最近介護の現場で仕事をしている時に地域共生社会という言葉をよく耳にするようになったけれど、具体的にどのような意味なのかよくわからないと感じている人はいませんか?
この記事では、地域共生社会を目指した取り組みの経緯から事例まで詳しくご紹介します。
地域共生社会とは?
地域共生社会は、「制度・分野ごとの『縦割り』や『支え手』『受け手』という関係を超えて地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会」と定義づけられています。
地域共生社会には4つの柱と呼ばれる改革の骨格があります。
地域共生社会の4つの柱 | 概要 |
地域課題の解決力の強化 | ・住民同士の支え合いを強化し、公的な支援と協働して地域の課題解決ができる体制を作る ・複合的な課題に対応する包括的な相談支援体制を作る ・地域福祉計画を充実させる |
地域を基盤とする包括的支援の強化 | ・地域包括ケアの理念を浸透させるだけではなく、生活上の困難を抱える人への包括的な支援体制を作る ・共生型サービスを創設する ・市町村における地域保健の推進機能の強化、保健と福祉の横断的、包括的な支援のあり方を検討する |
地域丸ごとのつながりの強化 | ・多様な担い手の育成や参画、民間資金活用の推進、多様な就労・社会参加の場の整備をする ・社会保障の枠を超えて地域資源と丸ごとつながることで、地域に循環を生み出す先進的な取り組みを支援する |
専門人材の機能強化・最大活用 | ・人への支援を行う専門資格に共通する基礎課程創設を検討する ・福祉系国家資格を持つ場合の保育士養成課程・試験科目の一部免除の検討 |
地域共生社会の4つの柱は、地域共生社会の実現に向けてどのようなことをすればよいかを示していると言えるでしょう。
地域共生社会を目指す背景
日本が地域共生社会を目指す背景には、どのようなことがあるのでしょうか。
3つご紹介します。
人口減少と高齢化
2022年に内閣府が発表した「令和4年版 高齢社会白書」によると2021年10月1日現在の日本の総人口は1億2,550万人、高齢化率は28.9%ですが、2065年になると総人口が8,808万人、高齢化率は38.4%になると推計されており、人口減少と高齢化が急激に進むと予想されます。
人口減少と高齢化により地域、家庭、職場といった生活の場における支え合いの基盤が弱まり、人と人とのつながりが薄れてきていることから、誰もが役割や生きがいを持ち地域社会全体を支えていく地域共生社会の実現を目指す取り組みが行われているのです。
社会経済の担い手の減少
2021年に厚生労働省が発表した「令和3年度 出生に関する統計の概況」によると、2019年の出生数は87万人、合計特殊出生率は1.36となりました。
また2022年に内閣府が発表した「令和4年版 高齢社会白書」によると日本の生産年齢人口(15才~64才までの人口は1995年の8,716万人をピークに減少しており、2065年には4,529万人になると推計されています。
出生数の減少、生産年齢人口の減少により日本では社会経済の担い手が減ってきているため、地域社会を存続させる上で地域共生社会の実現は重要なことだと言えるのです。
参考:厚生労働省「令和3年度 出生に関する統計の概況」
参考:内閣府「令和4年版 高齢社会白書」
複合的な支援へのニーズの高まり
日本の公的支援サービスは高齢者・障がい者といった対象者別、また機能別に分類されているため一部の人にとっては使いにくいものとなっています。
そのため共生型サービスのように高齢者・障がい者の枠を超えたサービスへのニーズが高まってきており、それらのサービスをスムーズに運用するためにも分野を超えてつながることのできる地域共生社会への取り組みが重要視されているのです。
共生型サービスについてもっと詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。
地域共生社会の実現に向けた取り組みの事例
地域共生社会の実現に向けた取り組みの事例を3つご紹介します。
他分野との連携
地域共生社会を実現するためには、例えば省庁で言えば厚生労働省だけが取り組めば良いわけではなく、他の省庁との垣根を超えた連携が必要です。
例えば各省庁では、地域共生社会を実現するために次のような取り組みを行っています。
【農林水産省】
取り組みの種類 | 概要 |
食育の推進 | ・健康で文化的な生活と豊かで活力のある社会の実現を目的に食育に取り組む |
農福連携 | ・障害者などが農業分野で活躍することを通じ、自信や生きがいを持って社会参加ができるようにする取り組み |
【総務省】
取り組みの種類 | 概要 |
関係人口 | ・地域や地域の人々と多様に関わる人の創出 |
ふるさとワーキングホリデー | ・都会で暮らす若い人が一定期間地方に滞在し関わりを深める取り組み |
地域起こし協力隊 | ・都市地域から過疎地域へと移住して地域協力活動を行いながらその地域への定住・定着を図る取り組み |
【内閣府】
取り組みの種類 | 概要 |
