2020年に行われた「令和2年国勢調査」の結果によると、総人口に占める65才以上人口の割合は28.6%となり、前回調査時における26.6%と比較して上昇傾向にあることがわかりました。

また75才~84才の女性における単独世帯の割合も26.0%と高くなってきていることから、高齢者における孤食が大きな課題となってきています。

この記事では孤食の意味から高齢者における課題まで詳しく解説します。

参考:総務省統計局「令和2年国勢調査」

孤食とは?

孤食とは元々寂しく一人で食事をするという意味ですが、農林水産省が推進する食育施策において、特に「週の半分以上一日の全ての食事を一人で食べていること」と定義づけられています。

一人で食事を取る孤食に対し、家族・地域社会・職場または趣味の仲間などと一緒に食べる食事を共食と呼びます。

農林水産省が2020年に行った「食育に関する意識調査」の結果では高齢者の孤食の頻度について、70才以上の男性において15.1%、70才以上の女性において27.6%が「ほとんど毎日」と回答しているのです。

日本の高齢者が家族とともに食事をとる機会が減ってきている現状がうかがえます。

参考:農林水産省「食育に関する意識調査(令和2年3月)」

高齢者が孤食になる原因

高齢者における孤食はなぜ増加してきているのでしょうか。

原因を3つご紹介します。

高齢者の単独世帯が増加したため

総務省統計局が2020年に発表した「令和2年国勢調査」によると、高齢者の単独世帯の割合は2005年以降一貫して上昇していることがわかりました。

男性の単独世帯の割合は次の通りです。

65才~74才75才~84才85才以上
2005年8.0%4.5%
2010年9.7%5.4%
2015年13.0%6.3%
2020年14.2%7.0%2.9%

女性の単独世帯の割合は次の通りです。

65才~74才75才~84才85才以上
2005年18.9%17.7%4.8%
2010年18.0%19.6%6.7%
2015年18.6%20.1%9.0%
2020年16.9%19.7%11.6%

85才以上でも一人暮らしをしなければならない高齢者が増加していることと、女性は65才以上になると48.2%もの人が一人暮らしである現状を背景に、孤食をする人が増えているのがわかります。

参考:総務省統計局「令和2年国勢調査」

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの感染防止対策として、同居の家族以外との会食時には少人数で行うことや小まめな換気をすることなどが推奨されていますが、高齢者や基礎疾患を持つ人の場合、会食自体を避けることが推奨されています。

このため一人暮らしの高齢者にとっては、友人や親せきなどと一緒に会食をすること自体が難しくなり、ますます孤食が増加する結果につながっていると言えるでしょう。

参考:東京都防災ホームページ「会食時の注意事項『5つの小』を合言葉に感染防止対策の徹底を!(三角卓上POPを掲載しました)」

家族との関係悪化

2020年に未来共創第7号に発表された「超高齢社会における孤食と共食」の中では、家族と同居していても孤食をする高齢者について採り上げています。

具体的には家族と同居していながら孤食をしている人の割合が板橋では20.1%、西多摩では12.4%、伊丹では16.2%、朝来では11.2%いることがわかったのです。

また家族形態を分析すると、配偶者と同居するより子供と同居する方が孤食の割合が2倍高いという特徴も見られました。

このように家族とせっかく同居していても、何らかの理由で同じ食卓を囲めなくなってしまい、孤食をせざるを得ない状況に陥っている高齢者がいるということがわかります。

参考:未来共創第7号「超高齢社会における孤食と共食」

孤食が高齢者に及ぼすリスク

孤食は高齢者の方にとってどのようなリスクがあるのでしょうか。

3つご紹介します。

低栄養

2022年に農林水産省が公表した「令和4年3月食育に関する意識調査」によると、健全な食生活を心がけ、栄養バランスに配慮した食事を取っている人は年齢を重ねるほど増加することがわかりました。

男性の調査結果は次の通りです。

常に心掛けている心掛けている合計
60才~69才14.1%52.6%66.7%
70才以上15.8%64.4%80.2%

女性の調査結果は次の通りです。

常に心掛けている心掛けている合計
60才~69才10.7%69.3%80.0%
70才以上24.4%63.6%88.0%

数値を見ると食事に対する意識が高いように感じますが、孤食が続くうち料理をする習慣が少しずつなくなっていったり、食べる意欲が薄れていったりということは十分考えられます。

このような状況から食べる食材が自然と偏ったり、食事の回数や量の低下にもつながったりするため低栄養を招きやすくなるのです。

また2022年3月に日本老年学的学術研究が行った報道発表によると、共食をする頻度が「年に何回か」という人は毎日共食をする人と比較して体重減少のリスクが1.07倍高く、「ほとんどない」という人は1.17倍高いことがわかりました。

これらのことから孤食が高齢者の低栄養を招き、体重減少につながっていくという流れがうかがえます。

参考:農林水産省「令和4年3月食育に関する意識調査報告書」
参考:日本老年学的学術研究 2022年報道発表「誰かと食事をする頻度が年に何度かしかない高齢者の体重減少リスクは1.07倍高い」

