介護の現場で仕事をする上で利用者の話を傾聴し、受容的に接することは大切だとわかっているけれど、最近そのような振る舞いをするのになんだか疲れてしまったという人はいませんか?
この記事ではそんな人に知ってほしい共感疲労について詳しく解説します。
共感疲労とは?
共感疲労とは英語で「compassion fatigue(同情疲れ)」と表現され、ネガティブな感情に接した際に感情移入し過ぎてしまい、自分の心が疲労した状態を指します。
1995年、アメリカのフロリダ州立大学の教授で心理学者のチャールズ・フィグレーによって提唱されました。
介護の現場で働く人が共感疲労となり、心身を疲弊させていくとやがてバーンアウト(燃え尽き症候群)を引き起こしてしまいます。
バーンアウトについても詳しく知りたい人は、次の記事もごらんください。
共感疲労の症状
共感疲労にはどのような症状があるのでしょうか。
3つご紹介します。
認知面での症状
認知面における共感疲労の症状には次のようなものがあります。
- 記憶力の低下
- 集中力や注意力の欠如
- 考えがネガティブになる
- 嫌な経験がフラッシュバックしてしまう
- 仕事にやりがいを感じない
介護の現場では利用者への関心が薄くなってしまったり、対応が機械的になったりすることもあるでしょう。
感情面での症状
感情面における共感疲労の症状には次のようなものがあります。
- 恐怖や悲しみ、怒り、絶望などの激しい感情が湧く
- ささいなことにイライラする
- 気が短くなる
- 落ち込みやすくなる
介護の現場では利用者の理不尽な要求や心ない言葉に傷つきやすくなることもあるでしょう。
身体面での症状
身体面における共感疲労の症状には次のようなものがあります。
- 胃腸の不快感
- めまい
- 頭痛
- 高血圧
- 身体の痛み
- 筋肉の緊張
- 慢性的な疲労
- 寝つきがよくない
介護の現場ではこれらの症状により疲れが抜けにくく、仕事に影響を及ぼすといった形で現れることがあるでしょう。
介護の現場で働く人が共感疲労を起こしやすい理由
介護の現場で働く人は、どうして共感疲労を起こしやすいのでしょうか。
3つご紹介します。
介護の仕事は感情労働であるため
感情労働とは業務上において感情のコントロールやその場に合わせた適切な表現が必要な労働を指しますが、介護の業務は感情労働に分類されるため、共感疲労を起こしやすいのです。
感情のコントロールには自分の感情とは異なるため演技と見透かされることもある表層演技と、自分の感情そのものをコントロールする深層演技の2種類がありますが、介護の現場では深層演技が習慣化しやすいため、ネガティブな感情に触れた際にも心から共感してしまい心の疲れが抜けにくくなります。
課題の分離をしにくい環境にあるため
課題の分離とは自分の課題と他人の課題をわけて考えることです。
課題は個人によって異なるため一線を引いて分離し介入しないことが大切ですが、介護においては求められて部分的なサポートやアドバイスをする「援助」と「介入」が混ざりやすいと言えるでしょう。
このため利用者の課題を自分の課題のように捉えてしまい、共感疲労が起こりやすくなるのです。
社会的使命感を持って仕事をしている人が多いため
介護の現場で仕事をする人は、強い社会的使命感を持っている人が多いと言えます。
このような人はしっかりと利用者をケアしなければならないと自分自身にプレッシャーをかけすぎてしまうため、共感疲労につながりやすくなるのです。
共感疲労を起こしているかどうかチェックするには?
