介護の現場でマネジメントをする立場にあるけれど、人間関係があまり良くないことが介護にも影響を及ぼしているので、どうにか改善したいと考えている人はいませんか?

この記事ではそんな人に知ってほしい、EQという指標について詳しく解説します。

EQとは?

EQとは心の知能(EI=Emotional Intelligence)を測定するための指標で心の知能指数と訳され、Emotional Intelligence Quotientの頭文字を取って名付けられました。

1987年にイギリスの「MENSA」という雑誌でケイス・ビーズリーが発表した「EQ (Emotional Quotient)」、1990年にアメリカの心理学者であるピーター・サロベイとジョン・D・メイヤーが発表した「”Emotional intelligence.” Imagination, Cognition, and Personality,」がEQとEIを学術的に紹介した初めての論説と論文です。

EQは次の4つの能力から構成されています。

EQを構成する能力概要
識別(Identify)・自分や他者の感情を識別する能力
・EQの主軸となる能力
利用(Use)・課題に対する感情をコントロールする能力
・状況に合わせて感情を最適化できるようになる
理解(Understand)・自分や他者の感情の変化が引き起こされた理由を推察する能力
・4つの能力のうち最も経験が求められる
調整(Manage)・目的達成のために自分の感情を調整し活かす能力
・対人関係で多く用いられる

EQを発揮するためには、この4つの能力がバランス良くそろっていることが重要だと言えるでしょう。

EQとIQの違い

IQとは知能の水準、また発達の程度を測定した検査結果を表す数値で、知能検査と呼ばれる測定方法で検査ができ、平均は100で数値が高いほど知能が高いとされます。

学習することによって蓄えられた知識や学力ではなく、さまざまな状況や環境に対処するための土台となる能力を表し、Intelligence Quotientの頭文字を取って名付けられました。

このことからIQが高いと学習面、EQが高い人は人間関係がスムーズで、IQの高い人は課題解決能力に優れていると言えますが、IQの高い人は同時にEQも高くないとその能力は十分には発揮されにくいでしょう。

EQとIQ以外で人間の能力を表す指標

EQとIQ以外で人間の能力を表す指標には、どのようなものがあるのでしょうか。

表にまとめてみました。

項目概要
AQ(逆境指数)・人間が逆境に陥った時の状況への対応力を数値化したもので「Adversity Quotient」の頭文字を取って名付けられた
SQ(かかわりの知能指数)・人間が社会と関わる力を数値化したもので「Social Intelligence Quotient」の頭文字を取って名付けられた
CQ(好奇心指数)・人間の好奇心の強さを表す指標で「Curiosity Quotient」の頭文字を取って名付けられた
RQ(心の弾力指数)・人間のメンタルの強さを表す指標で「Resilience Quotient」の頭文字を取って名付けられた

どの指標も心理学の言葉ですが、現在では学問の中だけではなくビジネスの場で成果を上げるための指標として用いられることが多いでしょう。

EQの測定方法

EQはインターネットでも無料で簡単に測定できるツールをたくさん見かけますが、アメリカの心理学者で1995年に「心の知能指数」という著書を発表したダニエル・ゴールマンの、「EQ測定」をまず行ってみるとよいでしょう。

このEQ測定は10問の設問からなり、あまり時間をかけずにEQの数値を知ることができます。

またEQの数値だけではなくもう少し自分の心の状態を含めて知りたい場合はIDRlabs.comの「包括的EQテスト」がおすすめです。

包括的EQテストでは「順応性」「自己主張」「感情認知」「感情表現」「他人の管理」「自己抑制」「衝撃制御」「人間関係」「自己肯定感」「自発性」「社会意識」「ストレス管理」「特性共感」「特性幸福」「特性楽観」の15の指標を見ることができ、さらにEQを高めるための簡単なアドバイスももらえます。

参考:A REAL ME「EQ測定」
参考:IDRlabs.com「包括的EQテスト」

EQアップが介護の現場にもたらすメリット

EQアップが介護の現場にもたらすメリットには、どのようなことがあるのでしょうか。

5つご紹介します。

職員の離職防止につながる

介護業界における管理職のEQ向上に努めることは、介護職員の離職防止につながります。

管理職が介護職員の感情を推察し課題解決をサポートできるようになることで、ハラスメントなどが起きにくくなり生産性も向上するためです。

2021年に公益財団法人介護労働安定センターが発表した「令和3年度 介護労働実態調査」によると、訪問介護員、サービス提供責任者、介護職員の1年間(2020年10月1日~2021年9月30日)の離職率は14.1%でした。

この数値を同じ2021年に厚生労働省が発表した「令和3年雇用動向調査」と比較してみると常用労働者の離職率は13.9%のため、介護業界の離職率と全産業の離職率がほぼ同じになってきていると言えます。

