介護士として働く場合、服薬介助も仕事に含まれているのは理解しているけれど、安全な方法や医療行為にあたらないのはどこまでなのかがよくわからないと不安に感じている人はいませんか?
この記事では服薬介助の方法から行う際の注意点まで詳しく解説します。
服薬介助とは?
服薬介助とは高齢者が内服薬を飲んだり、外用薬を使ったりするのをサポートすることを指します。
具体的には介護士が医師や歯科医師の処方や薬剤師の服薬指導を受けた上、看護職員の保健指導・助言の下に薬の種類や数、飲むタイミングを正確に把握した上で薬の準備・高齢者への声がけ・薬を適切に服薬したかどうかの確認・服薬後の片付けを行うのです。
医師の処方を受けていない市販薬などの服薬介助を自己判断で行うことはできないため注意しましょう。
参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
介護士ができる服薬介助とは?
介護士ができる服薬介助については、2005年に厚生労働省が通知した「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法大31条の解釈について(通知)」で、次のような条件の下であれば行ってもよいとされています。
- 患者が病院への入院や診療所への入所をして治療をする必要がなく容体が安定していること
- 副作用を起こす危険や薬の量の調整のため医師や看護師による継続的な経過観察の必要がないこと
- 薬の使用方法について専門的な配慮が必要ではないこと
また介護士ができる服薬介助の具体的な内容は次の通りです。
- 皮膚に軟膏を塗る(褥瘡の処置をのぞく)
- 皮膚に湿布を貼る
- 点眼薬の点眼
- 一包化された内服薬の内服(錠剤の一種で口の中で溶かすことにより速く効果の出る舌下錠の使用も含む)
- 肛門からの座薬挿入
- 鼻腔粘膜への薬剤噴霧の介助
いずれも様子観察を行い、もし容態が急変したら医師や看護師に報告しなければなりません。
参考:厚生労働省「医師法第17条、歯科医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」
服薬管理と服薬介助の違い
服薬介助と混同されやすい言葉の1つに服薬管理がありますが、服薬管理とは薬の在庫確認、薬の調整などをすることを指します。
服薬管理は医療行為のため、介護士が行うことはできません。
服薬指導と服薬介助の違い
服薬指導も服薬介助と混同されやすい言葉の1つですが、服薬指導とは薬剤師法第25条の2で販売、授与を目的に調剤をした際に薬剤師が行う義務で、薬の適正な使用のため必要な情報を提供し、薬学的な知見に基づく指導を行うことと定義されています。
服薬指導の記録は薬歴として保存され、患者へのより良い薬物治療のために活用されるのです。
このことから服薬指導も介護士が行うことはできません。
服薬介助のポイント
服薬介助を行う際は、どのようなポイントに気を付ければよいのでしょうか。
内服薬と外用薬にわけてご紹介します。
内服薬
内服薬とは人間の体内に入って作用する薬のことを指します。
内服薬の服薬介助のポイントは次の3つです。
適切なタイミングで服用してもらう
内服薬は適切なタイミングで服用する必要があるため、薬をいつ飲むかが薬の袋やお薬手帳に記載されてあります。
それぞれの言葉の意味を表にまとめてみました。
薬を飲むタイミングを示す言葉 | 意味 |
食直前 | ・食事を取る直前に飲む |
食前 | ・食事を取る前の30分以内に飲む |
食直後 | ・食事を取った直後に飲む |
食後 | ・食事を取った後の30分以内に飲む |
食間 | ・食事と食事の間に飲む ・前の食事から2時間程度過ぎてから飲む |
起床時 | ・朝起きてすぐに飲む |
就寝前 | ・寝る約30分前に飲む |
頓服 | ・症状が出た時に飲む |
適切に内服薬の服薬介助をするためには、まず薬を飲むタイミングを示す言葉を正確に理解し、適切な時間に薬を飲んでもらうことが重要です。
正しい飲み方で服用してもらう
内服薬は一般的にコップ1杯(約200cc)程度の水またはぬるま湯で飲むように作られています。
例えば水を飲まずに薬だけを服用したとすると、薬が十分に溶けて吸収されない可能性があるため、薬の作用が不十分なものとなってしまうのです。
また水以外の飲み物で薬を飲むと作用が強く出てしまったり、逆に抑えられたりする可能性があるのでおすすめできません。
これらのことから内服薬の服薬介助においてはコップ1杯の水を準備し、薬を十分に作用させるためには水を飲んでもらう必要があることを相手に説明し、理解してもらうことが大切です。
適切に介助する
内服薬の服薬介助においては、薬の種類に応じて適切な介助を行うようにしましょう。
主な内服薬の介助方法は次の通りです。
内服薬の種類 | 服薬介助の方法 |
錠剤・カプセル | ・1つずつ舌の上に置き、飲み込んだかどうか確認する |
