高齢者のQOL(生活の質)を向上させるためには介護における美容も重要な位置づけなのは理解できるけれど、どのようなことから取り組めばよいのかわからないとお悩みの人も多いでしょう。

この記事では介護における美容の役割と資格、ケアの事例も含めて詳しく解説します。

高齢者における美容意識とは?

内閣府が2014年に行った「高齢者の日常生活における意識調査」では全国の60才以上の男女6,000人を対象におしゃれについてどの程度関心があるのかをたずねました。

その結果「おしゃれをしたい」と回答した人は69.0%で、中には「積極的におしゃれをしたい」と回答した人も8.0%いたのです。

1994年に「おしゃれをしたい」と回答した人は48.7%、2004年には53.4%だったのと比較すると少しずつ増加しているため、高齢者においては男女ともに美容意識が少しずつ高まってきています。

このことから介護においても高齢者における美容意識の変化を捉え、それに合ったケアを行っていくことは重要なことと言えるでしょう。

参考:内閣府「平成26年度高齢者の日常生活における意識調査結果(全体版)」

介護において美容ケアを取り入れるメリットとは?

介護において美容ケアを取り入れるメリットを3つご紹介します。

社会参加がしやすくなる

介護における美容ケアの1つにハンドケア、フェイシャルケア、メイクアップなどを通してリラックスしながら若さや美しさを取り戻し、自信や満足感、自己肯定感の向上などにつなげる化粧療法があります。

2009年10月に発表された日本美容福祉学会誌NO.9に収録されている「美しいこと・老いること~美容の心理学」内で、鳴門山上病院で66才~93才の認知症女性40人に対し化粧療法を行ったところ、次のような好ましい変化が見受けられたというデータが紹介されています。

・表情が変化した(90%)
・身だしなみに気を使うようになった(35%)
・おむつが取れた(28%)

施設においてはQOL向上のため、15%などの目標値を定めておむつ利用を減らす取り組みを行う場合はありますが、ポータブルトイレ利用者のピックアップ、小まめなトイレ誘導、夜間のおむつから尿取りパッドへの切り替えなど介護士への負荷は日勤者、夜勤者ともに計り知れないほど大きいものとなります。

しかし化粧療法では社会参加への敷居が高くなる要因の1つとなるおむつ使用を、このような負荷をかけずに減らすことができるため、高齢者にとっても介護士にとってもメリットがあると言えるでしょう。

自己肯定感を高められる

介護美容が高齢者にもたらす心理的効果には回想法のように脳を活性化させる効果と、ハンドケア、フェイシャルケア、メイクアップなどを他者から行ってもらうことで受容感を味わえる効果の2つがあります。

この2つの心理的効果は自尊心の向上や自己肯定感を高めることにつながるため、対人関係が円滑になるでしょう。

心理的に安定する

2009年10月に発表された日本美容福祉学会誌NO.9に収録されている「美しいこと・老いること~美容の心理学」内で、エステティックにはリラクゼーション効果があること、メイクアップを習うことでうつ病、統合失調症の治療に非常に大きな効果があることが発表されています。

高齢者が介護美容を生活に取り入れることで心理的な安定をもたらし、健康な生活を送ることができるようになると言えるでしょう。

参考:日本美容福祉学会誌NO.8「美容ケアを考える」
参考:日本美容福祉学会誌NO.9「ジェロントロジーの意義と役割」

介護美容におけるサービス内容について

2022年2月現在、介護美容は介護保険外のサービスとして位置づけられていますが、具体的にどのようなサービスが行われているのでしょうか。

3つご紹介します。

福祉美容

福祉美容とは髪を整えることに始まり、化粧療法、ネイル、エステ、ハンドマッサージ、耳毛、鼻毛、眉毛の手入れなど通常の美容室や理容室、サロンなどで受けられる美容サービスと、がん患者向けの医療ウィッグ、障害者の自立支援のための身だしなみやマナー指導などもサービスに含まれます。

美容師または理容師の国家資格を持つ人が福祉美容師として福祉施設、病院、高齢者の自宅において施術を行いますが、福祉美容師として活動をする上で取得した方が良いとされる資格を3つご紹介します。

認定福祉美容介護師®・認定福祉理容介護師®

美容師や理容師の資格を持つ人が特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会の主催する通信教育とスクーリングを受講し、資格認定審査を受けることによって取得できる民間資格です。

資格取得後は理美容法に基づいた介護美容サービスを行うことができるようになります。

通信教育では看護、消毒、心理学、医科薬科学などを幅広く学び、スクーリングでは実技から応急手当までを実際に行いながら学ぶことができるのです。

要介護状態の高齢者や障害を持った人に対しても、健常者や若い人と同じように理美容サービスを施す
ことのできる知識を身に着けたい人は、ホームページから詳細を確認してみましょう。

