福祉施設で新型コロナウイルスのクラスターが起こり、職員の人が感染した場合介護サービスはどうなってしまうのだろうと不安に感じている人はいませんか?

この記事ではそんな人に知ってほしい陽陽介護について詳しく解説します。

陽陽介護とは?

陽陽介護とは新型コロナウイルスに感染した福祉施設の職員が、陽性の利用者を介護することを指します。

2021年度の介護報酬改定に伴い介護サービス事業者には、感染症や災害が発生した場合であっても必要な介護サービスを提供できるよう業務継続に向けた計画などの策定、研修の実施、訓練の実施が義務付けられました。

業務継続計画においては、平時の対応、感染疑い者の発生、初動対応、感染拡大防止体制の確立といった段階を踏んで介護サービス事業者が事業を継続するためにしなければならないことが記載されます。

しかし施設内・法人内・地方自治体・関連団体に依頼しても人員を確保できなかった場合についての対応方法は記載してありません。

このため福祉施設で働く職員の多数がクラスターなどで新型コロナウイルスに感染した場合、やむを得ず陽陽介護をしなければならなくなるのです。

参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」

陽陽介護が増加している背景

陽陽介護はどのような背景があり、増加しているのでしょうか。

3つご紹介します。

福祉施設でクラスターが発生している

2022年9月現在、厚生労働省では同一の場で5人以上の感染者の接触歴等が明らかになっている集団をクラスターの目安としています。

2020年3月に厚生労働省が発表した「医療機関・福祉施設でのクラスターの発生状況について」という資料によると全国で14件発生したクラスターのうち3件が高齢者福祉施設、2件が障がい者福祉施設、1件が児童福祉施設で起こったものでした。

このことから福祉施設で利用者と職員両方がクラスターでコロナウイルスに感染し、陽陽介護を引き起こしている現状がうかがえます。

参考:厚生労働省「感染防止対策と医療提供体制の整備 クラスター対策」

医療職の人員配置が介護士と比較すると少ない

福祉施設においては、法律で医療職の人員基準が定められており、その数は次の通りです。

医師看護師
介護老人福祉施設・入所者に対し健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数・入居者の数が30人未満なら常勤換算方法で1人以上
・入居者の数が30人以上50人未満なら常勤換算方法で2人以上
・入居者の数が50人以上130人未満なら常勤換算方法で3人以上
・入居者の数が130人以上なら50人ごとに常勤換算方法で1人増える
介護老人保健施設・常勤で1人以上・入所者1人について3人以上(看護職員は2/7、介護職員は5/7の程度の割合)
グループホーム・なし・なし
有料老人ホーム・なし・入居者の数が30人未満なら常勤換算方法で1人以上
・入居者50人ごとに1人増える

グループホームや有料老人ホームの場合、そもそも医師がいない場合もあり感染者への治療を病院のように行うことはできません。

そのため感染者が発生しても病院に入院ができないと施設で介護を続ける必要があるため、陽陽介護が発生しやすくなるのです。

参考:e-GOV法令検索「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」
参考:e-GOV法令検索「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」

感染症の専門家が少ない

医師はそれぞれに専門領域を持ち患者の治療にあたっていますが、内科の医師であれば全て感染症の専門家というわけではありません。

看護師も同様で、内科での勤務経験がある看護師が全て感染症対策の専門家ではないのです。

一般社団法人日本感染症学会では1998年4月1日より感染症専門医の資格認定を行い、専門医の育成に努めていますが、2022年7月1日現在感染症専門医の認定を受けている人は1,690人です。

また公益社団法人日本看護協会では2021年度から2023年度まで感染管理認定看護師の育成事業を行っていますが、2020年12月現在の感染管理認定看護師数は2,977名です。

このことから感染症の専門知識を持つ医師・看護師の数がまだそれほど多くないため、福祉施設へのサポートに手が回らず陽陽介護を引き起こしている現状がうかがえます。

参考:一般社団法人日本感染症学会「専門医名簿」
参考:公益社団法人日本看護協会「感染管理認定看護師養成推進事業」
参考:公益社団法人日本看護協会「感染管理認定看護師数2,977名」

陽陽介護に陥らないために施設ができる対策とは?

