高齢者の低栄養やフレイルが近年問題となっています。フレイルは放っておくと、要介護状態に移行するおそれもあり、注意が必要です。
フレイル予防のためには、高齢者もたんぱく質をしっかり摂る必要があります。そこで今回は、フレイル対策とたんぱく質の関係や、誰でも簡単に続けるためのポイントについてお伝えします。
フレイルとは
「フレイル」とは、英単語の「frailty(フレイルティ)」を訳した言葉で、「虚弱」や「老衰」「もろさ」などの意味があり、年齢を重ねて心身が衰えていく状態を指します。
フレイルは要介護になる前の段階ともいわれ、生活リズムの変化、社会参加の減少や食事量の減少がみられます。
こんなお悩みありませんか?
次の5つのうち3つ以上当てはまると、フレイルの疑いがあります。
- 疲れやすくなった
- 以前よりも歩くのに時間がかかる
- 体重が減り痩せてきた
- 運動する機会がない
- 筋力の低下
上記のうち1〜2つ当てはまる場合はフレイル予備軍です。
それぞれの要因には密接な関係があり、要介護状態への移行に注意しましょう。対策としては、食事内容の改善や、日常でできる運動、趣味や興味があることを持つ、などがあります。
サルコペニアについて
サルコペニアは加齢することで骨格筋量が減少し、身体機能の低下・筋力低下を合わせ持つことを指します。サルコペニアはギリシャ語で「筋肉の喪失(そうしつ)」を意味します。
筋力の低下をそのままにしておくと、動作に時間がかかるようになったり、転倒するようになったりと、要介護状態に移行する危険性があるため注意が必要です。
サルコペニアを予防することはフレイル予防にもつながります。
フレイル予防の3つの注意点
「日本老年医学会」 によると、フレイルの要因には「身体的フレイル」(筋力低下による転倒など)、「社会的フレイル」(交流の減少や経済的に困窮する)、「心理的フレイル」(物忘れ・気分の落ち込み・うつ)があるとされます。フレイルを予防するためには、次の3つのバランスが大切です。
- バランスのよい食事
- 運動
- 社会参加
上記の3つのバランスが崩れると、老化が進行し、サルコペニアやフレイルになります。栄養を摂るためには口腔ケアも大切です。かみ応えのある食品の摂取や、おしゃべりで口を動かすなどを、日頃から心がけるようにします。
高齢者の場合、痩せることは肥満より死亡率も高くなります。体を動かすことは、体力増加だけではなく、心の健康や食欲の増加にもつながります。ウォーキングやストレッチ、体操、普段の買い物など、無理のない範囲で運動して筋力低下を予防しましょう。
また、高齢者向けのイベントやサロン、地域ボランティア、趣味の活動もおすすめです。自分に合う活動を続けていきましょう。
フレイル対策にたんぱく質は関係あるの?
高齢者の低栄養によるフレイルが問題となっており、たんぱく質摂取量の不足が原因のひとつであることがわかっています。この章では、フレイルとたんぱく質の関係やケアマネージャーがケアプランをたてる際のポイントについてお伝えします。
たんぱく質は筋肉の合成に関係する
活動量や食欲の低下などが原因で低栄養状態が続き、たんぱく質が不足すると、筋力の低下につながります。たんぱく質は体の筋肉やエネルギーを作るために重要な栄養素です。たんぱく質不足で筋力が低下すると、サルコペニアになるおそれがあります。これにより、体力の低下が原因の活動量の低下、さらに食欲が低下するという悪循環に陥ります。
糖尿病の場合 は血糖値が上昇しやすくなる
糖尿病患者の場合、フレイルになる要因(身体活動量低下、低栄養、高血糖、低血糖、合併症など)が多いため注意が必要です。フレイルにより活動量が減ることで、筋肉量が減り、血糖値コントロールがしづらくなります。フレイル予防対策として、たんぱく質や野菜を多く摂り、極端なエネルギー制限を避けることが推奨されています。
ケアマネージャーができること
高齢者はたんぱく質が不足しやすく、糖尿病がある場合、管理栄養士と連携して食事療法や運動療法を進める必要があります。食事療法・運動療法を併用するケアプランをたてましょう。フレイル予防には食事で摂れるたんぱく質量にムラがないようにします。朝食は一日の活力源になるほか、朝に摂取するたんぱく質はサルコペニアを予防するために重要です。 朝・昼・夕にたんぱく質を分けて摂るように指導します。
