介護の現場で仕事をしている人の中には、働く上で高齢者の方や他のスタッフの方との人間関係や、自分自身のメンタルケアについて悩む人が多いのではないでしょうか。
この記事ではそんな時に介護の現場で活かしてほしい、心理学について詳しく解説します。
介護に役立つ心理学
介護の現場で働く上では、心理学のどのような知識が役立つのでしょうか。
7つご紹介します。
福祉心理学
福祉心理学とは応用心理学の1つの分野と位置付けられ、社会福祉の主な対象として考えられる高齢者、障がい者、社会的養護を受ける児童など生きる上で弱い立場にされがちな人に適切な支援をするための心理学です。
心理学の中では新しい学問ですが、次の大学では福祉心理学を専門的に学ぶことができます。
- 北星学園大学 社会福祉学部 福祉心理学科
- 東北福祉大学 総合福祉学部 福祉心理学科
- 新潟青陵大学 福祉心理学部
- 東京国際大学 人間社会学部 福祉心理学科
大学で学んだ福祉心理学を福祉や介護の現場で活かすには資格取得をするのが1つの方法ですが、おすすめの資格は次の3つです。
- 公認心理師
- 福祉心理士
- 認定心理士
福祉心理学についてもっと詳しく知りたい方は、次の記事もごらんください。
メサイアコンプレックス
メサイアコンプレックスとはコンプレックスの1つで無意識のうちに誰かの救世主となることで、自己肯定感の低さ、罪悪感、劣等感、無価値観を払拭しようとする心理状態のことを指します。
メサイアコンプレックスに陥る原因は次の3つです。
- アイデンティティが確立されていないため
- 優越願望が強いため
- 劣等感が強いため
介護職の人が陥りやすい心理状態とも言えますが、心理学を用いれば自分で克服する方法や、周囲にメサイアコンプレックスの人がいた場合に対処する方法を身に着けることができます。
詳しいノウハウを知りたい方は、次の記事もごらんください。
オペラント条件づけ
オペラント条件づけとは報酬や懲罰に対する自発的な行動の変化のことを指し、道具的条件づけやスキナー型条件づけとも呼ばれ、行動主義心理学の基本的な理論として位置づけられています。
介護の現場でも取り入れられる心理療法の中には生活する上で問題となる行動を改善し、健康的な行動へと変化させる手法である行動療法というものがあり、その中にはオペラント条件づけの考えを取り入れた手法もあるため、代表的なものを4つご紹介します。
心理療法の種類 | 概要 |
トークンエコノミー法 | 望ましい行動をした際に報酬(トークン)を与えることで日常の中でその行動頻度を増やしていく方法 |
シェイピング法 | 目標となる行動を達成するために、最初からその目標を目指すのではなく行動を小さな段階(スモールステップ)にわけ、その段階に達したら都度報酬を与えることで最終的に目標となる行動を達成させる方法 |
タイムアウト法 | 望ましくない行動を取った際に、注目という報酬を取り去ることでその行動を強化しないようにする手法 |
セルフモニタリング | 目標に対してその経過を記録し、客観的に自分自身の行動を評価していく方法 |
介護の現場でこれらの心理療法を行った事例も含めて詳細を知りたい方は、次の記事もごらんください。
エイジングパラドックス
エイジングパラドックスとは、高齢者が身体的な衰えや喪失体験を多くするにもかかわらず、心理的な幸福感は増していくという現象を指します。
エイジングパラドックスが起こるのは、次の3つの理由からだとされています。
エイジングパラドックスが起こる理由 | 概要 |
第1モデル | ・ドイツの心理学者であるポール・バルテスが提唱した老いに適応する方法のSOC理論で説明できる ・S=Loss-based Selection(喪失に基づく目標の選択) ・O=Optimization(資源の最適化) ・C=Compensation(補償) |
第2モデル | ・物事を考える際の枠組みを変えることで別の視点を持ち、自分を納得させられるようになるため |
第3モデル | ・高齢者の心理的な発達段階の1つである老年的超越に達するため |
介護の現場でエイジングパラドックスばかりに頼るのではなく、さらに高齢者の方のQOLを高める役に立ちたいと考えている人は、次の記事もごらんください。
現状維持バイアス
現状維持バイアスとは感情的な要因で認知や意志決定がゆがむ感情バイアスの1つで、変化することを不安に感じ、現状維持を望む心理傾向を指します。
介護の現場で起こりやすい現状維持バイアスは次の3つです。
- 現行の介護サービスを改善しようとしない
- 高齢者に対しずっと現在の体調が維持されると思い込む
- 施設を「終の棲家」と思い込む
心理学も活用して、介護の現場における現状維持バイアスを少しでも改善したいと考えている人は、次の記事もごらんください。
課題の分離
課題の分離とは自分の課題(自分でコントロールできること)と他人の課題(自分がコントロールできないこと)を分けて考えることです。
課題の分離を介護の現場で実践するメリットは次の3つです。