福祉施設が陽陽介護に陥らないためにできる対策にはどのようなことがあるのでしょうか。

新型コロナウイルスの感染経路は飛沫感染、エアロゾル感染、接触感染の3つがあるため、それぞれご紹介します。

飛沫感染対策

飛沫感染とは、患者の咳・くしゃみ・会話などで空気中に飛び散った細菌やウイルスを含む飛沫が粘膜に付着することで起きる感染です。

飛沫は1m~2m程度飛ぶため、それ以上の距離を保つか不織布のマスクをすることで飛沫感染を予防することができます。

例えば食事の際には空いたスペースを活用して距離を取ったり、机を離したりして飛沫感染への対策を行いましょう。

エアロゾル感染対策

エアロゾル感染とは、長ければ3時間程度空気中を浮遊する小さな粒子の中に含まれたウイルスを吸い込むことによって起きる感染です。

エアロゾル感染を防止するには次の3密を作らないようにすることが大切です。

3密の種類概要
密閉空間換気をしておらずエアロゾルが充満しやすい空間
密集場所多くの人が密集している空間
密接場面お互いに手を伸ばせば届く距離での会話

換気はエアコンや空気清浄機ではできないこと、3密以外でもデイルーム、送迎車内、お風呂などではエアロゾル感染が起こりやすいことを覚えておきましょう。

接触感染対策

接触感染とは患者、患者から排出された細菌やウイルスを含む唾液、体液、分泌物、排泄物に触れることで起きる感染です。

接触感染を防止するには次のタイミングで必ず手洗いや消毒を行いましょう。

  • 施設に来た時
  • 食事前
  • レクリエーションやリハビリをする前
  • トイレの後

また職員間では休憩の時間をずらしたり、休憩室で一緒になった際は距離を取ったりことで接触感染を予防できます。

参考:厚生労働省「令和3年7月16日開催 第3回ウェブセミナー『高齢者施設等における感染者発生時の対応~福祉と保健医療の関係者の相互理解と連携によって地域を強くする~』

福祉施設の陽陽介護を防止するために行われている支援とは?

福祉施設での陽陽介護を防止するために行われている支援には、どのようなことがあるのでしょうか。

2つご紹介します。

国が行う支援

2021年5月18日に厚生労働省老健局の「介護保険最新情報VOL.978」で、高齢者施設などで新型コロナウイルス感染症の患者が発生した際に活用できる制度が発表されました。

制度は平時からの感染症対策、新型コロナウイルス発生時に備えた支援、感染者が発生した時の支援・対応の3つに分かれていますが、感染者が発生した時の支援は次の通りです。

【感染者が発生した場合の支援】

感染者発生時の医療従事者や感染管理専門家などの派遣・都道府県への要望で感染制御・業務継続支援チームが支援を行い、必要に応じて専門家やDMAT・DPATなどの医療チームを迅速に派遣
地域医療介護総合確保基金・通常の介護サービス提供時には想定していないかかり増し経費として、消毒・清掃費用や緊急時の介護人材確保のための費用について、補助制度を活用できる
社会福祉施設などへの応援職員派遣支援事業・職員が不足する施設と応援派遣の協力が可能な施設間の調整費用や応援職員を派遣する場合の旅費や宿泊費用などに活用できる
看護師などの専門職による同行訪問支援・謝礼金の支払いには地域医療介護総合確保基金を活用でき、同行訪問は介護報酬として算定できる
感染者が発生した場合に必要となる衛生用品などの配布・感染者が発生した介護施設などに対して、感染者への対応の際に必要となるマスク、ガウン、フェイスシールドなどについては、国で確保し都道府県において備蓄している

【感染者が発生した際の介護報酬や診療報酬の特例】

介護報酬や診療報酬の特例・介護サービス事業所にて感染者が発生しその対応を行った場合介護報酬や診療報酬を特例に基づいて算定できる

感染者が発生した際に速やかに医療チームを派遣してもらい、応援職員を依頼することで陽陽介護を防止することにつながるでしょう。

参考:厚生労働省「介護保険最新情報VOL.978」

一般社団法人日本環境感染学会が行う支援

一般社団法人日本環境感染学会では、高齢者福祉施設従事者の人を対象に相談窓口を設置し、専門家の派遣事業も行っています。

また高齢者・介護・福祉施設における感染対策についてのオンライン講習会の動画を、ホームページにて公開しています。

感染が発生する前に高齢者施設における感染対策の正しい知識を身に着けることで、陽陽介護の防止につなげることができるのではないでしょうか。

参考:一般社団法人日本環境感染学会「新型コロナウイルス感染症(COVIDー19)への対応について」

宅配クック123では福祉施設への配食サービスも行っています

宅配クック123では福祉施設への配食サービスも行っています。

もし福祉施設でクラスターが発生し、食事の提供ができなくなってもお声がけいただければ1日1回からでもお弁当をお届けすることが可能です。

容器は施設で使われている容器、回収容器、使い捨て容器から福祉施設の皆さまのご要望に応じて選ぶこともできます。

栄養バランスの取れた食事で新型コロナウイルスと戦う施設の皆さまの健康を守るお手伝いがしたい。

宅配クック123はそんな風に考えています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

陽陽介護とは新型コロナウイルスに感染した福祉施設の職員が陽性の利用者を介護することですが、適切な感染予防対策を行い国の支援などを活用することでその数を減らすことができるでしょう。

利用者に対し安全に介護サービスを提供し続けるためにも、ぜひ陽陽介護についての理解を深めてみてください。