子供に障がいがあるのでずっと介護を続けているけれど、自分も年齢を重ねてきて今後子供の生活を支えていけるのか不安だと感じている人はいませんか?

この記事では、そんな人に知ってほしい老障介護の問題点から解決策まで詳しく解説します。

老障介護とは?

老障介護とは高齢者の親が障がいを持つ子供を介護することを指します。

親としては自分がいなくなった後の子供の生活の場をなるべく早く見つけておきたいという思いはあるものの、さまざまな原因や個別の事情からそれがかなえられないこともあるでしょう。

しかし生活の場がみつからないまま時間が過ぎてしまうと親が高齢化し、老障介護につながってしまうというわけです。

老障介護の問題点

老障介護を続けることには、どのような問題点があるのでしょうか。

3つご紹介します。

子供が自立できない

老障介護を続けることで、子供が自立できなくなる可能性があります。

2016年に厚生労働省が発表した「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」では、全国の障がい者、障がい児6,175人を対象に現在の住まいについてたずねた所、次のような結果が出ました。

自分の持ち家家族の持ち家民間賃貸住宅社宅・職員寮・寄宿舎など公営住宅貸間グループホームなどその他不詳
65才未満21.3%45.0%16.7%0.7%7.4%0.5%6.3%0.8%1.2%
65才以上59.2%22.1%6.3%0.1%6.9%0.2%2.4%1.0%1.8%

同じく同居者についてたずねた所、次のような結果でした。

夫婦で暮らしている親と暮らしている子と暮らしている兄弟姉妹と暮らしているその他の人と暮らしている1人で暮らしている不詳
65才未満26.1%53.6%15.4%18.6%3.9%11.4%7.6%
65才以上54.8%2.6%36.9%1.8%3.3%16.2%4.4%

65才未満の人では家族の持ち家で、親と暮らす障がい者の人が最も多いのがわかります。

一方今後の暮らしの展望についてたずねた所、次のような結果が出ました。

今までと同じように暮らしたい1人暮らしをしたい今は一緒に住んでいない家族と暮らしたいグループホームなどで暮らしたい施設で暮らしたいその他わからない不詳
65才未満72.0%4.8%6.0%2.9%2.1%2.1%8.1%2.0%
65才以上85.1%0.4%3.1%0.5%2.7%1.0%4.4%2.8%

65才未満の人では「今までと同じように暮らしたい」と考える人が72.0%で最も多いことから、家族の持ち家で親と暮らしたいと考える人が相当数いるのがうかがえます。

自分と特定の相手がその関係性に過剰に依存し合う関係を共依存と呼びますが、成人しているのに同居して子供の介護を親がしている場合、共依存関係に陥り親と子の双方が自立のきっかけを失うことがあります。

共依存だけが老障介護を引き起こす原因とは限りませんが、障がいを持つ子供が自立できない理由を分析する上で知っておきたい観点だと言えるでしょう。

参考:厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」

虐待につながる可能性がある

老障介護を続けると、親による子供への虐待につながる可能性があります。

2021年に厚生労働省が発表した「令和3年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等の調査結果によると、養護者によって虐待された障がい者は2,004人で、障がいの種別は次のような結果でした。

障がいの種別身体障がい知的障がい精神障がい発達障がい難病等
割合18.3%45.7%41.7%4.1%3.0%

また虐待をした養護者の年齢別の割合は次のような結果だったのです。

養護者の年齢40才~49才50才~59才60才以上
割合17.7%25.0%38.1%

虐待を受けた人の中では知的障がい者の人と精神障がい者の割合が高く、養護者の年齢別の割合では60才以上が最も多くなっています。

子供と自分が若いうちは虐待をしなかった親でも、年齢を重ねて介護がつらくなり子供に手をあげてしまう場合があるのがうかがえます。

参考:厚生労働省「令和3年度都道府県・市区町村における障害者虐待事例への対応状況等(調査結果)について公表します」

家族全体のQOLが低下する

老障介護を続けると、時間の経過とともに家族全体のQOLが低下していきます。

主たる介護者である親が年齢を重ね高齢者になると、体調を崩す、病気になるといった理由でいつかは若い時のような介護ができなくなります。

すると親の介護に頼っていた割合が高い障がい者ほどQOLが低下し、今までのような生活ができなくなってしまうのです。

老障介護が増加した背景

老障介護が増加した背景には、どのようなことがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

仕事に就きたいが就けない人がいる

仕事に就きたいけれど就けない障がい者がいることが、老障介護増加の背景の1つとなっています。

2016年に厚生労働省が発表した「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」で全国の障がい者、障がい児6,175人を対象に日中の過ごし方の状況をたずねた所、次のような結果でした。

65才未満65才以上
正職員11.7%7.1%
正職員以外15.0%7.9%
自営業4.1%6.1%
障がい者通所サービスを利用22.5%4.5%
介護保険の通所サービス2.1%15.0%
病院などのデイケアを利用している2.2%3.9%
リハビリテーションを受けている4.2%8.6%
学校に通っている10.0%0.2%
放課後児童クラブ(学童保育)0.5%
保育園・幼稚園・認定こども園1.7%0.0%
障害児通所施設5.7%0.1%
社会活動などを行っている2.2%2.9%
家事・育児・介護等を行っている8.9%5.4%
家庭内で過ごしている36.3%56.3%
その他5.2%7.9%
不詳9.5%16.0%

