介護の現場で仕事をしているけれど、今後は事業所が共生型サービスを提供する方針となって戸惑っている人はいませんか?
この記事では共生型サービスの内容から参考となる事例まで詳しくご紹介します。
共生型サービスとは?
共生型サービスとは、2018年から特例として介護保険サービス事業所が障害福祉サービスを、障害福祉サービス事業所が介護保険サービスを提供できるようにした制度です。
前提として、障害福祉サービスにも介護保険サービスにもさまざまな種類のサービスがありますが、もし障害福祉サービスに似た介護保険サービスがある場合、障害者総合支援法の第7条に基づいて、介護保険サービスの利用が優先されることとなっています。
しかし共生型サービスができることで、サービスを次の中からもより柔軟に選べるようになりました。
共生型介護保険サービス | 共生型障害福祉サービス | |
サービスを行う事業所 | ・従来障害福祉サービス事業所としてホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイを行っている事業所が共生型介護保険サービス事業所の指定を受けて行う | ・従来介護保険サービス事業所としてホームヘルプサービス、デイサービス、ショートステイを行っている事業所が共生型障害福祉サービス事業所の指定を受けて行う |
提供するサービスの種類 | ・利用者の年齢やニーズに応じて障害福祉サービスか共生型介護保険サービスのいずれかを提供する | ・利用者の年齢やニーズに応じて介護保険サービスか共生型障害福祉サービスのいずれかを提供する |
2021年11月現在、障害福祉サービス事業所で共生型介護保険サービスの指定を受けた事業所は148件、介護保険サービス事業所で共生型障害福祉サービスの指定を受けた事業所は903件となっています。
参考:厚生労働省「共生型サービス」
参考:e-GOV法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
共生型サービスのメリット
共生型サービスには次のようなメリットがあります。
- 障がい者が65才以上になっても今まで通い続けてきた事業所に継続して通える
- 高齢者・障がい者・障がい児それぞれがサービスの選択肢が増える
- 「高齢者」「障がい者」「障がい児」という枠組みにとらわれないサービス提供ができる
- 人と人、人と資源が世代を超えてつながり暮らしや生きがい、地域を共に創る「地域共生社会」を実現できる
- 少子高齢化社会においても各地域の実情に応じたサービス提供体制を整え人材確保ができる
共生型サービスが普及することで、より各地域に合った方法で高齢者、障がい者、障がい児をサポートすることができるのが大きなメリットだと言えるでしょう。
共生型サービスのデメリット
一方、共生型サービスには次のようなデメリットがあります。
- 高齢者、障がい者、障がい児と幅の広い年齢層への対処が求められるため介護の現場で働く人の負担が大きくなる
- 共生型サービスを利用できる事業所がまだ少ない
共生型サービスを利用する人たちみんなが心地よく過ごせるようにするためには、時間をかけて環境整備をしていく必要があると言えるでしょう。
共生型サービスの対象とは?
共生型サービスの対象となるサービスは、介護保険サービスと障害福祉サービスの中でそれぞれ次のように位置づけられています。
介護保険サービス | 障害福祉サービス | |
ホームヘルプサービス | ・訪問介護 | ・居宅介護 ・重度訪問介護 |
デイサービス | ・通所介護 ・地域密着型通所介護 | ・生活介護 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・児童発達支援 ・放課後等デイサービス |
ショートステイ | ・短期入所生活介護 ・介護予防短期入所生活介護 | ・短期入所 |
「通所・訪問・宿泊」といったサービスの組み合わせを一体的に提供するサービス | ・小規模多機能型居宅介護 ・介護予防小規模多機能型居宅介護 ・看護小規模多機能型居宅介護 | ・生活介護 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) ・児童発達支援 ・放課後等デイサービス |
表の中で示したそれぞれのサービスの内容を詳細に比較してみたい人は、介護保険サービスについては厚生労働省の「介護事業所・生活関連情報検索」、障害福祉サービスについては社会福祉法人全国社会福祉協議会の「障害者総合支援法のサービス利用説明パンフレット」に目を通してみることをおすすめします。
参考:厚生労働省「共生型サービス」
参考:厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」
参考:社会福祉法人全国社会福祉協議会「障害者総合支援法のサービス利用説明パンフレット(2021年4月版)」
共生型サービスの指定の受け方
障害福祉サービス事業所で共生型介護保険サービスの指定を受けたい事業所、介護保険サービス事業所で共生型障害福祉サービスの指定を受けたい事業所が、知っておきたい申請のポイントは次の通りです。
障害福祉サービス事業所が共生型介護保険サービスの指定を受ける場合 | 介護保険サービス事業所が共生型障害福祉サービスの指定を受ける場合 | |
申請 | ・介護保険法第70条第1項、第72条の2第1項に基づいて申請が必要 | ・障害者総合支援法第36条第1項と第41条の2第1項、 児童福祉法第21条の5の15と第21条の5の17の規定に基づいて申請が必要 |
指定の受け方 | ・指定は「訪問介護」「通所介護」「短期入所生活介護」として受ける | ・指定は「居宅介護」「重度訪問介護」「生活介護」「短期入所」「自立訓練(機能訓練)」「自立訓練(生活訓練)」「児童発達支 援」「放課後等デイサービス」として受ける |