しかし少子高齢化でこれから介護を担う人材は少しずつ減っていくことが予想されるため、引き続き介護業界は職員の離職防止に努めなければならない状況にあるのです。

EQアップ以外にも職員の離職防止につながる方法を知りたい人は、次の記事もごらんください。

参考:公益財団法人介護労働安定センター「令和3年度介護労働実態調査について」
参考:厚生労働省「令和3年雇用動向調査結果の概要」

人間関係が円滑になる

介護の現場でEQの高い人が増えれば、目的達成のためにお互いが感情をコントロールできるため人間関係が円滑になります。

課題がスムーズに解決できる環境になるため、仕事に対するモチベーションも高まり良い循環が作られるでしょう。

チームワークで仕事をこなせる

介護の現場での仕事は分業のためチームワークが必要となりますが、EQの高い人が集まると状況に応じて感情を最適化して仕事に取り組むため、職場で適切な協力関係を築くことができます。

困難な事例に取り組まなければならない時でもより多くの意見交換や報連相が行われ、最後にはその課題をチームで乗り越えることができるでしょう。

ミスや挫折に強い組織作りができる

EQの高い人は課題に対する感情を高いレベルでコントロールすることができますが、それはミスや挫折といったネガティブな感情に対しても働き、落ち込むのではなく前向きに改善策を見つけて行動します。

このためチーム全体が失敗を活かし、最終的には仕事の成功につなげることができるでしょう。

ホスピタリティが向上する

介護の現場では高いホスピタリティが求められますが、EQの高い人が揃うと要介護者の感情が引き起こされた理由を推察しながら仕事に取り組むため、ニーズに合ったお客様満足度の高いサービスが提供できます。

新人が入ってきたとしても、最初から高いホスピタリティの伴った仕事がお手本となるため、大きくサービスの質が低下するといった事態には陥りにくくなるでしょう。

介護の現場でEQの高い人材を育成するには?

介護の現場でEQの高い人材を育成するには、どのような方法があるのでしょうか。

4つご紹介します。

最初は経営層や主任に向けて研修を行う

介護の現場でEQの高い人材を育成するためには、まずは施設長などの経営層、また主任などのマネジメント層に向けた研修を行いましょう。

経営層やマネジメント層のEQが向上することで次の力が高まります。

  • 自分や他者の感情を認識する力
  • 状況に合わせて感情をコントロールする力
  • 共感する力
  • 部下のモチベーションを管理する力
  • 部下の感情に寄り添って指導をする力

経営層やマネジメント層のEQが向上すると、組織として適切な意思決定ができるようになるでしょう。

職員向けに研修を行う

経営層やマネジメント層に研修を行った後に職員向けに研修を行うのですが、事前準備として前の項目でご紹介した測定方法などを用いて、現状のEQを把握してもらうのが望ましいと言えます。

EQは客観的な数値が出るため、現在の自分の課題がどのようなものなのかを認識しやすくなるためです。

現在の状態が把握できたら研修を行い、その後現場で実践してみてどのように改善できたのかを振り返る機会を設けるとなお良いでしょう。

またEQについて取り扱っているパッケージセミナーはあまり多くはありませんが存在し、マインドフルネス研修の中の1つの項目として採り上げられている場合などもあるため、施設全体としてこのようなセミナーを利用して研修を行うのもおすすめです。

純文学を読んでもらう

2013年にニュースクール大学のデビッド・カマー・キッドとエメヌエーレ・カスターノが発表した「文学小説を読むことは心の理論を改善する」という論文によると、純文学を読むと他者の頭の中で何が起こっているのかを想像するスキルが一時的に強化されることがわかりました。

具体的には純文学を読むと、EQにおいて重要な要素である自分や他者の感情を識別する能力や自分や他者の感情の変化が引き起こされた理由を推察する能力が高まるということです。

このことから、研修の課題として純文学を読むのを取り入れてみるのもよいでしょう。

参考:デビッド・カマー・キッド エマヌエーレ・カスターノ「文学小説を読むことは心の理論を改善する」

日記をつけてもらう

職員みんなで日記をつける習慣を作るのも、EQ向上に役立ちます。

日記では自分の行動とその時感じていた感情を書き出し、その感情が起こった原因を分析してみるのです。

これを繰り返すと感情の原因をさまざまな角度から捉えられるようになるため、課題に対する感情をコントロールする能力や目的達成のために自分の感情を調整し活かす能力が高まります。

宅配クック123では高齢者の皆さまの感情を大切にしています

宅配クック123では、お弁当を食べてくださる高齢者の皆さまの感情を大切にする取り組みを続けています。

その1つが、宮崎県の中でも有名な「山道養鰻場」で養殖された「うなぎ」に素材を限定して作った「うな丼」です。

これは生産者の顔が見えるうな丼を提供することで、高齢者の皆さまが食べる喜びを感じていただくということだけではなく、ご家族やお友達に美味しいうな丼を食べたと自慢話ができるようにしたいという想いからです。

食べることには必ず感情が伴います

それにできるだけ寄り添いたいという気持ちを込めて、宅配クック123では今日も暖かなお弁当をお届けしています。

宅配クック123資料請求ページ

まとめ

EQとは心の知能(EI=Emotional Intelligence)を測定するための指標で心の知能指数と訳され、介護の現場で活用することで離職率の低下、チームワークの向上などさまざまなメリットをもたらすでしょう。

この記事も参考にして、ぜひEQを適切に活用してみてください。