たんぱく質や食物繊維は、糖質と一緒に摂ることで、血糖値の上昇を緩やかにする作用があります。おかずを先に摂り、糖質の多い主食を後に食べるようにします。糖尿病の食事療法では、栄養素がもつ作用をうまく利用するとよいでしょう。
フレイル対策になるたんぱく質の多い食材
厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020版」 によると、高齢者のたんぱく質目標量は、一日あたり、体重1kgにつき1.0g以上が望ましいとされています。
【 男性 高齢者のたんぱく質の食事摂取基準 】
推定平均必要量 | 推奨量 | |
65~74歳 | 50g | 60g |
75歳以上 | 50g | 60g |
【 女性 高齢者のたんぱく質の食事摂取基準 】
推定平均必要量 | 推奨量 | |
65~74歳 | 40g | 50g |
75歳以上 | 40g | 50g |
出典:厚生労働省|「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書・高齢者
食事で摂るたんぱく質が不足すると、体の筋肉を分解してエネルギーに変えようとします。筋肉量を減らさないためにもたんぱく質を多く摂取することが大切です。また、たんぱく質により体内で生合成される血中アルブミンは、不足すると免疫力が低下することがわかっています。そこでこの章では、たんぱく質の多い食材と、効率よくたんぱく質を摂取するポイントや注意点についてお伝えします。
動物性たんぱく質
動物性たんぱく質には、肉・魚・卵・乳製品などがあります。動物性たんぱく質には必須アミノ酸が多く含まれますが、脂質も多いのが特徴です。魚類はたんぱく質が多く、脂質が控え目です。肉類は脂質が多い食材ですが、鶏肉や赤身の肉を選ぶようにすると脂質を控えられます。
植物性たんぱく質
植物性たんぱく質である豆類は低カロリー食品です。大豆の煮物や納豆、冷奴など、手軽な一品としても活用しやすい食材です。たんぱく質は動物性・植物性で含まれるアミノ酸が異なるためどちらかに偏らないように摂取するようにしましょう。
たんぱく質の摂り方3つのポイント
普段の食事にプラスすることで、たんぱく質を効率よく摂取できます。自分で作るのが難しい場合は、市販の食材(缶詰、レトルト食品、お惣菜)や宅配弁当も使い、無理なく続けるようにしましょう。
• 食べやすくアレンジする
プリン・ヨーグルトゼリーなど、のどごしがよいデザートにアレンジするといいでしょう。また、納豆にしらす干しや温泉卵をトッピングすると、たんぱく質摂取量を増やせます。肉類が硬くてかみづらい場合は、ひき肉を使い、つなぎの片栗粉でトロミをつけるなど、工夫してみましょう。
• おかずから食べる
満腹感がある糖質の多い主食を先に食べると、ほかのおかずが食べづらくなります。おかずの後に糖質の多いご飯やパンなどを食べるようにしましょう。
• つなぎとして利用する
フルーツサラダや野菜サラダにヨーグルトをソースとしてかけることで、たんぱく質を摂取できます。このほか、ハンバーグのつなぎに絹豆腐を使うと、食感もやわらかくなり、カロリーを抑えられます。
たんぱく質を摂取する際の注意点
たんぱく質は一度にたくさん摂取するのではなく、毎日継続して摂ることが大切です。たくさん摂取しても、すべて体内に吸収されるわけではありません。炭水化物や脂質もたんぱく質との相互作用があります。たんぱく質にかたより過ぎないよう、バランスよく摂るようにします。また、腎疾患がある場合は 、たんぱく質を多く摂ると、症状が悪化することがあります。このほか、肥満や持病がある際は食材の種類に気をつけ、必ず主治医に相談しましょう。
まとめ
高齢者のたんぱく質摂取量は朝が少なく、昼・夜に多い傾向です。毎日3食を心がけるようにして、朝・昼・夜にたんぱく質を摂るようにしましょう。料理が難しい場合は、市販の食材(缶詰、レトルト食品、お惣菜)を一品プラスすることで簡単に続けられます。
また、栄養バランスの整った宅配弁当もおすすめです。「宅配クック123」では、フレイル予防にもなる「幸(しあわせ)たんぱく食」もあります。腹八分目、心と体は十分目をモットーに、低栄養やフレイル予防以外にも、さまざまな種類を扱っています。 健康維持のために、ぜひ一度お試しください。