介護の現場で働く人が、自分が共感疲労を起こしているかどうかをチェックするにはどうすればよいのでしょうか。
2018年に支援者支援研究会が作成した「支援者支援ツール活用ガイド」では、共感疲労と精神的な回復力であるレジリエンスを評価できる設問を60問用意してあります。
この60問にどのくらい当てはまるかを得点化し、レーダーチャートに反映すると共感疲労やレジリエンスの状況を可視化できるため、適切な対処法を見出すことができるでしょう。
自分が共感疲労を起こしているのではないかと感じた際は、積極的にチェックを行うことをおすすめします。
共感疲労の対処法
共感疲労を起こした場合、具体的な対処法にはどのような種類があるのでしょうか。
5つご紹介します。
心身を休ませる
共感疲労を起こしていると感じたら、まずは心身をゆっくりと休ませることが大切です。
リフレッシュした後にまた仕事に取り組むのが望ましいですが、共感疲労がひどくなると自分がどのくらい疲れているのかがわからなくなってしまうことも考えられます。
厚生労働省が運営する働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では「働く人の疲労蓄積度セルフチェック」を公開し、20問の質問に答えることで疲労蓄積度を測定できるようにしています。
休みたいけれど休むきっかけを作れない人は、このようなツールを用いて疲労蓄積度を可視化すると思い切って休みが取れるのではないでしょうか。
参考:厚生労働省「働く人の疲労蓄積度セルフチェック(働く人用)」
課題の分離をする
介護の現場においては、自分と利用者、他の職員との課題の分離をしっかりと行うよう意識しましょう。
共感疲労に対処するためには特に感情において課題の分離をすることが重要で、他者の感情を自分でコントロールすることはできず、配慮はできても責任は取れないということを覚えておかなければなりません。
職場とプライベートを区別する
共感疲労を解消するには、職場とプライベートを区別することが大切です。
最初はなかなか切り替えが難しいので、切り替えをするきっかけとして時間や場所で仕事とプライベートの境界線を作りましょう。
例えば「18時以降はプライベートのことしか考えない」「職場の門を出たら自分の夕食のことを考える」などから始めてもよいのではないでしょうか。
無制限にネガティブな感情に触れないようにするためにも、意識して行ってみてください。
辛い気持ちを言葉にする
共感疲労に陥った場合、辛さをそのままにせず信頼できる人に聴いてもらったり、自分でノートに書いたりして言葉にすることが大切です。
カウンセリングでは辛い気持ちを言葉にすることから治療が始まるように、正直な気持ちを何らかの形で言語化するのはストレス解消に役立つと言えるでしょう。
生活に運動を取り入れる
2016年にスポーツ庁が行った「平成28年度体力・運動能力調査結果の分析」によると運動やスポーツのストレス解消効果について、男女・年代を問わず90%~95%程度が「大いに感じる」「まあ感じる」と回答したことがわかりました。
このことから共感疲労でたまったストレスを解消するには、生活に運動やスポーツを取り入れ身体を動かすことが大切だと言えるでしょう。
参考:スポーツ庁「スポーツ庁が考える『スポーツ』とは?Deportareの意味すること」
共感疲労を予防するためには?
介護の現場において共感疲労を予防するためには、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
3つご紹介します。
共感疲労について知識を持つ
自分や他の職員が共感疲労を起こさないようにするためには、まず共感疲労について正しい知識を持つことが大切です。
共感疲労を理解するためにも感情労働、またバーンアウトについても知っておくとなおよいでしょう。
自分の感情を否定しない
介護の現場においては自分が本来共感しにくい感情に対しても受容的に振る舞う必要がありますが、この時自分が本来感じた感情を否定する必要はありません。
例えば介護の現場で暴力を振るわれたとすると、そのことに対して恐怖や不安、怒りを感じるのは自然なことです。
このような時に感じた感情を否定することと、受容的に接するために感情をコントロールするのは違うことだという認識を持つのが大切です。
利用者のどんな感情に共感しやすいかを知る
介護の現場で共感疲労を予防するためには、利用者のどんな感情に共感しやすいのかを自分自身が把握しておくのも重要だと言えるでしょう。
同じネガティブな感情でも共感しやすい感情を感じた時に課題の分離を意識することで、少しずつネガティブな感情に巻き込まれにくくなっていきます。
宅配クック123は共感疲労を起こした介護者の方に寄り添いたいと考えています
宅配クック123では共感疲労を起こした介護者の方を、食事の面からサポートしたいと考えています。
1日1食でも宅配クック123を利用してもらうことができれば、共感疲労の対処法として大切な心身を休ませる時間を作るために、食事の準備をしなくても良い環境を整えることができるためです。
利用者の方にとってNO.1はご家族が作った食事ですが、宅配クック123は栄養面でも味の面でもNO.2を目指し日々努力を続けています。
最初は行事食や会食用に弊社のお弁当を取り入れていただき、味に慣れていただいてから介護休みのために注文していただくのもよいでしょう。
宅配クック123では、共感疲労を起こさずがんばりすぎない介護を目指すためにも、弊社のお弁当を積極的に活用してほしいと考えています。
まとめ
共感疲労とはネガティブな感情に接した際に感情移入し過ぎてしまい、自分の心が疲労した状態を指しますが、介護の現場においてはセルフチェックや早めの対処を行うことでバーンアウトにつながるのを予防することができるでしょう。
この記事も参考にして共感疲労や感情労働、バーンアウトへの知識を深め、自分が心身共に健康な状態で介護を続けられるよう心掛けてみてください。