特例 | ・障害福祉サービス事業所の指定申請の際にすでに提出した事項については、申請書の記載や書類の提出を省略できる | ・介護保険サービス事業所の指定申請の際にすでに提出した事項については、申請書の記載や書類の提出を省略できる |
国としてはどちらの申請についても簡素化できる部分の省略はできるだけ行うようにしているため、具体的にそれがどこかを知りたい人は、厚生労働省の共生型サービスのページで確認してみることをおすすめします。
参考:厚生労働省「共生型サービス」
参考:e-GOV法令検索「介護保険法」
参考:e-GOV法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」
共生型サービスの事例
共生型サービスを事業所で提供することにはなったものの、まだ新しいサービスのためどのような課題があるのか、その解決方法は見出せるのか不安に感じている人も少なくないのではないでしょうか。
2021年3月、三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは、「共生型サービスの実態把握及び普及啓発に関する調査研究事業報告書」を発表しました。
これを基に、高齢者・障がい者・障がい児に対する共生型サービスの事例を見ていきましょう。
共生型障害福祉サービス事業の事例
三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは報告書の中で、共生型障害福祉サービス事業所169件に対しアンケート調査を行っています。
アンケートでサービスの提供状況についてたずねた所、「介護保険サービス、共生型障害福祉サービスとも提供中である」が 93.5%で、介護保険サービスの中では通所介護を43.7%、共生型障害福祉サービスの中では共生型生活介護を74.7%で最も多く実施しているとわかりました。
またサービスの提供の仕方について、年齢や障がいにかかわらず同じ時間・場所で一緒にサービスを提供している事業所が89.9%だったのです。
これを踏まえて、秋田県秋田市で2018年10月から新たに共生型障害福祉サービスに取り組んだリフレッシュコア中通の事例を見てみましょう。
リフレッシュコア中通を運営する法人内では、元々介護保険サービスと障害福祉サービスを両方行ってきたものの、事業所では初めての取り組みだったため職員の不安を払拭できるかどうかが大きな課題でした。
しかし個別に職員の不安な要素をヒアリングしたり、別の事業者との立ち上げ時の知見共有などを行ったりすることで少しずつ職員の不安を軽減したため、介護保険サービスと障害福祉サービスのどちらかを専任で行いたいといった要望も出なかったのです。
共生型障害福祉サービスに取り組んだことで、リフレッシュコア中通では最終的に次のような成果を挙げることができました。
- 同性介護ができるようになった
- 介護職員の対応スキルが向上した
- 利用する高齢者に活気が出てきた
介護職員の不安解消という事前準備にしっかりと取り組んだことで、共生型障害福祉サービスを成功させた好事例だと言えるでしょう。
共生型介護保険サービス事業の事例
三菱UFJリサーチ&コンサルティングでは共生型介護保険サービス事業所47件に対しても同じようにアンケート調査を行っています。
アンケートでサービスの提供状況についてたずねた所、「障害福祉サービス、共生型介護保険サービスとも提供中」が93.6%で、障害福祉サービスの中では生活介護を90.9%、共生型介護保険サービスの中では共生型通所介護を77.3%で最も多く実施しているとわかりました。
またサービスの提供の仕方について、年齢や障がいにかかわらず同じ時間・場所で一緒にサービスを提供している事業所が93.2%だったのです。
この結果を踏まえて、石川県輪島市で2019年4月から新たに共生型介護保険サービスに取り組んだショートステイ海と空の事例を見てみましょう。
ショートステイ海と空を運営する法人全体としては最初に介護保険サービスを行い、その後障害福祉サービスに展開したため共生型サービスの導入にあたって職員の抵抗感が少なかったと言えます。
しかし現場では利用者のニーズに合わせて職員が認知症の方のケアについて知識の習得をする必要があったり、職員配置を交代する際の引継ぎ時間が十分に確保できなかったりといった課題はありました。
これらの課題を、職員が個別ケアを重視し1人1人の利用者に寄り添うことで少しずつ乗り越え、利用する高齢者、障がい者、障がい児、またその家族からもこの短期間で「いざという時に利用できて安心」という言葉をもらえたのは素晴らしい成果だと言えるでしょう。
参考:三菱UFJリサーチ&コンサルティング「共生型サービスの実態把握及び普及啓発に関する調査研究事業報告書」
宅配クック123は高齢者だけではなく障がい者・障がい児の方もご利用いただけます
宅配クック123は、介護保険外サービスとして位置づけられているため、実は高齢者だけではなく障がい者・障がい児の方も利用することができるのをご存知でしょうか。
特に病気などがなければ普通食、また食欲旺盛な方向けには健康ボリューム食もメニューに準備がありますので、栄養バランスに気を付けて生活をしたい障がい者・障がい児の方にもぴったりです。
また昼食や夕食をご利用いただいている方で、朝食は手軽に済ませたい派の人がいらっしゃれば、手軽なパンセットやおじやセットもお届けしています。
宅配クック123では、障がいの有無や年齢の関係なく、全ての方に地域で食の楽しみを伝える存在でありたいと考えています。
まとめ
共生型サービスとは、2018年から特例として介護保険サービス事業所が障害福祉サービスを、障害福祉サービス事業所が介護保険サービスを提供できるようにした制度ですが、少しずつ申請する事業所が増え、成果が少しずつ見え始めてきている段階だと言えるでしょう。
この記事も参考にして、少しずつ共生型サービスへの理解を深めていってください。