介護の現場で仕事をしていると高齢化が進んでいるのがわかるので、自分が高齢者になった時は果たして今のような介護サービスを受けられるのか不安だと感じる人も少なくないのではないでしょうか。

この記事では日本が超高齢化社会になることによって引き起こされる介護難民の問題とその解決策について解説します。

介護難民とは?

介護難民とは介護が必要な高齢者や障がい者が、必要な介護サービスを受けられない状態と定義づけられています。

2015年に日本創成会議が首都圏問題検討分科会で提言した「東京圏高齢化危機回避戦略」において、2025年には全国で介護が必要であるにもかかわらず介護施設に入所できない人の数は43万3591人に上ると試算されました。

このことから介護難民をなくすための対策が早急に求められているのです。

参考:日本創成会議「一都三県における介護施設の収容能力の現状と見通し」

介護難民が増える原因

介護難民はなぜ増加しているのでしょうか。

原因を5つご紹介します。

人口構造の変化

2017年に国立社会保障・人口問題研究所が発表した「日本の将来推計人口(全国版)」では次のような人口構造の変化が予測されています。

2020年2025年2055年
65才以上高齢者の人口(割合)3,619万人(28.9%)3677万人(30.0%)3,704万人(38.0%)
75才以上高齢者の人口(割合)1,872万人(14.9%)2,180万人(17.8%)2,446万人(25.1%)

65歳以上の高齢者数は2025年には3,677万人となり、2042年には3,935万人でピークを迎えると予測されます。

また75歳以上高齢者の全人口に占める割合は増加していき、2055年には25%を超える見込みとなっているのです。

これらのデータから人口構造が変化し、高齢化が進むことで介護難民が増加するとわかるでしょう。

また団塊の世代が75才以上となる2025年に介護や医療のニーズが高まることを2025年問題と呼びますが、この社会的課題も同様の理由で引き起こされることがわかります。

参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」

要介護認定者数の増加

2019年に厚生労働省が発表した「令和元年度介護保険事業状況報告(年報)」によると2019年度末における要介護認定者の総数は668万6,282人でした。

調査を開始した2000年度末の218万人と比較すると約3倍となっており、近年増加のペースが速くなってきています。

高齢者の中に介護を必要とする人が増加しているのも、介護難民増加の一因となっていると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「令和元年度介護保険事業状況報告(年報)」

介護業界における人材不足

2020年に厚生労働省が発表した「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、介護の現場で働く人は2020年10月現在186万2286人いることがわかりました。

しかし2020年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和2年度 介護労働実態調査」によると、事業所全体での人材不足感は「大いに不足」「不足」「やや不足」を合計して60.8%となり、前年度の69.7%と比較すると少し減少したものの、依然人材不足の現場は6割を超えているのが現状です。

このことから介護業界における人材不足が介護難民増加の原因の1つとなっていることがわかります。

参考:厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」
参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和2年度 介護労働実態調査結果について」

家族介護ができない

2019年に厚生労働省が発表した「第8回世帯動態調査」によると家族形態として「単独世帯」は 24.4%、「夫婦のみの世帯」は 24.9%、「夫婦と子の世帯」は 31.6%であることがわかりました。

親世帯と子世帯が同居せず離れて暮らすことが増えた現在においては、家族内で介護を担うことは難しくなってきていると言えるでしょう。

参考:厚生労働省「第8回世帯動態調査」

介護にかかる費用をまかなえない

2019年に厚生労働省が発表した「2019年国民生活基礎調査の概況」では、2018年における全世帯の平均所得金額が552万3千円であるのに対し、高齢者世帯では312万6千円であることがわかりました。

このことから高齢者が介護にかかる費用を自分でまかなうことができず、介護難民となってしまっている現状がうかがえます。

参考:厚生労働省「2019年 国民生活基礎調査の概況」

介護難民に対する国の対策

介護難民に対し、国ではどのような対策を行っているのでしょうか。

5つご紹介します。

人材の確保

2019年3月に厚生労働省が発表した「介護分野の現状等について」によると、第7期介護保険事業計画の介護サービス見込み量に基づき都道府県が推計した介護人材の需要は、2025年度末で約245万人となっています。

2020年10月現在介護の現場で働く人が186万2286人であることを考えると、5年間で60万人程度の介護人材を確保しなければならないことになります。

このため国では介護人材確保のため、次のことに取り組もうとしています。

  • 介護職員の処遇改善
  • 多様な人材の確保と育成
  • 離職防止、定着促進、生産性向上
  • 介護職の魅力向上
  • 外国人材の受け入れ整備

介護人材を急激に増やさなければいけないという課題に対して、さまざまな側面からアプローチしているのがわかります。

参考:厚生労働省「令和2年介護サービス施設・事業所調査の概況」

介護事業所における生産性の向上

厚生労働省のホームページでは介護分野における生産性向上に取り組むためのガイドライン、動画、研修方法などを紹介しています。

ガイドラインは施設サービス、居宅サービス、医療サービスに分けて作られており、施設や事業所、地方自治体が取り組もうと考えた時にすぐに役立つ情報が掲載されているのです。