一方今後の日中の過ごし方の希望をたずねた所、次のような結果が出ました。

65才未満65才以上
正職員32.4%14.6%
正職員以外28.1%17.6%
自営業5.8%5.5%
障がい者通所サービスを利用24.4%14.0%
介護保険の通所サービス1.1%16.1%
病院などのデイケア4.9%3.3%
リハビリテーション8.1%19.8%
学校に通いたい6.1%0.9%
放課後児童クラブ(学童保育)0.2%
保育園・幼稚園・認定こども園1.3%0.3%
障害児通所施設3.1%0.9%
社会活動7.2%5.2%
家事・育児・介護等を行いたい4.3%3.3%
家庭内で過ごしたい15.1%39.8%
その他11.7%14.6%
不詳8.5%3.6%

正職員として働きたい人と実際に働けている人の差が20.7%、正職員以外で働きたい人と実際に働けている人の差が13.1%あることから、就職を希望しているのに働けない人が一定数いるのがわかります。

参考:厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」

障がい者入所施設の待機者数が増加している

2022年5月のNHKニュースによると少なくとも27の都府県において障がい者入所施設の待機者数が延べ1万8640人いることがわかりました。

一方2021年に東京商工リサーチが発表した2020年「障害者福祉事業」倒産と休廃業・解散調査の結果によると、倒産と休廃業・解散の合計は127件(前年比6.6%減)でした。

この数値は2013年以来7年ぶりに減少したものの、2019年に続き2年連続で100件を上回る結果となったのです。

これらのことから老障介護にならないように障がい者入所施設への入居を希望しても、倒産や休廃業・解散で毎年一定数の施設が減少してしまうため、なかなか思うように入所できない現状がうかがえます。

参考:NHK「障害者の入所施設待機者1万8000人余 背景に『老障介護』か」
参考:東京商工リサーチ「2020年『障害者福祉事業』倒産と休廃業・解散調査」

福祉サービスを利用したくない人が多い

2016年に厚生労働省が発表した「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」で全国の障がい者、障がい児6,175人を対象に障害福祉サービスの利用状況についてたずねた所、次のような結果が出ました。

65才未満65才以上
利用している32.0%22.7%
利用したいが利用できない2.0%1.5%
利用していない54.0%50.1%
不詳12.0%25.7%

また福祉サービスの利用希望についてたずねた所、次のような結果が出たのです。

65才未満65才以上
毎日3.0%2.6%
1週間に3~6日程度3.1%4.5%
1週間に1~2日程度5.6%7.9%
わからない21.5%18.2%
利用したくない33.3%23.9%
不詳33.6%42.9%

65才未満の人では障害福祉サービスを利用していない人が54.0%で最も多く、利用したくないという希望の人も33.3%いるのです。

福祉サービスで受けられる介護と親の介護を比較すると親の介護の方が心地よいと感じる人が多いため、福祉サービスの利用に消極的になっている様子がうかがえます。

参考:厚生労働省「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」

老障介護の解決策

老障介護に対する解決策には、どのような種類があるのでしょうか。

3つご紹介します。

共生型サービスの利用を検討してみる

共生型サービスとは、2018年から特例として介護保険サービス事業所が障害福祉サービスを、障害福祉サービス事業所が介護保険サービスを提供できるようにした制度です。

共生型サービスができたことで障がい者が柔軟に障害福祉サービスと介護保険サービスの中から自分に合ったサービスを選べるようになりました。

また障がい者が65才以上になっても通いなれた事業所に続けて通えるようになったため、環境が変わるのに抵抗のある人は利用を検討してみましょう。

共生型サービスについてもう少し詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。

地域生活支援拠点に相談してみる

地域生活支援拠点とは障がい者の親が亡くなった後を見据え、居住支援のための機能を整備し、障がい者の生活を地域全体で支えるための拠点を指します。

地域生活支援拠点には次のような機能が備えられています。

  1. 相談
  2. 緊急時の受け入れ・対応
  3. 体験の機会・場
  4. 専門的人材の確保・養成
  5. 地域の体制作り

住んでいるエリアの地域生活支援拠点がどのような活動をしているかを地方自治体のホームページなどから確認し、まずは相談することから始めてみましょう。

参考:厚生労働省「地域生活拠点支援等」

成年後見制度の利用を検討する

成年後見制度とは、障がい者や認知症の高齢者など自分で物事を決めるのに不安や心配のある人が契約や手続きをするお手伝いをする制度のことです。

あらかじめ本人が選んだ人に代わりにしてほしいことを契約で決めておく任意後見制度、本人が1人で物事を決めるのが難しくなった時に家庭裁判所によって成年後見人が選ばれる法定後見制度の2種類があります。

手続きや申請がそれぞれ異なるため、興味のある人は厚生労働省の運営するホームページ「成年後見はやわかり」から詳細を確認してみましょう。

参考:厚生労働省「成年後見はやわかり」

宅配クック123は食事の面から老障介護の負担軽減に取り組みます

宅配クック123では食事の面から老障介護の負担軽減に取り組みたいと考えています。

高齢になってから障がいを持つ子供の身体介護をするだけでも負担が大きいのに、食事作りまで全て行うのは体力的にも精神的にも消耗していく原因となるでしょう。

宅配クック123では、管理栄養士の監修した栄養バランスの取れたお弁当を、1日1回、1食分からお届けしています。

自分にもたまには優しくするために、宅配クック123のお弁当をうまく活用してみませんか?

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

老障介護とは高齢者の親が障がいを持つ子供を介護することを指しますが、共生型サービス、地域生活支援拠点、成年後見制度など少しずつその解決策も見出されてきています。

この記事も参考にして、ぜひ親子両方が自立した生活を送ることができるよう適切なサポートを受けてみてください。