- 自分の仕事に集中できる
- ケアを担当する他のスタッフ、利用者など周囲の人に感謝しあう関係が生まれる
- 時間を効率的に使うことができる
課題の分離を介護の現場で具体的に実践するポイントについても知りたい方は、次の記事もごらんください。
心理的安全性
心理的安全性とはpsychological safetyの日本語訳で、チームの中で他のメンバーが自分の発言を拒絶したり罰したりしないという確信を持てる状態のことを指す心理学の用語です。
介護の現場で心理的安全性を高めるメリットは次の3つです。
- 離職率が下がる
- 課題の早期発見と解決につながる
- 良い人材が集まりやすくなる
介護の現場で心理的安全性を高めるためのポイントについても知りたい方は、次の記事もごらんください。
自分自身のメンタルケアに役立つ心理学
介護の現場で働く人が、自分自身のメンタルケアを行いたい場合はどのような心理学が役立つのでしょうか。
4つご紹介します。
EQ
EQとは心の知能(EI=Emotional Intelligence)を測定するための指標で心の知能指数と訳され、Emotional Intelligence Quotientの頭文字を取って名付けられました。
EQは次の4つの能力から構成されています。
EQを構成する能力 | 概要 |
識別(Identify) | ・自分や他者の感情を識別する能力 ・EQの主軸となる能力 |
利用(Use) | ・課題に対する感情をコントロールする能力 ・状況に合わせて感情を最適化できるようになる |
理解(Understand) | ・自分や他者の感情の変化が引き起こされた理由を推察する能力 ・4つの能力のうち最も経験が求められる |
調整(Manage) | ・目的達成のために自分の感情を調整し活かす能力 ・対人関係で多く用いられる |
EQを発揮するためには、この4つの能力がバランス良くそろっていることが重要です。
EQを高めるメリットや、介護の現場でEQの高い人材を育成する方法についても知りたい人は、次の記事もごらんください。
レジリエンス
レジリエンスとは「回復力」「弾力」「しなやかさ」などの意味を持つ英単語の「resilience」のことで、心理学の分野においては困難があり危機的な状況に差し掛かっても精神的に回復し、成長することを指します。
介護の現場でレジリエンスを高めるメリットは次の3つです。
- 離職率を下げられる
- ストレスを成長につなげられる
- 課題解決力が高くなる
介護の現場において具体的にレジリエンスを高める方法についても知りたい方は、次の記事もごらんください。
共感疲労
共感疲労とは英語で「compassion fatigue(同情疲れ)」と表現され、ネガティブな感情に接した際に感情移入し過ぎてしまい、自分の心が疲労した状態を指します。
介護の現場で働く人が共感疲労を起こしやすい理由は次の3つです。
- 介護の仕事は感情労働であるため
- 課題の分離をしにくい環境にあるため
- 社会的使命感を持って仕事に取り組む人が多いため
共感疲労を起こしているかどうかチェックする方法や、共感疲労を予防するための方法についても知りたい方は、次の記事もごらんください。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは、怒りの感情と上手につきあうための知識や方法のことで、怒る必要のあることは適切に怒り、怒る必要のないことは怒らなくて済むようになることを目的に行われます。
アンガーマネジメントを介護の現場で行うメリットは次の3つです。
- モチベーションの低下を防止する
- 周囲の人とのコミュニケーションが取りやすくなる
- 怒りを適切に整理し、相手に納得しやすい形で伝えられる
アンガーマネジメントを介護の現場で具体的に実践する方法についても知りたい方は、次の記事もごらんください。
宅配クック123では新たな知識を積極的に取り入れ仕事に活かし続けます
宅配クック123では、心理学だけではなく新たな知識を積極的に取り入れ、それを高齢者の方へのサポートに活かしたいと考えています。
厚生労働省が推進する認知症サポーター養成講座を積極的に受講したり、ミッケルアートのプレゼントを行ったりしているのも、新しい学問に基づいて高齢者の方をサポートしたいという想いからです。
住み慣れた地域で高齢者の方に、少しでも生きがいを感じながら楽しく暮らしてほしい。
そんな気持ちを大切にしながら、宅配クック123では今日もお弁当をお届けしています。
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まとめ
介護の現場で働く上では、「介護に役立つ心理学」と「自分自身のメンタルケアに役立つ心理学」の両方を学び、それを実践していくことがより良いケアへとつながるでしょう。
この記事も参考にして、ぜひ心理学への学びを深めていってください。
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