地方創生 | ・東京への過度の人口集中を是正する取り組み |
小さな拠点の形成 | ・暮らしを守り、地域のコミュニティを維持して持続可能な地域づくりを目指すための取り組み |
小さな拠点・地域運営組織の形成 | ・小さな拠点づくりに加えて地域課題の解決に向けた多機能型の取り組みを持続的に行う組織である「地域運営組織」の形成を促す |
【文部科学省】
取り組みの種類 | 概要 |
子供の貧困対策の推進 | ・「子どもの貧困対策の推進に関する法律」に基づき文部科学省、内閣府、厚生労働省などが連携して取り組む |
【国土交通省】
取り組みの種類 | 概要 |
都市再生 | ・環境、防災、国際化などの観点から都市再生や土地の有効活用に取り組む |
【環境省】
取り組みの種類 | 概要 |
地域循環共生圏 | ・地域資源を活用しながら地域特性に応じて補完し合うことで活力ある地域を目指す |
【消費者庁】
取り組みの種類 | 概要 |
消費者安全確保地域協議会(見守りネットワーク) | ・認知症高齢者、障がい者など判断力が不十分となった人の消費者被害を防止するため地域で見守りをする |
地域共生社会の実現に向けてさまざまな観点から働きかけや取り組みが行われているのがわかります。
地域共生社会の実現に向けた地域看護学での取り組み
2021年に行われた第24回日本地域看護学会で行われた講演の「共生社会を目指す地域看護」において、地域共生社会を目指すためには地域看護教育をどのように行えばよいかが示されました。
地域看護学を保健師、助産師、看護師に共通して求められる知識や能力を養う基盤としての学問と位置づけ、その目的を人々のQOL(生活の質)の向上とそれを支える健康で安全な地域社会の構築に寄与することとしたのです。
その上で地域看護に必要な能力を次の6つとしました。
- 多様な個人と家族の生活を査定する能力
- 生活の場としての地域の特性を査定する能力
- 健康の保持増進と疾病を予防する能力
- 地域ケアシステムの構築・推進と看護機能の充実を図る能力
- 安全なケア環境の提供と健康危機管理に関わる能力
- ケアを必要とする個人および家族を支えるための専門職および多職種連携の能力
看護師を医療・看護・介護をつなぐキーパーソンと位置づけ、マネジメント能力を高め地域完結型の医療を実現することが、地域共生社会における看護師の役割としているのです。
地域包括ケア寺院を目指す取り組み
大阪府にある浄土宗願生寺では、地域共生社会作りに貢献する地域包括ケア寺院を目指した活動が行われています。
具体的な活動内容は次の通りです。
項目 | 概要 |
訪問看護ステーション | ・地域に住む人が地域で最後まで自分らしく生きることを看護で支援 |
まちの保健室&介護者カフェ | ・看護師・保健師に心と身体についての相談ができる ・介護者同士の経験・苦労をわかちあう |
寺子屋&こども食堂 | ・宿題を大学生が教えごはんも食べられる |
まちの助産師 | ・妊娠した人が助産師からアドバイスを受けられる |
遺族会 | ・大切な人を亡くされたご遺族のためのわかちあいの会 |
医療的ケア児のための防災プロジェクト | ・災害時に医療的ケア児を始めとした地域の障がい者が孤立しないよう普段から地域の活動に参加してもらう |
お寺と教会の親なきあと相談室 | ・障がい者やひきこもりの人の親なきあとの問題をお寺として一緒に考える取り組み(専門家とチームを組んで対応) |
交通事故防止プロジェクト | ・願生寺そばの四つ辻は、交通事故の発生件数が住吉区最多となっており、事故件数を減らすため行動経済学の知見を活用したプロジェクトを展開 |
上記のようにお寺周辺で地域の課題を解決するさまざまな取り組みが行われ、檀家だけではなく地域住民にもその活動が支持されているのです。
宅配クック123は「地域共生社会」の一員として食事から地域の健康を支えます
宅配クック123は地域共生社会の一員として、食事から地域の健康を支えたいと思っています。
毎日お届けするお弁当にカロリーや栄養価が書かれたメモをつけてお届けしているのは、お客様に安心・安全をお届けしたいのはもちろんですが、健康になるための栄養バランスとはどのようなものなのかに少しでも関心を持っていただきたいからでもあるのです。
健康になるためのお弁当だけではなく、健康になるための知識をお客様1人1人にお届けすることが、弊社が地域共生社会の一員としてできることだと考えています。
まとめ
地域共生社会は、制度・分野ごとの「縦割り」や「支え手」「受け手」という関係を超えて地域住民や地域の多様な主体が参画し、人と人、人と資源が世代や分野を超えてつながることで住民一人ひとりの暮らしと生きがい、地域をともに創っていく社会のことです。
地域の介護の現場で働く人1人1人が、その地域でできることは何かを考えることで地域共生社会作りが一歩進むでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ少しずつでも地域共生社会作りに取り組んでみてください。