ごはんならごはん、おかずならおかずばかりを食べる片付け食いをする要介護者の方にはどのような対応をするのが望ましいのか、頭を抱えている人はいませんか?

この記事では片付け食いとは何かから、介護の現場で注意したいことまで詳しく解説します。

片付け食いとは?

片付け食いとは「重ね箸」「ばっかり食い」「一丁食い」とも呼ばれ、1つの料理ばかりを食べ続けることを指し、日本の食事作法においてマナー違反とされる「嫌い箸」の1つです。

近年子供や若者にも片付け食いをする人が増加しているため、問題視されているのを知っている人もいるのではないでしょうか。

片付け食いに対して主食、飲み物、おかずを順序良く食べ、その軌跡が三角形を描くことから名付けられたのが三角食べです。

三角食べという言葉は1986年に長崎大学教育学部の赤崎眞弓さんが書いた論文「小学校低・中学年における家庭科的教育」の中で、岐阜市立長良小学校の2年生に対して行われる「生活コース」という科目の「食領域」の中で採り上げられたと記されています。

このように、三角食べは元々1970年代ごろから日本の一部の学校の給食指導で推奨されていたとされています。

参考:赤崎眞弓「小学校低・中学年における家庭科的教育」

片付け食いをする人が増えた背景とは?

近年片付け食いをする人が増加していることには、どのような背景があるのでしょうか。

これには次のような説がありますが、はっきりとしたことはわかっていません。

  • 多くのおかずがある場合1口だけ食べて残すのが失礼であるためという説
  • 塩分摂取量を気にする人の増加により薄味のおかずが増え、ごはんで味を薄める必要がなくなったためという説
  • ラーメン、チャーハン、丼物など主食と副食の区別のない食事が増加したためという説
  • 孤食の人が増加し一人で食べる場合多種類のおかずを作るのが難しいためという説

片付け食いをする人の増加は日本の食文化にとって問題があるとする考え方もあるため、どのような背景から片付け食いをしたとしても、まずはマナー違反であることをしっかりと意識することが大切だと言えるのではないでしょうか。

片付け食いをするメリット

片付け食いはマナー違反であるとは言え、何もメリットがなければ行う人は増加しません。

片付け食いをするメリットを3つご紹介します。

血糖値が上がりにくい

次のような順番で片付け食いをした場合、血糖値の急激な上昇を防ぐことができます。

  1. 野菜
  2. 肉や魚
  3. ごはん、パン、麺類などの炭水化物

糖質の吸収を抑える野菜を最初に食べ、次に糖質に変わりにくい肉や魚、最後に炭水化物を取ることで血糖値の上昇を抑える仕組みです。

もし炭水化物から片付け食いをした場合血糖値は逆に上がりやすくなるので、糖質を気にする人は片付け食いをしないか、野菜から食べるよう心掛ける必要があります。

よく噛んで食べるようになる

お味噌汁やスープなどの水分がある場合、食事の際十分に噛まず水分で無理やり流し込んでしまうことも考えられますが、片付け食いではこのようなことをするのは難しくなります。

よく噛んで食べることには次のようなメリットがあります。

  • 消化吸収が良くなる
  • 食べすぎを予防し肥満防止につながる
  • 虫歯の予防
  • 顎の発達

片付け食いをする場合でもそうではない場合でも、食事はよく噛んで食べるのが望ましいと言えるでしょう。

味が混ざらない

片付け食いをするとお箸やフォーク、スプーンなどを介して他の料理の味が移らないため、料理の味を損ねないというメリットがあります。

コース料理などは特に1品で完結する味付けがされており、他の料理と並行して食べると味を損ねてしまうため、片付け食いにもメリットがあると言えるでしょう。

片付け食いをするデメリット

逆に片付け食いをすることにはどのようなデメリットがあるのかをご紹介します。

食べ残した場合栄養が偏る

片付け食いをする人が食べ残してしまった場合、特定のおかずに手をつけないことになるため摂取できる栄養素が偏ってしまいます。

これが一日だけであればあまり大きな問題とは言えませんが、ずっと続くとどれだけバランスの良い食事を提供し続けたとしても、その人に必要な栄養所要量を満たすことは難しくなってしまうでしょう。

