介護の現場で仕事をしている時に高齢者に対して子供相手のように話しかけてしまい、それを上司に注意されてしまったけれど、どうしてそれが良くないことなのかよくわからず困っているという人はいませんか?

この記事ではそんな人に知ってほしいエイジズムについて詳しく解説します。

エイジズムとは?

エイジズムとは年齢に基づいた偏見や固定観念(ステレオタイプ)のことで、1969年にアメリカの医学者であるロバート・ニール・バトラーによって提唱されました。

エイジズムには次の2種類があります。

エイジズムの種類概要事例
否定的エイジズム・年齢を理由に差別されること・賃貸住宅への入居拒否
・定年制度
・運転免許の返納
肯定的エイジズム・年齢を理由に優遇されること・医療費や公共交通機関の割引制度
・敬老の日

定年制度や運転免許の返納は一見望ましいことのように感じますが、個人の能力に関係なく一定の年齢で区切りをつけるという考え方が否定的エイジズムだと言えるでしょう。

また日本においては敬老の日や還暦のお祝いなど、肯定的エイジズムが強いのも特徴的です。

日本におけるエイジズムの現状

2021年6月にLIFULLが全国の18才以上の男女2,000名を対象に行ったアンケート調査の結果によると、エイジズムを「知らない」と回答した人は77.9%でしたが、年齢による差別を「あると思う」と回答した人は45%でした。

また受けたことのあるエイジズム体験として33人に1人が年齢を理由に夢や希望していることを否定され、20人に1人が年齢を理由に服装や外見を変えるよう促されています。

このことから日本ではエイジズムを体験している人が多いにもかかわらず、まだエイジズムを課題として捉えたり、なくすにはどうすればよいかと考えるきっかけにはなっていなかったりすることがわかります。

参考:LIFULL「年齢の森」

エイジズムが起こる原因

エイジズムが起こるのは、どのような原因があってのことなのでしょうか。

3つご紹介します。

加齢に関する知識が少ないため

2020年の看護ジャーナルに掲載された「エイジズムの関連因子についての文献検討」での分析結果では、加齢に関する知識が少ないとエイジズムが強くなるため、身体的側面、心理的側面、社会的側面から加齢に関する理解を深めるのが望ましいことが明らかにされました。
このことから、介護が必要かどうかに関わらず高齢者の人生や歩んできた歴史を知り、その人個人を理解することがエイジズムの解消につながることがわかります。

高齢者から世話をされた経験がないため

同じく「エイジズムの関連因子についての文献検討」での分析結果では、高齢者から世話をされた経験のある人や、高齢者の生活経験を聴いた経験のある人はエイジズムが弱い傾向にあることがわかりました。

このことから、高齢者の知識や優しさに触れた経験を持つ人はエイジズムを持ちにくくなることがわかります。

参考:看護ジャーナル「エイジズムの関連因子についての文献検討」

老いをネガティブなものとして捉えているため

自分が老化したと自覚することを老性自覚と言いますが、老いをネガティブに捉えている人は老性自覚をすることで生きる意欲が低下し、人生における幸福感も低下してしまいます。

一方老いをポジティブに捉えている人は、老性自覚をしても身体や人生における幸福感への影響はあまりありません。

これらのことから老いは本来自分の身体や心に起きる事象の1つで、マイナスでもプラスでもないニュートラルなものであると考えると、エイジズムに囚われにくくなることがわかります。

介護の現場でエイジズムが高齢者に与える影響

介護の現場でエイジズムが高齢者に与える影響にはどのようなことがあるのでしょうか。

神戸大学と日本学術振興会の共同研究である「エイジズム研究の動向とエイジング研究との関連」を参考に2つご紹介します。

周囲の人が持つエイジズムが高齢者に与える影響

高齢者の周囲にいる家族や介護の現場で働く人がエイジズムを持っている場合、次のような影響があります。

影響の種類概要
病気やそれに付随した障がいが生じるリスク・年齢差別やエイジズムにさらされることが慢性的なストレスとなり、慢性疾患やうつ病のリスクを高める
認知・身体機能への影響・エイジズムにさらされることで認知機能や身体機能が低下する
生きる意欲への影響・ネガティブなエイジズムにさらされた人は命にかかわる病気になった際延命治療を選択しない傾向となる
主観的な幸福感への影響・年齢による差別を受けた経験のある人は心理的ストレスが高く主観的な幸福感が低い

周囲の人が持つエイジズムが、高齢者の心身の健康や幸福感に大きな影響を及ぼすため、家族や介護の現場で働く人は高齢者をネガティブなエイジズムにさらさないよう配慮する必要があると言えるでしょう。