参考:特定非営利活動法人医療福祉情報実務能力協会「認定福祉美容介護師®・認定福祉理容介護師®資格」

訪問福祉理美容師

理容師や美容師の資格を持つ人、厚生労働省指定の美容師、理容師養成教育機関を卒業した人、美容師・理容師試験受験履修単位取得見込み証明が可能な人が一般社団法人日本訪問福祉理美容協会の主催する講習を受講することで取得できる民間資格です。

資格取得後は提携する専門業者を通して、介護美容を仕事として行うための準備・手続き、保険への加入などもサポートしてもらうことができます。

講習では福祉・介護・医療などの基礎知識、訪問美容、高齢者とのコミュニケーションなどについて学ぶことができます。

自分に合った働き方で介護美容に取り組みたい人は、ホームページから詳細を確認してみましょう。

参考:一般社団法人日本訪問福祉理美容協会「資格認定制度について」

福祉理美容師

理容師や美容師の資格を持つ人が、NPO全国介護理美容福祉協会が主催する技術講習を受講することで取得できる民間資格です。

講習受講後、希望する理容師は「NPO全国介護理美容福祉協会認定福祉理容師」の認定証、美容師は美容師には「日本美容福祉学会認定福祉美容師」の認定証を授与してもらうことができます。

講習では次のような知識や技術を身に着けることができます。
・髪のカット・洗髪を寝たままの状態で容易に行う
・高齢者・障碍者とのコミュニケーションが取れる
・気をつけなければならない身体の部位や状態に配慮できる
・車椅子や杖歩行の方を理美容セット台まで誘導できる
・感染症等の衛生知識を持ち対策ができる

高齢化社会における福祉向上のために自身の持つ理容・美容の技術を活かしたい人は、ホームページで詳細を確認してみてください。

参考:NPO全国介護理美容福祉協会「美容福祉®」

訪問理美容

本来理・美容法では理容室や美容室以外の場所で理容業・美容業を行うことは禁止されています。

しかし疾病やその他の理由で理容室や美容室に足を運ぶことのできない人には訪問理容・訪問美容のサービスを行っても良いとされているのです。

このことから訪問理容・訪問美容とは理容師・美容師の資格を持った人が理容室や美容室以外の場所で理容サービス・美容サービスを行うことを指します。

訪問理容・訪問美容に対しては、地方自治体によって内容は異なりますが費用助成を行っている場合もあります。

地方自治体のホームページで受けられるサービスの内容、対象者、費用、回数、手続き方法などを確認することができるので、サービスについて詳細を知りたい人は目を通すようにしましょう。

化粧療法

化粧療法とはハンドケア、フェイシャルケア、メイクアップなどを通してリラックスしながら若さや美しさを取り戻し、自信や満足感、自己肯定感の向上などにつなげることを指します。

化粧療法によって得られる効果は次の6つです。
・健康で美しい肌を保つヘルスケア効果
・生き生きとした美しさを手に入れるビューティ効果
・心身共に健やかな若さを保つアンチエイジング効果
・スキンシップやアロマによるヒーリング効果
・楽しい会話やコミュニケーションによるメンタルケア効果
・自己演出力を高めるモチベーションアップ効果

化粧療法は主に精神科、心療内科、介護施設などの場で心理療法として行われたり、皮膚科、形成外科など加齢による肌についての悩みを解消する方法として行われたりすることが多いでしょう。

また近年では、化粧品メーカーが主催するセミナーや、メーカーと地方自治体とが連携した介護予防の取り組みの一環などで化粧療法が少しずつ広まってきています。

宅配クック123では食事で高齢者の「美と健康」をサポートします

宅配クック123では高齢者の美容意識の高まりに配慮し、食事面から美と健康をサポートしています。

具体的にはホームページの献立表に栄養価を掲載するだけではなく、全てのお弁当に栄養価を記載したプリントを同封し、栄養バランスの取れた食生活を送れているかどうかが一目でわかるようになっているのです。

また最新の栄養摂取基準である「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」ではフレイル予防の観点から、髪や爪の成分にもなるタンパク質を積極的に摂取することを求められているため、宅配クック123では1食あたりのタンパク質を16g~24gとしているのです。

身体の内側から「きれい」や「元気」を目指したいなら、ぜひ宅配クック123にお声がけください。

宅配クック123資料請求ページ

参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年度版)タンパク質」

まとめ

近年高齢者における美容意識が高まってきていることを背景に、介護において美容ケアを取り入れることには積極的な社会参加、自己肯定感の向上、心理的な安定などさまざまなメリットがあるとわかりました。

高齢者のQOL向上のためにも、ぜひ積極的に介護美容を取り入れてみてください。