粉・顕粒薬 | ・粉や粒が口の外にこぼれないように気を付け、全量飲んだか袋を見て確認する ・飲み込みにくい場合はオブラートや薬を飲むためのゼリーなどを活用する |
舌下剤 | ・舌の下に錠剤を置き、噛んだり飲み込んだりしないよう見守りをする |
液体の薬 | ・容器を振って中身を均質にしてから飲み込みの状態に合わせてコップや吸い飲みで少しずつ飲んでもらう |
複数の内服薬を飲む必要がある人もいるため、誤薬・落薬には十分に注意しましょう。
外用薬
外用薬とは人間の体外で作用する薬の総称です。
外用薬を服薬介助する際、特に気を付けて行いたいのが坐薬と目薬です。
坐薬はまず横向きに寝てもらい、ワセリンなどの潤滑剤や保湿剤などを先端に塗って滑りやすくし、指の第二関節が隠れる程度まで挿入します。
この後坐薬が飛び出てきてしまうのを予防するために、約10秒間程度肛門をティッシュで押さえるようにするとよいでしょう。
目薬は頭を支えながら下まぶたを軽く押さえると少し粘膜が見えるので、その場所をめがけて点眼します。
薬が目からこぼれないように、すぐに目を閉じてもらうようにするとよいでしょう。
感染予防のためスポイトの先端がまつ毛や皮膚に触れないようにすることが大切です。
服薬介助の注意点
服薬介助をする際は、どのような点に注意して行うのがよいのでしょうか。
3つご紹介します。
誤嚥を予防する
内服薬を服薬介助する際、薬を口に入れることだけに集中せず、正しく飲み込めているかどうかの確認をすることにも意識を向けましょう。
口の中に薬が残っているのを本人も気づかないままでいると、薬を飲んでから時間が経過した後に誤嚥してしまうといった事故を引き起こします。
また錠剤が飲み込みにくい様子であればそのことを記録に残し、医師に飲み込みやすい薬への変更を相談するのもよいでしょう。
誤薬と落薬を防止する
服薬介助で起こりやすいのが誤薬と落薬です。
誤薬とは誤った種類、量、時間、方法で薬を飲んでしまうことを指し、落薬とは内服薬を開封してから口に入れるまでの間に何らかの理由で落としてしまい、服薬できなくなることを指します。
誤薬と落薬を防止するためのポイントをそれぞれご紹介します。
誤薬防止のポイント
誤薬が起こる原因は次の3つです。
- 薬のセッティングを正しいと思い込んでしまう
- 誰の薬か、用法・用量などの確認を怠っている
- 薬の作用、副作用、正しい用法・用量などについての理解が不足している
処方薬はそもそも市販の薬より薬効成分を多く含む傾向にあるため、処方された本人以外の人が飲んだり、正しい方法で飲まなかったりすると体調を崩してしまう可能性があります。
誤薬防止のポイントは次の3つです。
- 名前の確認
- 薬の種類・数・用法・用量の確認
- 薬のリスクへの理解を深める
誤薬のリスクを正しく理解し、ある程度の緊張感を持って服薬介助に臨むことが大切だと言えるでしょう。
落薬防止のポイント
落薬が起こる原因は次の3つです。
- 本人が誤って薬を落としそのままにしてしまう
- 内服薬を服薬したがむせ、せき込んだ際に口から出てしまう
- 服薬拒否で本人が薬を捨ててしまう
落薬が起こると体調が維持できなくなったり、新しい薬を購入してもらわないといけなかったりするため、できるだけ防止する必要があるのです。
落薬防止のポイントは次の3つです。
- 誰がいつ薬を使ったかを確認する
- 内服薬の場合は薬を飲み込んだかどうかを確認する
- 服薬後床やごみ箱に薬が落ちていないか確認する
1人で服薬介助を複数の人に行う場合でも、全体を見渡しながら行うことが大切です。
様子観察を欠かさない
高齢になるほど薬の成分に反応しやすくなるためよく薬が効く傾向にありますが、副作用も大きく出る可能性があります。
服薬介助後は様子観察を欠かさず、もし体調が急変したら本人には安静にしてもらいすぐに医師に相談しましょう。
宅配クック123では服薬時の安全に配慮した見守りを行っています
宅配クック123ではお客様に対し、服薬時の安全に配慮した見守りを行っています。
具体的に行っているのは次の3点です。
- ご依頼があればお声がけをする
- ご依頼があればカレンダーのポケットに小分けされた薬の手渡しとお声がけをする
- 薬の飲み忘れを発見した場合ケアマネージャーや緊急連絡先に連絡する
直接服薬介助を行うことはできませんが、お弁当をお届けに伺った際の小さな様子観察が、薬を安全に使用していただく手助けになればと考えているのです。
宅配クック123では、これからもお客様の健康を守る取り組みの1つとして、見守りを続けていきます。
まとめ
服薬介助とは高齢者が内服薬を飲んだり、外用薬を使ったりするのをサポートすることを指しますが、正しいタイミング、飲み方、介助方法で行い、誤薬や落薬などのリスクを防ぐため確認を怠らないことが大切です。
この記事も参考にし、ぜひ服薬介助への理解を深めてみてください。