片付け食いは、食事の本来の目的である人間が必要とする栄養を摂取しにくくなる可能性があるという面で、マナーだけではなく大きなデメリットがあると言えるでしょう。

三角食べをするメリット

片付け食いとは逆に三角食べをすると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

日本食のマナーに即している

三角食べは主食・主菜・副菜・汁物・飲み物を順番に少しずつ食べていく食べ方のため、日本食のマナーに即しています。

大人が片付け食いをすると食事のマナーが良くないとされてしまうため、マナーに合った食べ方が必要な場では三角食べができるようにしておくのが望ましいと言えるでしょう。

栄養バランスが崩れにくい

三角食べでは全ての食材をバランス良く口にできるため、例え食べ残したとしても栄養バランスは崩れにくいと言えます。

偏食や好き嫌いも三角食べを推奨することで少しずつ直っていくのではないでしょうか。

口中調味ができる

味があまり濃くないごはんを口の中でおかずの味で味付けしながら食べる方法を口中調味と言いますが、三角食べではこの口中調味を自然に行うことができます。

口中調味を行うメリットは次の通りです。

  • 片付け食いと比較して噛む回数が増加するため唾液の分泌量が増え、栄養素を吸収しやすくなる
  • よく噛んで食べるため食べる量が少なくても満腹中枢が刺激されて食欲を抑えることができる
  • 塩分の摂り過ぎを防止できる
  • 食器を持ち替えながら食べるのでゆっくり食べることができ、血糖値が急激に上がりにくい
  • 食材の組み合わせによりさまざまな味わいが生まれるため味への受容が広くなる

口中調味は海外ではあまり行われない日本特有の食文化の1つですが、ごはんとおかずを一緒に食べる和食の美味しさを最大限に引き出す食べ方だと言えるでしょう。

三角食べをするデメリット

三角食べをするデメリットもご紹介します。

味が混ざるのを嫌う人は食事が苦痛になる

三角食べをして口中調味をすると味が口の中で混ざることになりますが、これを嫌う人は食事をすること自体が苦痛になってしまいます。

このような人には三角食べを無理強いするのはむしろQOL(生活の質)の低下を招いてしまうため、控えた方がよいと言えるでしょう。

片付け食いの人に介護の現場でどのように対処するか

片付け食いをする要介護者に対して、介護の現場ではどのように対処するのが望ましいのでしょうか。

食事が自立である場合と食事介助が必要な場合の2つにわけて解説します。

食事が自立である場合

食事が自立している要介護者の場合、片付け食いをしているのを見計らって他の食材も勧めてみるのがよいでしょう。

具体的には「こちらも美味しいのでいかがですか?」「よろしければおかずも召し上がってください」という形で、無理強いしないよう気を付けながら声がけをします。

声がけをしても少し時間が経過すると片付け食いに戻ってしまうことも多いので、しつこいと感じさせない程度に再度声がけを続けてみましょう。

また片付け食いをする上あまり噛まずに早食いをする要介護者の場合、水分を適度に摂取しないと窒息を起こす可能性があるため、特に注意して見守る必要があります。

片付け食いが若いころからの習慣となっている要介護者もいるため、一度でやめてもらおうとせず、長い時間をかけて少しずつ改善していくことをおすすめします。

食事介助が必要な場合

食事介助が必要な要介護者の場合、主食・副食・水分をバランスよく食べていただくのがよいのですが、自分の食習慣と異なると感じると、口を開けてくれないといった形で食事の拒否につながる場合もあります。

このような場合も無理強いはせず、本人の片付け食いをしたいという気持ちも尊重しつつ、少量ずつ他の食材も食べてみないか声がけをし、時間をかけてバランスの良い食生活が送れるようサポートすることが重要です。

また特に気を付けなければいけないのが水分摂取をしたがらない要介護者で、特に夏は脱水症状を起こす危険性が出て来ることから、少しでもお声がけをして飲み物を取っていただくよう心掛けましょう。

宅配クック123では片付け食いをする方にも美味しく食べていただきたいと考えています

宅配クック123では、片付け食いをする方にとっても食事が美味しく、また栄養バランスを少しでも損ねないものであるよう工夫を凝らしています。

例えば同じ1品のおかずでも、複数の食材を使っているものと1つの食材しか使っていないものでは、片付け食いをする人の栄養バランスがずいぶん異なってくるのではないでしょうか。

このことから宅配クック123の献立においては、1品でも複数の食材を使っているおかずをなるべく取り入れるようにしています。

もちろんお届けしたお弁当を全量きれいに召し上がっていただくことが私たちの理想ですが、片付け食いをする人ほどそれはなかなか難しいことも承知しています。

片付け食いをする人の食事におけるQOLを少しでも高めたい。

宅配クック123では、そんな少し難しい課題に今日も一歩一歩取り組んでいるのです。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

片付け食いとは食事において1種類の料理ばかりを食べ続けることで、日本の食事作法においてマナー違反とされる「嫌い箸」の1つとされており、介護の現場においては少しずつ他の料理も食べていただくようサポートすることが大切だとわかりました。

この記事も参考にして片付け食いについて理解を深め、要介護者の方が食生活においてよりQOLを高められるようサポートしてみてください。