うつ病の発症

2015年における日本老年学的評価研究のプレスリリースで、要介護認定を受けていない65才以上の高齢者のうち、2010年にうつ症状のない37,193名を追跡調査した結果、単独世帯の男性は孤食だと共食と比較して2.7倍うつを発症しやすいことが発表されました。

一方女性の場合は、単独世帯でも同居の世帯でも孤食の場合は1.4倍うつを発症しやすいことがわかったのです。

このことから孤食は高齢者にとってうつの発症リスクを大きく高めることがわかります。

参考:日本老年学的評価研究 2015年プレスリリース「ひとり暮らしの男性はひとりで食事をしていると2.7倍うつになりやすい」

死亡リスクが上がる

2017年における日本老年学的評価研究のプレスリリースで、65歳以上の日本の高齢者 71,781名(男性33,083名、女性38,698名)を約3年間追跡し、孤食と死亡との関係を調べた所、男性では同居で共食の人と比較して、同居で孤食の人の死亡リスクは1.5倍、単独世帯で孤食の人の死亡リスクは1.2倍だと発表されました。

一方女性は同居で共食の人と比較して、同居で孤食の人の死亡リスクは1.1倍、単独世帯で孤食の人の死亡リスクは1.08倍だったのです。

この結果から孤食による死亡リスクは男性の方がより高まることがわかります。

参考:日本老年学的評価研究 2017年報道発表「同居なのに孤食の男性 死亡リスク1.5倍」

孤食への対策

孤食が高齢者の方に及ぼすリスクは低栄養、うつ病、死亡と小さいものではないことがわかりましたが、どのような対策で孤食を防ぐことができるのでしょうか。

3つご紹介します。

通所介護サービスを利用する

2020年に未来共創第7号に発表された「超高齢社会における孤食と共食」の中で、介護認定を受けた人の中でも介護度の低い要支援1、要支援2の人の孤食の割合が高く、週に1~2度ほど通う通所サービスが唯一の共食の場となっていることが採り上げられています。

通所介護サービスは介護保険内のサービスで、要介護認定を受けていれば収入に応じて1割~3割程度の自己負担で利用が可能です。

もし孤食が続き、栄養状態が良くない場合はまず通所介護サービスの利用を検討するのもよいでしょう。

参考:未来共創第7号「超高齢社会における孤食と共食」

地域での共食に参加する

農林水産省が2020年に行った「食育に関する意識調査」では、新型コロナウイルスへの感染防止対策が十分に取られているという前提であれば、地域での共食に参加したいかどうかをたずねた所、結果は次の表の通りでした。

60~69才70才以上
男性31.5%30.3%
女性35.8%35.0%

高齢者の人は男女ともに3割程度の人は地域での共食に参加したいと考えている様子がうかがえます。

また過去1年で地域での共食に参加したかどうかをたずねた所、結果は次の表の通りでした。

60~69才70才以上
男性46.3%51.2%
女性41.6%48.4%

地域での共食に抵抗のない人であれば、積極的に参加を促すのが孤食の解消につながるでしょう。

参考:農林水産省「食育に関する意識調査報告書(令和4年3月)」
参考:一般社団法人全国食支援活動協力会公式ホームページ

オンラインで通話しながら食事を取る

新型コロナウイルスの感染予防を気にかけている高齢者の方に対しては、オンラインで通話しながら食事を取るのも有効でしょう。

無料で通話できるアプリで費用をかけずに共食することができ、会話しながら自然に食事の様子を見守ることもできます。

お酒の好きな方であれば流行りのオンライン飲み会と称してお誘いすれば、話の種として楽しく参加していただけるのではないでしょうか。

宅配クック123が孤食の高齢者の方に続けたい「おせっかい」

宅配クック123が孤食の高齢者の方に続けたい「おせっかい」が2つあります。

1つめは、生きることに欠かせない食の楽しみを「手渡し」でお届けすることです。

これは高齢者の方の安否確認をするのはもちろんのこと、暖かいコミュニケーションと私たちの笑顔も一緒にお届けしたいからです。

私たちが高齢者の方にとって「宅配クック123」という名前に込めた向こう「3」軒両隣(「1」「2」)のような、良き隣人であることで、孤食の寂しさが少しでも和らげば良いと考えています。

2つめは、孤食のリスクである低栄養を少しでも防止することです。

厚生労働省が通知した配食ガイドラインに基づいてたんぱく質量を1食あたり16g~24g摂取できるようにしているのは、孤食の高齢者の方でも体調を崩さないようにとの配慮からです。

孤食の高齢者の方をどのようにサポートしようかお悩みの方は、ぜひ宅配クック123にお声がけください。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

孤食とは農林水産省が推進する食育施策において、特に「週の半分以上一日の全ての食事を一人で食べていること」と定義づけられていますが、高齢者においては低栄養、うつ、死亡など大きなリスクを伴うため早めの対策が必要であることがわかりました。

この記事も参考にして、ぜひ積極的に共食を推進していってください。