本人が持つエイジズムが高齢者に与える影響

高齢者本人がエイジズムを持っている場合、次のような影響があります。

影響の種類概要
病気やそれに付随した障がいが生じるリスク・ネガティブなエイジズムを持っている人ほど高齢になってからの心臓病発生率が高くなり、病気からの回復が遅く、短命となる
認知・身体機能への影響・ネガティブなエイジズムを持っている人はポジティブなエイジズムを持っている人より加齢に伴う記憶力の低下が大きく、運動や余暇活動といった身体活動を活発に行わない
生きる意欲への影響・ポジティブなエイジズムを持っている人は社会活動に積極的に取り組む
主観的な幸福感への影響・ポジティブなエイジズムを持っている人ほど生活に対する満足度が高い

高齢者自身の持つエイジズムは、若いころは自分とは無関係なものとして考えられていますが、高齢者となった時にネガティブに自己を捉える原因となってしまうのです。

参考:神戸大学・日本学術振興会「エイジズム研究の動向とエイジング研究との関連:エイジズムからサクセスフル・エイジングへ」

介護の現場におけるエイジズムをなくすには?

介護の現場においてエイジズムをなくすには、どのような取り組みをするのが望ましいのでしょうか。

3つご紹介します。

エイジズムについての知識を持つ

エイジズムをなくすには、まずエイジズムについての知識を持つことが重要です。

WHOでもエイジズムをなくすには「教育活動」が役立つとしており、正確な情報とステレオタイプではない例を提供することにより共感を高め、さまざまな年齢層に対する誤解を払拭し偏見を減らすことがエイジズム対策になるとしています。

例えば介護の現場において高齢者に対し子供に話しかけるような言葉遣いをするのは、それまでに得たその人の人生経験を尊重しない振る舞いであることを知れば、エイジズムをなくすことができるでしょう。

またエイジズムについて学ぶ際、エイジズムとは自分で将来の自分を差別することだと知るのも大切です。

誰でも安心し、平等に年をとれる社会を作ればみんなの居心地が良くなるということを理解することで、エイジズムのない社会を作り出すことができるでしょう。

高齢者の多様性を理解する

高齢者と一口にいっても介護が必要な人、不要な人、また人生100年時代において自分の能力を活かして働きたい人、ボランティア活動をしたい人などその生き方には多様性があります。

介護の現場においては介護を必要とする人としか触れ合わないため、高齢者と呼ばれる人たちのほんの一部のことしか知らないということをまず理解することが、高齢者に対するエイジズムを払拭することにつながるのではないでしょうか。

高齢者が生きがいを持って生活できるようにする

高齢者に対するエイジズムでよくあるのが高齢者を社会的な経済負担と見なすというものですが、例えばアメリカにおいては全消費額の半分以上は高齢者による支出で、50才以上の人たちがボランティア活動、介護、育児でアメリカの経済に貢献している金額は7,450億ドルにも達します。

この金額は高齢者の介護費用を上回っており、高齢者が生きがいを持ち社会に貢献してくれることは国の経済にも大きな影響を及ぼすことがわかるでしょう。

このことから高齢者が生きがいを持った生活を送るためには、高齢者のQOLに目を向け適切なケアを適切な場所とタイミングで提供することが大切だと言えます。

参考:WORLD ECONOMIC FORUM「新型コロナウイルスの感染拡大がエイジズムを助長。高齢者が生きがいのある生活を送るため私たちにできること」

宅配クック123では高齢者が生きがいを持って生活するのを食事面からサポートします

宅配クック123では高齢者が生きがいを持って生活するのを、食事面からサポートしたいと考えています。

例えば弊社の 商品一覧 を見ていただくとおわかりいただけるように、「カロリー・塩分調整食」「透析食」「やわらか食」「ムースセット食」「消化にやさしい食」のように加齢に伴う身体的な衰えを意識した食事だけではなく、「普通食」「健康ボリューム食」といった高齢者の食の多様性に対応した食事も用意しているのです。

もしわれわれが、高齢者の方が加齢により食が細くなるはずといったエイジズムにとらわれていたとしたら、普通食や健康ボリューム食の提供は行わないでしょう。

しかし、同じ高齢者の方といっても食へのニーズはさまざまであることを理解し、何才になっても食事を楽しんでいただきたいからこそ、このようなメニュー構成としているのです。

宅配クック123では、人生100年時代に高齢者の方々が新たな生きがいを持ち、社会に貢献していただくための健康作りのお手伝いができればと考えています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

エイジズムとは年齢に基づいた偏見や固定観念(ステレオタイプ)のことで、年齢を理由に差別を受ける否定的エイジズムと、年齢を理由に優遇される肯定的エイジズムがありますが、介護の現場においてはエイジズムについて知り、高齢者の多様性について理解することがエイジズムをなくす第一歩となるでしょう。

この記事も参考に、ぜひエイジズムに対する理解を深めてみてください。