また動画においては実際に生産性向上に取り組んだ施設の事例を見て学ぶことができるため、介護の現場で働く人たちが非効率的だと感じた際、何から取り組めばよいのかが理解しやすくなっています。

参考:厚生労働省「介護分野における生産性向上について」

介護事業所における働き方改革

2015年度より三重県老人福祉施設協会では、医療介護総合確保推進法に基づく「地域医療介護総合確保基金」を活用して介護事業所における働き方改革に取り組みました。

具体的には地域の元気な高齢者を「介護助手」として育成し、介護の現場への就職を支援したのです。

この取り組みは介護難民の対策としてだけではなく、地域の高齢者への就労先確保、介護予防にもつながるとして注目されています。

介護ロボットの開発支援

介護ロボットの開発支援においては、経済産業省が中心となって民間企業や研究機関などで高齢者や介護の現場におけるニーズを踏まえた機器開発の支援を行い、厚生労働省が中心となって開発の早期段階から介護現場での実証実験を行っています。

開発重点分野として移乗支援、移動支援、排泄支援、見守りとコミュニケーション、入浴支援、介護業務支援の6つの分野を指定し、現在も開発を続けているのです。

助成金制度

上記のような介護難民対策に取り組むための資金が足りない場合、国の助成金制度を活用することができます。

2019年では人材確保、生産性の向上などに対して助成金が出ているので、介護難民対策に積極的に取り組みたい場合は厚生労働省のホームページで制度について調べてみることをおすすめします。

参考:厚生労働省「介護分野の現状等について」

介護難民にならないようにするためには?

将来介護難民にならないためには、どのような準備をしておくのがよいのでしょうか。

5つご紹介します。

介護資金を貯めておく

介護難民にならないようにするためには、介護保険サービスを利用できる資金を貯めておくことが大切です。

またQOL(生活の質)にこだわるなら介護保険外サービスの利用も検討する必要がありますが、こちらは介護保険が適用されないので料金は全額自己負担となります。

資金によって選べる介護サービスは異なってくるため、介護資金を貯めておくことは重要だと言えるでしょう。

介護保険外サービスについても詳しく知りたい方は、次の記事をごらんください。

介護予防に積極的に取り組む

健康を維持し、介護が必要な生活とならないようにすることも自分でできる介護難民対策の1つです。

バランスの良い食事、適度な運動、早寝早起きなど、自分のできる範囲で良いので健康的な生活を送ることが大切です。

地方への移住を検討する

高齢者になってから介護施設への入居のために移住するのは、地域の人間関係にうまく溶け込めない可能性もあるためあまりおすすめできませんが、介護に備えて若いうちから移住を検討し、自分に合った地域で生活の基盤を作るというのもよいでしょう。

2015年に日本創成会議が発表した「全国各地の医療・介護の余力を評価する」という資料では医療・介護に余力のある地域について情報提供されているため、移住を考えるなら目を通しておくことをおすすめします。

参考:日本創成会議「全国各地の医療・介護の余力を評価する」

介護に関する情報収集をしておく

介護が必要になってから介護に関する情報収集をするのではなく、日頃から介護について興味を持ち、情報収集しておく方がいざという時に介護難民になりにくいでしょう。

国が提供している公的な情報とともに自分が住んでいる地方自治体の情報も積極的に収集しておくことが大切です。

家族とあらかじめ介護について話しておく

いざ介護が必要となった時どうするのかを、具体的に家族で話し合っておくことも重要です。

費用、誰が中心となってケアを行うのか、受けたい介護サービスなどを考えておくことが介護難民となるのを防ぎ、QOLの維持にもつながります。

宅配クック123では介護難民の増加防止のためにも栄養バランスの取れた食事をお届けします

宅配クック123では介護難民の増加防止のためにもまずは介護予防が大切だと考え、高齢者の方が栄養バランスの取れた食事を取れるようサポートしています。

好みのものだけを食べる食生活ではどうしても栄養バランスを崩れがちになりますが、宅配クック123の献立は管理栄養士が作成しているため、「食べるだけ」で介護予防となるのです。

またお届け時には必ず安否確認を行い、もしもの際は緊急連絡先へと連絡も行っています。

自分自身が将来の介護難民とならないためにも、まずは宅配クック123のお弁当で食生活を改善してみませんか。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

介護難民とは介護が必要な高齢者や障がい者が、必要な介護サービスを受けられない状態となることを指し、国がさまざまな対策を講じていますが、個人においても介護資金を貯めたり介護予防に取り組んだりして積極的に対策に取り組むことが大切です。

この記事も参考にして、自分や家族が介護難民にならないよう、準備を進めてみてください。