設立し、2022年度は医療分野で1,029億円、介護分野で824億円の予算を計上して対象となる事業へ財政支援を行うこととしたのです。

地方自治体により基金の使用用途は異なりますが、介護分野においては介護ロボット導入支援事業、介護業務の効率化ができるIcT機器の導入を支援する事業などに予算が使用されるため、介護分野におけるIcT化はさらに推進されていくでしょう。

参考:厚生労働省「医療と介護の一体的な改革」

介護業界における人材不足

2021年に厚生労働省が発表した「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2019年度における介護職員数は211万人ですが、2025年には約243万人、2040年度には約280万人の介護職員が必要になると試算されました。

このことから介護業界における人材不足をマンパワー以外で補うことのできるIcT化は、ますます進んでいくことが予想されます。

参考:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」

介護の現場におけるIcTの導入率

2021年に公益財団法人介護労働安定センターが8,742事業所を対象に行った「介護労働実態調査」によると、IcTの導入率について次のような結果が出ました。

項目割合
PCで利用者情報を共有している52.8%
記録から介護保険請求システムまで一括している42.8%
タブレット端末などで利用者情報を共有している28.6%
グループウェアなどのシステムで事業所内の報告・連絡・相談を行っている19.8%
給与管理、シフト管理、勤怠管理を一元化したシステムを利用している18.4%
情報共有システムを用いて他事業者と連携している13.8%
他の事業所とデータ連携によりケアプランやサービス提供表などをやり取りするためのシステム10.4%
その他0.7%
いずれも行っていない22.0%

この結果から、IcTを導入している事業所は利用者情報の共有だけではなく労務管理、他事業所との連携など少しずつ活用の場が広がってきているのに対し、1/5の事業所では未だIcTを導入しておらず、IcT導入に対する考え方が二極化してきている現状がうかがえます。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査結果について」

介護の現場で働く人が知っておきたいIcTの導入事例

これから介護の現場にIcTを導入したいと考えている人や、現在IcTを導入しているけれど、もっと他の仕事にも活用して効率を上げたいと考えている人に目を通してほしいのが、リコーの運営している「経営革新のための業種事例 中小企業応援サイト」です。

このサイトでは中小企業経営のヒントとなるテーマを取り上げたコラムや、事例集を数多く掲載しているのですが、トップページで「業種」「テーマ」「地域」の3つから検索がかけられるようになっており、業種の中から「福祉介護」を検索すると、2022年12月現在44記事の中から参考事例を探すことができます。

介護の現場でどのようにIcTを採用して仕事を効率化したのかという導入事例だけではなく、新たなビジネスモデルを見出した事例なども読むことができるので、ぜひ一度は目を通してみてください。

参考:リコー「経営革新のための業種事例 中小企業応援サイト」

介護の現場におけるIcT化の今後の課題

介護の現場におけるIcT化には、今後どのような課題があるのでしょうか。

3つご紹介します。

IcT化における費用補助

国では地域医療介護総合確保基金を利用したIcT導入支援事業を継続的に行っており、2019年の助成事業所数は15県、195事業所でしたが2021年には47都道府県、5,371事業所までに拡大しました。

IcT導入支援事業とは都道府県が実施主体となりIcTを活用して介護サービス事業所の業務効率化を図るために行われる補助金事業で、2022年には137.4億円の予算が計上されているのです。

IcT導入支援事業の概要を表にまとめてみました。

補助対象・介護ソフト、スマホやタブレットなどの情報端末、WiFiなどの通信環境機器、バックオフィスソフトなど
補助要件・ LIFEによる情報収集・フィードバックに協力する
・他事業所からの照会に対応する
・導入計画の作成、導入効果報告をする(2年間)
・ IPAが実施する「SECURITY ACTION」の「★一つ星」または 「★★二つ星」のいずれかを宣言する
補助上限額・職員数に応じて算定
1~10人 100万円
11人~20人 160万円
21人~30人 200万円
31人~ 260万円
補助割合・一定の要件を満たす場合は3/4を下限に都道府県の裁量により設定
・それ以外の場合は1/2を下限に都道府県の裁量により設定

補助金は1年単位で内容が変わるため、IcT導入支援事業のような補助金がいつまで続けられるのかはわかりません。

そのため介護の現場をIcT化するための費用補助が必要な場合、補助金や助成金などの情報を適宜収集しておくことが大切だと言えるでしょう。

データの連携

介護の現場を効率よくIcT化するためには異なる介護ソフト間でもデータの連携ができることが大切なため、国では項目やフォーマットの標準的な仕様を定めています。

今後介護ソフトを導入するなら、この標準仕様に対応するものを選ぶことがサービス事業者間のやり取りをスムーズにするためにも重要なことだと言えるでしょう。

行政と事業所で文書授受するための共通プラットフォーム

介護の現場においては行政に提出する文書や事業所におけるケアの記録やケアプランなど文書作成にかかる負荷が大きいですが、これを軽減するため行政と事業所で文書授受するための共通プラットフォームの立ち上げについて社会保障審議会で議論が進められています。

具体的には現在情報提供サイトとして機能している「介護サービス情報公表システム」の機能を拡張し、事業所がオンライン申請や届出ができるようにするというものです。

2022年7月現在では2022年10月、2023年4月の2期にわけて運用開始を予定しているため、うまく立ち上げれば更なる介護の現場のIcT化が進むでしょう。

参考:厚生労働省「介護現場におけるIcTの利用推進」
参考:厚生労働省「社会保障審議会(介護保険部会介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会)」

宅配クック123は情報発信を大切にしています

宅配クック123では介護の現場におけるIcT化を鑑み、わかりやすい情報発信に努めています。

例えば宅配クック123朝霞・和光店では、スマホでホームページを見た時にケアマネージャーの方や高齢者の方がすぐに問い合わせができるよう、ファーストビュー内の右上に大きくメールマーク、電話マーク、メニューマークを表示しています。

メールマークをタップするとすぐに無料試食券つきの資料請求ボタンが表示されるため、時間も手間も取らせません。

また、必要な人にはじっくりと介護についての知識を深めていただけるよう、ブログで介護食、介護の現場で役立つ心理学などさまざまな情報発信を行っています。

宅配クック123ではこれからも高齢者の方が美味しく健康になれる食事と、がんばりすぎない介護について丁寧な発信を続けていきます。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

介護の現場におけるIcT化は国の施策として推進されていますが、業務の効率化や支援の質の向上などさまざまな効果があると言えるでしょう。

この記事も参考にして、介護のIcT化への理解をさらに深めていってください。